ナタリー PowerPush - WORLD ORDER
須藤元気率いるダンスユニット 世界を魅了するその個性に迫る
昨年から今年にかけてさまざまなメディアで紹介される機会が増えた、須藤元気率いる7人組ダンスパフォーマンスユニットWORLD ORDER。日本国内では「笑っていいとも!」「金スマ」「とくダネ!」「SMAP×SMAP」といったテレビ番組に出演したのを契機に、その知名度は一般層にまで拡大しつつある。また、海外では2011年にロサンゼルスで行われたマイクロソフト社主催「Worldwide Partner Conference 2011」のオープニングイベントに出演。その独創的なファッション&パフォーマンスが海外でも高く評価され、一部では「世界で最もクールな日本人」と賞賛されている。
そんな彼らが、前作「WORLD ORDER」から2年ぶりとなるニューアルバム「2012」をリリースする。今回ナタリーでは須藤とチーフ振り付け師の野口量に、ユニット結成からWORLD ORDERのコンセプト、さらにダンスや映像作品へのこだわりについてじっくり話を訊いた。
取材・文 / 西廣智一 撮影 / 高田梓
衣装提供 / D'URBAN、azabu tailor
音楽ルーツはメロコア、ブルース、真島昌利
──まずは須藤さんの音楽ルーツからお話を聞かせてください。須藤さんは学生の頃、どういう音楽が好きだったんですか?
須藤元気 ロックが好きで、ちょうど高校に入学したときにギターの速弾きがものすごく流行ってました。とにかくギターを速く弾ける奴がカッコいいっていう時代で、僕の周りでは速弾きギタリストのCDを「これ速いから聴いて!」ってみんなに回して(笑)。でも、僕はギターを速く弾けないから、ベースに回されたんです。そこから、メロコアブームが始まるとメロコアを聴くようになって、GREEN DAYとかNOFXとかよく聴いてました。
──1990年代半ばくらいの話ですね。
須藤 そうです。僕のクラスには音楽好きが多くて、ヒップホップ派かメロコア派に分かれたんですね。で、バンドでミクスチャーロックをやり始めてからNIRVANAやレッチリを聴くようになって、そこからだんだんとブルースがカッコいいなと思い始めてエリック・クラプトンの「アンプラグド」を完コピしようと思ったりして(笑)。高校2年の頃にはストリートライブを始めました。
──ギターの弾き語りですか?
須藤 はい。真島昌利さんに憧れて、よく(THE BLUE HEARTSの)「チェインギャング」とかコピーしました。
スポーツ選手が音楽をやるのは見え方的にカッコ悪い
──お話を伺ってると、学生の頃はロックやそのルーツミュージックに夢中だったようですが、そこからどのようにしてWORLD ORDERにたどり着いたんですか?
須藤 僕は高校生のときに格闘家になるかアーティストになるかっていう、夢が2つあったんですよ。で、格闘家のほうを選択してプロになって。引退したときにもうひとつの夢であるアーティストの道に進みたいと思ったんです。でも、格闘家が音楽をやるとなると、世間の目は厳しいじゃないですか。アーティストにとって大切なのはイメージだと思うし、スポーツ選手が音楽をやるとなると見え方的にはカッコ悪いと思うんです。それは僕も客観的にわかっていて、もしほかのジャンルの選手が音楽を始めると言ったら、「あー、音楽やるんだ……」ってネガティブな印象を抱くと思うし。そのままやってもダメなことはわかっていたので、だったら「スーツを着てメガネをかけて、髪の毛もキッチリ固めて、ロボットのようなダンスをする」という格闘家らしからぬアプローチで行こうと。それでも国内ではすぐに受け入れてもらえないだろうと考えて、海外で勝負しようと決めたんです。
──最初は音ありきではなかったんですね?
須藤 音だけでは成立しないっていうのはわかっていたんで。いくらカッコいい音楽を作っても、須藤元気っていうワードが出た時点でアウトなんですよ。
──パブリックイメージが出来上がってしまってるから?
