WON&おかもとえみ初トーク、コラボ曲「sayonara diver」で見せる大人っぽくて儚い姿

WONが最新曲「sayonara diver」でおかもとえみとコラボレーションした。

2023年1月よりフジテレビ系「ザ・ノンフィクション」のテーマソング「サンサーラ」の歌唱を担当しているWON。その歌声がお茶の間に認知されつつある彼女が8月9日に配信リリースした「sayonara diver」は、WON自身が作詞、おかもとが作編曲したシティポップ風のダンスチューンだ。

WONとおかもとのコラボにはどんな経緯があったのだろうか。楽曲のリリースに合わせ、音楽ナタリーではWONとおかもとによる初のトークの場をセッティング。最初こそぎこちなかったものの、2人は互いの印象や「sayonara diver」の制作過程、ライブの取り組み方などさまざまな話題で盛り上がった。

取材・文 / 西廣智一

初めてのトーク

──WONさんとおかもとさんがこうやってお話をするのは、今日が初めてだそうですね。

WON そうなんです。はじめまして、WONです。

おかもとえみ おかもとえみです。今日はよろしくお願いします!

──さっそくですが、まずは今回のコラボレーションが決定した時点での、お互いの印象を教えていただけますか?

WON 私は音楽の知識が皆無といいますか、ほかのアーティストさんの音楽に疎いタイプでして。それはアーティストとしてどうなのかという話なんですけど(笑)、今回のコラボが決まってから初めておかもとさんの曲を聴かせていただいたんです。「HIT NUMBER」を聴いて、自分がやってこなかったような柔らかい音楽というか、芯のある世界観なのに聴き手を優しく包み込んでくれる音楽をやられている方なんだ、という印象を持ちました。

おかもと うれしい。ありがとうございます。

──WONさんはおかもとさんが構築する世界観に憧れがあったんでしょうか?

WON そうですね。自分の中にはないタイプのものだったので、新鮮に感じました。

──普段は積極的に新しい音楽を見つけにいくタイプではない?

WON 例えば、Spotifyが作ってくれたプレイリストから新しい音楽を発見したり、ほかの人が流していた曲を聴いて「これ、いいね」と思ったりすることはあります。そういう意味では、受動的なタイプだと思います。

おかもと 私は初めてWONさんの曲を聴かせてもらって、ハイテンポな曲の中で高低差の激しいメロディの波を乗りこなすように歌っているのがすごく印象的で。私も最近は新しい音楽を積極的に聴いていなかったので、ここまでグッと心をつかまれるような表現力を持つ歌い手さんがいたんだと驚きました。あと、私は「ザ・ノンフィクション」(フジテレビ系で放送されているドキュメンタリー番組)がめちゃくちゃ好きで。

WON おおー。

おかもと 番組を観ていて、「新しい『サンサーラ』ってWONさんが歌ってるんだ!」と驚いたんです(参照:WON、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」テーマ曲「サンサーラ」の新担当に)。WONさんの音楽はいろんな味わいが楽しめる“1人遊園地”みたいな感じがして(笑)、すごく素敵な歌声だなと思いました。

WON ありがとうございます!

大事なのはどんどん変化していくこと

──では、どのような経緯で今回のコラボレーションが決まったんですか?

WON 最初は事務所の方から「こういう人がいるんだけど」と、新たなソングライターさんを何人か教えていただいて。どの方も私にとって初めて目にするお名前、初めて耳にする音楽だったんですが、その中でおかもとさんの曲からは「新しいWONを打ち出せるかもしれない」というインスピレーションを強く受けたんです。おかもとさんに言っていただいたように、WONというアーティストは曲ごとに表現を変えてるんですけど、今回はさらに新しい自分を見せたくて、これまでのイメージを一新するような楽曲を提供してくださるんじゃないかと、直感でお声がけさせていただきました。

──このタイミングで楽曲のみならず、アーティストイラストも新たなテイストのものが用意されました。

WON そうなんです。イラストを見ていただくとおわかりの通り、ちょっと大人っぽくて、どこか儚さがあるようなWONをお届けできるんじゃないかと、楽曲も含めて思っております。

WON

WON

──そう思うに至ったきっかけが何かあったんでしょうか?

