ナタリー PowerPush - WORLD ORDER
須藤元気率いるダンスユニット 世界を魅了するその個性に迫る
日本的な要素を打ち出すことで海外で勝負できる
──今回のアルバム「2012」から制作された映像作品をじっくり観てみると、海外から観た日本人のイメージをダンスやビジュアルイメージで表現してるなと感じました。
須藤 そうですね。日本的な要素を打ち出すことによって、僕たちは海外で勝負できると思うんです。例えば、カウボーイハットを被ってウエスタンブーツを履いてジャックダニエルをボトルでラッパ飲みしたら……そんなベタなアメリカ人はいないけど、日本人からすれば「おーアメリカ人だ!」って見える。そういうステレオタイプっていう考えを逆手に取ることが、海外で勝負するための秘訣なんじゃないかと思ったんです。
──よくハリウッド映画に出てくる日本人のイメージって、まさにWORLD ORDERのビジュアルイメージに近いですものね。
須藤 はい。それに日本人はテキパキ動く印象を海外から持たれている。そこを表現するには、野口がやっていたこのロボットダンスが重要な要素になると思ったんです。特に今回の作品「2012」は、前作に比べてよりクオリティが高くなっているし、正直自信もあります。メンバーはみんなダンス職人なので、振り付けに対して一切の妥協がない。暇さえあればダンスのことばかり考えているんです。
──そうなんですね。
須藤 すごいなって思うのが、みんなで食事をしていると、野口がコーヒーのミルク入れを使って「こういうフォーメーションが……」とダンスのアイデアを話し始めて、それに対してほかのメンバーも「だったら、これをこうやったら?」って夢中になるんですよ。みんなダンスオタクなんですよね。でも、そういうオタクさやマニアックさっていうのは、表現活動をする上でとっても大事なことであって。だから細かい部分はみんなに預けています。100回に1回くらいは僕の考えた振り付けが採用されたりしますけど(笑)。
野口 たまにね(笑)。
観ていて一番飽きないのは人の素のリアクション
──「2012」に収録された映像作品はどれもすごく凝ってますね。1つひとつのストーリーもかなり面白いし、日常的な光景と非日常的なダンスが混ざり合う感じがすごく面白かったです。
須藤 僕らのビデオの予算って、海外のアーティストと比べたら2桁違うんですよ。向こうはマーケットが大きいし、そこで勝負したら勝てないですよね。WORLD ORDERの作品はCGを一切使ってないのに、観た人から「動き方がCGっぽいですね?」ってよく言われる。とてもアナログな手法を使ってるのに、実際にはデジタルな作品に見えるっていうのは、僕にとっては最高の褒め言葉です。
──皆さんがダンスをしてる横を普通に通行する人や面白がって立ち止まって観てる人が、そのまま映り込んでるのも独特ですよね。
須藤 大規模なロケになると通行人を止めなきゃいけなかったりするけど、僕はそれを逆手に取ってみようと思って。観ていて一番飽きないのは、人の素のリアクションなんですよ。僕がOKを出すテイクって、そうやって一般の方々が映り込んだりリアクションしてたりするシーンばかりで。野口と編集してるときも僕は一般の方のリアクションが面白いほうを選ぶんです。でも、野口としてはダンスの振り付けがすごく大事で、そこがうまくいった、いかないっていうことのほうが重要になってくるから、ビデオではどのテイクを選ぶかっていう面白さもありますね。
──今作にはメイキング映像も収録されていますが、英語の字幕が入っています。これは、海外の人たちに観てもらうことを意識して?
須藤 そうですね。世界を視野に入れているので、そこは必然的に。実は格闘家時代の引退試合のDVDにも、全部英語字幕が入ってるんです。それも全て、海外のファンが「この人、WORLD ORDERの前は格闘家だったんだ」ってさかのぼって映像を観たときに理解してもらえるように、そうしてるんですよ。
──じゃあ、「2012」は海外でのリリースも予定されているんですか?
