音楽ナタリー PowerPush - WORLD ORDER

世界秩序の先にある“よい1日”

WORLD ORDERが新作「HAVE A NICE DAY」を12月17日にリリースした。

WORLD ORDERにとって2年ぶり3枚目となるアルバム「HAVE A NICE DAY」はこれまで同様、YouTube上などで発表してきたビデオクリップの数々を収めたBlu-rayやDVDと、新曲や既発曲のリミックスバージョンを収録したCDをパッケージしたアイテム。しかしその内容は大きく変貌、進化を遂げている。

例えばCDの中の須藤元気(Vo)はときに強く直接的な言葉でグローバリズムを皮肉り、またときに少し悲しい恋の結末をポップに歌い上げる。そしてBD / DVDの中のWORLD ORDERは、その活動範囲を拡大。東京・秋葉原のAKB48劇場からイギリス・アビーロードまで、さまざまな街の片隅で、あのロボットダンスを披露し道行く人はもちろん、ディスプレイのこちら側にも新鮮な笑いと驚きを提供してみせている。結成から5年、常に社会と自身の関係をクールに見つめながら活動を続けてきたWORLD ORDER。彼らはいったいどこに向かおうとしているのか。7人に話を聞いた。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 笹森健一

「帝国主義」と「よい1日」

──今回のアルバムタイトル「HAVE A NICE DAY」って言葉自体はすごくシンプルなんだけど、実は意味深な気がするんです。

須藤元気 そうですか?

──1曲目は「IMPERIALISM」。つまり“帝国主義”で、ジョージ・W・ブッシュ前アメリカ大統領の“新世界秩序”に関する演説、湾岸戦争に踏み切るために「強者が弱者を保護することが新しい世界秩序だ」としたとされる演説をサンプリングしています。そしてリミックス曲を除けばラストナンバーは「INFORMAL EMPIRE」。その「IMPERIALISM」に対抗するかのように「僕ら 世界の歴史織り上げてゆく」と“非公式の帝国”を立ち上げようとしている。

WORLD ORDER

須藤 そうですね。

──だから「この人たち、本気で『HAVE A NICE DAY』って言ってるのかな?」って。

須藤 ははははは(笑)。でもまさにおっしゃる通りで、異化効果を狙ったアルバムタイトルなんです。「IMPERIALISM」と「INFORMAL EMPIRE」と、1stシングルの「PERMANENT REVOLUTION」(参照:WORLD ORDER「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」インタビュー)で3部作という位置付けだと僕は考えていて。この3曲では、さっきおっしゃっていたような認識、思想性をもって今の世界情勢を表現してみたんですけど、でもそのうちの2曲が入っているアルバムのタイトルは「HAVE A NICE DAY」。「いろいろあるけど、毎日楽しくいきましょう」と(笑)。

──おそろしくノンキな話に落ち着いちゃいましたけど(笑)。

須藤 だから揶揄的な意味を多分に含んだ「HAVE A NICE DAY」ではあるんだけど、それだけではなくて。何事においても最終的には“軽さ”が大事なのかな、と思っているのも事実なんです。

よりキャッチーでポップな音を目指して

──その“軽さ”ってアルバムの音にも言葉にも現れてますよね。前回のインタビュー(参照:WORLD ORDER「須藤元気 Presents WORLD ORDER in 武道館」インタビュー)のとき「今、WORLD ORDERは成熟期を迎えていて、これを衰退させないためにネクストフェーズに移る」と言っていましたけど、まさに“次の音”というか、より多くの人に愛されそうなポップな音作りをしている印象を受けました。

須藤 確かに(アルバム表題曲の)「HAVE A NICE DAY」なんかは特にキャッチーに、どストレートに作れた曲ですね。これまで僕らのやっているようなダンスミュージックに触れてこなかった人にも聴いてもらえる1曲になった自信はあります。

──ギターをフィーチャーしていることもそうだし、具体的な風景を歌ったラブソングになっているのも新しい試みですよね。これまで「赤い楯 影迷い 灰色の服纏い」(「MACHINE CIVILIZATION」)というように印象的ながらも抽象性の高いキーワードを散りばめる詞が多かったのに、「お気に入りのジャケット羽織り みんなが待っている交差点へ」と歌っている。

須藤 やっぱり振り幅をもたせることは表現者として大切なことですし、あとこの曲についてはビデオクリップでAKB48さんと共演できることが決まってましたから。そういう挑戦をさせていただけるのであれば、よりキャッチーなものを目指すべきだろうなっていう意識はありました。

「HAVE A NICE DAY」に集まった7つの恋の言葉

──須藤さんは以前、曲を書くときはそのとき気になっている楽曲、例えばボカロ曲だったりをモチーフにすると言っていました。今回アルバムを制作するにあたってイメージした曲やジャンルは?