WON ブレないアーティスト像というのも大事だと思うんですけど、歌声しかり、自分の見せ方しかり、どんどん変化していくのも大事なことなんじゃないかと最近思うようになったんです。変わり続けるというのは、自分の中に新しくできたテーマなのかもしれません。

──それこそ、昨年末には初の配信ライブもありましたし、今年に入ってからはおかもとさんが挙げた「サンサーラ」の歌唱を担当するというトピックもありました。1年前の「ヘイトキラー」や「ギャンラブ」の頃とはまた違った、新たな挑戦にどんどん取り組んでいる印象が強まっています(参照:WONインタビュー|最新曲「ギャンラブ」や「家庭教師のトライ」CMで注目の女性シンガーが語るメジャーの活動)。

WON そうですね。いろいろありがたいお話をたくさんいただいて、そこでどんどん度胸を付けさせていただいて。あとから配信ライブの映像を確認したんですが、私の顔が映っていないのにライブとしてしっかり成立しているという、スタッフさんたちのプロフェッショナルな部分を強く実感しました。そういう意味でも、自分は恵まれた環境にいるんだなと改めて気付くこともできました。

顔を公表していないアーティストへの楽曲提供は初

──そういう新たな挑戦の1つひとつがきっかけとなり、今回の変化にもつながったと。では、おかもとさんはWONさんサイドからのオファーが届いたとき、どう思いましたか?

おかもと まず、お顔を公表していないアーティストさんに楽曲提供することが初めてのことで。いろいろ調べてみるとミステリアスな部分が多くて、「どんな人なんだろうな」と想像が膨らんでいきました。基本的にいつも曲を書かせていただくときは、アイドルでもシンガーでも事前にネットで情報を得て、その人になったつもりで好きなものとかを取り入れながら曲を作っているんですけど、今回は自分の想像の中のWONさんを膨らませていくことが本当に楽しくて。どのエッセンスがWONさんに一番合うんだろうなと、いろいろ探りながら曲作りを進めました。

──WONさんサイドからは「こういう曲調がいい」みたいなオーダーはあったんですか?

おかもと リファレンスとして、自分の曲の中から「HIT NUMBER」を挙げていただいて。あと、WONさんの声で、特に低音部分をじっくり聴かせたいというお話もあったので、その魅力を生かすようなメロディラインを念頭に置いて制作に臨みました。一般的なJ-POPって、キーが比較的高い曲が多いじゃないですか。上のドレミとか、それこそ最近だとファまでいっちゃう感じなんですけど、私は低音のよさっていうのもあるよなと思っていて。さっきWONさんがおっしゃった大人っぽさだったり、憂いや切なさが滲み出るような、まるで話しているような歌声というのを表現できたらなと思って、低めのメロディを入れてみたんです。サウンド面に関しては意図的な音の隙間や、デモで作っていた軽やかなシンセを入れてみたりと、どことなくミスマッチさが出せたらいいなと意識しつつ、トラックメイカーのTaishi Satoくんと作りました。

──キーを高めに設定すると、なんとなくですがシンガロングの気持ちよさにもつながるのかなという気がするんですが、「sayonara diver」のキーやトーンってリスニング重視というか、“聴く気持ちよさが強い”印象を受けました。

おかもと 確かに。みんなで一緒に歌うことよりも、個のよさみたいなところは意識しました。最後のフェイクはライブでコール&レスポンスとかしたら面白そうだなと思うんですけど、それよりも聴き手1人ひとりに寄り添っていく感覚が強い曲なのかもしれませんね。

「日記」に近い

──WONさんはおかもとさんからこの曲を受け取ったあと、どんなテーマで歌詞を書こうと考えましたか?

WON これまでは独りよがりというか、「世界は私のためにあるんだ!」ぐらいのスタンスで歌詞を書くことが多かったんですけど、今回はおかもとさんが言っていたような個人個人に寄り添うようなイメージを曲から受け取りました。メロディ的に早口でもないし、ガンガン攻めるようなタイプの楽曲でもないなと。耳障りのいいメロディを聴いて、言葉を体にすっと落とし込めるような優しい曲にしたいなと考え、歌詞を書き始めました。

──曲調や歌詞の雰囲気から受けた印象ですが、初期の「日記」あたりのスタイルをより極めた作風だなと感じました。

WON 基本的に自分の楽曲は、どれも同じ世界にはいるんだけど、違う場所で個々が成り立っていると思っていて。でも、おっしゃるように「sayonara diver」は「日記」にすごく近い感じがありますね。「日記」は聴き手に寄り添った歌詞ではないんですけど、そこからさらに優しくなれた世界観を表現できたと思っています。

──もしかしたら、「日記」でデビューして以降の活動を経て、WONさん自身の人としての成長が反映された結果なのかもしれませんね。

WON そういうことにしましょう!(笑)

おかもと (笑)。

──昨年発表した「ヘイトキラー」や「ギャンラブ」は楽曲自体のクセも強く、歌詞もキラーフレーズ満載で、そういうところで勝負している印象がありましたが、「sayonara diver」からは言葉を届けることと真摯に向き合っている姿勢が伝わってきます。

WON 自分自身、変化したという感覚はあまりないんですけど、おっしゃるように「ここのフレーズはこういう思いを伝えたいから、こう歌いたい」というこだわりは少しずつ強まっているのかもしれません。その一方で、今回は耳障りのいいように歌うことも意識していて、全体的に英語を発音するように歌うことを心がけました。活動を続けていく中でいろんな表現方法が、少しずつ身に付いている気がします。