須藤 どうなんでしょう。そこはレコード会社次第というか(笑)。ぜひお願いしたいです。
オリジナルになるものは世界にひとつしか存在しない
──映像だけでなく楽曲についても話を訊かせてください。須藤さん自身も作詞作曲に携わっていますが、制作はどのように進めているんですか?
須藤 好きな曲を聴いていて「この曲の、ここがいいね」って思ったら、そのアイデアを元に、共作者と相談して曲作りを進めていくという(笑)。
──気になった楽曲があったら、それをモチーフにWORLD ORDER風に仕上げていく?
須藤 はい。C、G、Fみたいに自分の好きなコード進行や曲のパターンがあって、大体気になった曲ってそういう自分の好みに引っかかったものばかりで。そこから自分の中でコンセプトをしっかり固めて、歌詞を書いていくんです。
──そうなんですね。作詞で苦労することは?
須藤 あまりないです。作詞は意外と早くできるほうで、数時間で書けちゃいますね。最初にコンセプトを固めるから、それについて書くだけなのでそんなに難しくはないというか。あとは、途中で野口に聴いてもらったりして、ダンスにこれがあったほうがいい、こういう内容がいいとかお互い相談しながら曲を完成させていきます。
──例えば歌詞の部分で、聴き手に伝えたいことはありますか?
須藤 今作のコンセプトが「迫りくる覚醒の時代へ」ということで、そういったメッセージは各曲に込めてます。実は、野口から「全然キャッチーじゃない」って言われるんですけど、確かにキャッチーじゃない(笑)。かといって、WORLD ORDERが「君に会いたいから~」「会いに行くよ~でも会えない」みたいな歌詞を歌うのは考えられないし(笑)。
──あはははは(笑)。
須藤 恋愛をテーマにすれば多少は売れるのかもしれないけど、そういうことじゃなくて。これから時代が変わっていくぞっていう内容を歌っている人があまりいないと思うんですけど、その曲にあわせてスーツを着た男性7人がロボットダンスをベースにしたダンスを踊るというスタイルが僕らのオリジナル性なんです。似たようなグループがいたらそのジャンルの中でいろいろと入れ替わることもあるでしょうけど、WORLD ORDERのやってるアプローチって真似するのが難しいと思うし、やったとしても単なるコピーで終わってしまう。結局オリジナルになるものって、世界にひとつしか存在しないと思うんです。
須藤元気(Genki Sudo)「WORLD ORDER」の "2012"
須藤元気(Genki Sudo)「WORLD ORDER」の"MACHINE CIVILIZATION"
須藤元気(Genki Sudo)「WORLD ORDER」の"AQUARIUS"
ニューアルバム「2012」 / 2012年6月20日発売 / PONY CANYON
Blu-ray Disc / DVD 収録内容
- THE HISTORY OF VOICE
- 2012
- MACHINE CIVILIZATION
- CHANGE YOUR LIFE
- AQUARIUS
- Making of ”WORLD ORDER” (特典映像)
CD収録曲
- THE HISTORY OF VOICE
- 2012
- MACHINE CIVILIZATION
- HELLO ATLANTIS
- CHANGE YOUR LIFE
- AQUARIUS
- WORLD ORDER ~Tax Haven Remix~
WORLD ORDER(わーるどおーだー)
元格闘家で、タレントや作家などとしても活躍する須藤元気が、男性ダンサー6名(野口量、内山隼人、森澤祐介、高橋昭博、落合将人、上西隆史)とともに結成した7人組ダンスパフォーマンスユニット。スーツにメガネ、きっちり整えた髪型という統一感のあるファッションと、須藤が歌うポップなダンスミュージック、ダンサーたちの高い身体能力を活かしたロボットダンスが、アジアをはじめアメリカ、カナダ、ヨーロッパ圏で熱烈に支持されている。また、独創性の強い映像作品も各国で高評価を獲得。2012年6月にはDVD / Blu-rayとCDからなる2枚組作品「2012」をリリースする。