須藤 そうなんです。どうしても「格闘家でしょ?」っていうフィルターをかけられてしまうので。でも、須藤元気という名前を全く使わなかったら、完全にゼロから始めることになるし。海外で勝負しようと考えたとき、まず最初にWORLD ORDERのパフォーマンス映像をYouTubeを使って配信しようと。これは海外の人たちも絶対に面白がってくれると確信していたし、海外でウケれば日本でも受け入れられてもらえるだろうって考えたんです。
プレゼンしても「どうせ企画モノでしょ?」
──ほかのメンバーの皆さんは、どのようにして集まったんですか?
須藤 最初、いろんなところでWORLD ORDERをやりたいってプレゼンしても、誰も賛同してくれないんですよ。「面白いけどさあ」って言ってくれるんですけど、どうしても「じゃあやろう」まで進まずに話が終わってしまう。向こうからしたら「どうせ企画モノでしょ? 格闘技を引退したから、格闘家としての賞味期限もそろそろ切れるよね」って感じでしょうし。で、とにかく何かを作らないとダメだと思って、東京でゲリラライブをやって、それを2分弱の映像にまとめたんです。そのときにダンスをやってる方たち20人くらいに集まってもらって、その中から3人くらいに声をかけたんですよ。
──野口さんは、須藤さんから声をかけられたうちの1人だった?
野口量 そうです。自分で言うのもなんですけど、僕はダンスを10数年やってきて、ダンス界では結構名前が売れたり海外の人と仕事したりしてたんです。でも、ダンスってすごく厳しい世界で、収入も少ないし賞味期限も短い。それで、WORLD ORDERに誘われたときに「やるんだったらものすごく気合を入れて取り組んで、絶対に成功してやろう」と覚悟したんです。
──WORLD ORDERの独特なアニメーションダンスは、どのようにして完成したんですか?
野口 実は僕が以前やってたグループのダンスをWORLD ORDERでやりたいって言われて、それを発展させて形にしたんですよ。
須藤 僕がYouTubeで野口がいるグループの動画を観たときに、「これはすごい! この形をWORLD ORDERのコンセプトにして、街中で踊ったりすればより面白くなる」って確信して、声をかけてみたんです。野口のいるグループのメンバーはいわゆるダンス職人の集まりで、技術はすごかったけどそこにコンセプトが感じられなかった。そこに物語性があれば、いろいろと広がりを持つことができると思いました。例えば歌モノのダンスミュージックに合わせて踊ることで、こうやってナタリーさんに取材してもらうチャンスを得ることができた。その音楽をCDにすれば販売することができて、収入になるんです。僕はダンスの世界についてそんなに詳しくないですけど、野口が言ったように食っていくことが厳しい世界だと思います。こういうトップレベルのダンサーでも、食っていけるのは振り付け師とか本当に一握りの人たちだけ。だったら、僕たちが一緒にやることでお互いがいい形になっていくんじゃないかと思ったんです。
ニューアルバム「2012」 / 2012年6月20日発売 / PONY CANYON
Blu-ray Disc / DVD 収録内容
- THE HISTORY OF VOICE
- 2012
- MACHINE CIVILIZATION
- CHANGE YOUR LIFE
- AQUARIUS
- Making of ”WORLD ORDER” (特典映像)
CD収録曲
- THE HISTORY OF VOICE
- 2012
- MACHINE CIVILIZATION
- HELLO ATLANTIS
- CHANGE YOUR LIFE
- AQUARIUS
- WORLD ORDER ~Tax Haven Remix~
WORLD ORDER(わーるどおーだー)
元格闘家で、タレントや作家などとしても活躍する須藤元気が、男性ダンサー6名(野口量、内山隼人、森澤祐介、高橋昭博、落合将人、上西隆史)とともに結成した7人組ダンスパフォーマンスユニット。スーツにメガネ、きっちり整えた髪型という統一感のあるファッションと、須藤が歌うポップなダンスミュージック、ダンサーたちの高い身体能力を活かしたロボットダンスが、アジアをはじめアメリカ、カナダ、ヨーロッパ圏で熱烈に支持されている。また、独創性の強い映像作品も各国で高評価を獲得。2012年6月にはDVD / Blu-rayとCDからなる2枚組作品「2012」をリリースする。