須藤元気

須藤 今回は特になかったんですよ。もともと切ないメロディラインの曲が好きなので、そういう曲を書こうと思っただけ。例えば「LAST DANCE」や「HAVE A NICE DAY」はギター1本で自分が気持ちいいと思うメロディラインやコード進行を探りながら作った曲ですし。作曲のときに使った楽器はそれぞれ違うんだけど、どの曲もそういう心持ちで作ったから、今まで以上にキャッチーだし、シンプルなアルバムになったのかもしれないですね。

──なんで心の趣くままにシンプルな作り方をしようと?

須藤 恋をしたからですかね?(笑)

一同 あはははは(笑)。

須藤 落合が(笑)。

落合将人 なんでオレの恋が元気さんの曲に影響を(笑)。

──確かに(笑)。

須藤 曲の作り方を変えてみたことについては「なんとなく」とか「そういう気分だったから」としか答えようがないんですけど、ただ恋っていうのはあながち冗談でもなくて。これまでラブソングを書いた経験がなかったこともあって「HAVE A NICE DAY」の作詞にちょっと行き詰まっちゃったので、メンバーに「ちょっとそれぞれ恋の詞を書いてきて」と(笑)。「通り過ぎてく この恋模様」から始まる最後のラップは、みんなに書いてもらった詞を集約して作ってるんです。たぶんそれも功を奏しているんでしょうね。僕の言葉だけじゃない。多くの人の言葉や思いを盛り込んだこともいい意味で大衆的になった要因なんだと思います。

ニューアルバム「HAVE A NICE DAY」2014年12月17日発売 / ポニーキャニオン
初回限定盤 [2Blu-ray+CD] 8316円 / PCXP-50264 / Amazon.co.jp
初回限定盤 [2Blu-ray+CD] 8316円 / PCXP-50264 / Amazon.co.jp
初回限定盤 [2DVD+CD] 7020円 / PCBP-52308 / Amazon.co.jp
通常盤 [Blu-ray+CD] 5076円 / PCXP-50265 / Amazon.co.jp
通常盤 [Blu-ray+CD] 5076円 / PCXP-50265 / Amazon.co.jp
通常盤 [DVD+CD] 4104円 / PCBP-52309 / Amazon.co.jp
Blu-ray / DVD収録内容
  1. IMPERIALISM
  2. LAST DANCE
  3. WELCOME TO TOKYO
  4. THIS IS LIFE
  5. HAVE A NICE DAY
  6. INFORMAL EMPIRE
CD収録曲
  1. IMPERIALISM
  2. LAST DANCE
  3. THIS IS LIFE
  4. HAVE A NICE DAY
  5. INFORMAL EMPIRE
  6. WORLD ORDER ~Welcome to TOKYO Remix~
  7. MACHINE CIVILIZATION ~ Inner Child Remix~
  8. AQUARIUS ~3.8 Remix~
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
  • 2014年Zeppツアーのロードムービー「ON THE ROAD AROUND JAPAN 2014 Zepp Tour」
WORLD ORDER(ワールドオーダー)

WORLD ORDER

元格闘家でタレントや作家としても活躍する須藤元気が、男性ダンサー6名(落合将人、高橋昭博、内山隼人、森澤祐介、上西隆史、富田竜太)とともに活動する7人組ダンスパフォーマンスユニット。スーツにきっちり整えた髪型という統一感のあるファッションと、須藤が歌うポップなダンスミュージック、ダンサーたちの高い身体能力を生かしたロボットダンスがアジアをはじめアメリカ、カナダ、ヨーロッパ圏で熱烈に支持されている。2012年6月にDVD / Blu-rayとCDからなる2枚組作品「2012」、同年11月に初のシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」を発表した。2013年8月には東京・日本武道館公演の模様を完全収録したBlu-ray / DVD「須藤元気 Presents WORLD ORDER in 武道館」をリリース。そして2014年12月、3枚目のアルバム「HAVE A NICE DAY」を発表した。