9月11日に埼玉・秩父ミューズパークで野外イベント「WIND PARADE '22 presented by FUJI & SUN × ぴあ × ライブナタリー」が開催される。
FUJI & SUN、ぴあ、ライブナタリーが送る「WIND PARADE」は、「大空の下、風を感じながら楽しむ世代を超えたグッドミュージック」をテーマにした新たなイベント。初開催となる今回は、幅広い年代のリスナーから支持されている折坂悠太、カネコアヤノ、くるり、フィッシュマンズの4組が、空の下で数々の名曲を披露する。
音楽ナタリーではヘッドライナーを務めるフィッシュマンズの茂木欣一(Dr, Vo)にインタビュー。自身の“フェス原体験”に始まり、フィッシュマンズの野外ライブの思い出や今回の共演アーティストの印象、当日のステージのことまで。開催を目前に、思いをたっぷりと語ってもらった。
取材 / 望月哲文 / 三橋あずみ撮影 / 曽我美芽
イベント情報
WIND PARADE '22 presented by FUJI & SUN × ぴあ × ライブナタリー
2022年9月11日(日)埼玉県 秩父ミューズパーク
OPEN 11:15 / START 12:45 / END 19:40(予定)
出演者
折坂悠太(重奏) / カネコアヤノ / くるり / フィッシュマンズ
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野外でやれるとなるとすごく心がときめくんです
──フィッシュマンズに出演いただく新たなイベント「WIND PARADE」、開催が迫ってきております。
フィッシュマンズ、今年は3月にLIQUIDROOMで2DAYSのワンマンをやらせてもらったんですけど、その時点で「WIND PARADE」に出ることが決まっていたので、ずっと高いテンションがキープされている状態なんですよ。やっぱりすごくうれしいことなんですよね。フィッシュマンズの音を鳴らせることは、僕の中ではまったく衰えない喜びだから。
──ずっといい感じの気持ちの高まりを感じつつ、今に至ると。
そうそう。この1、2年でフィッシュマンズのアーカイブ音源を整理したりもしているんだけどね、そういう作業でもフィッシュマンズのいろんな事柄を思い出し、ライブに向かうイメージを膨らませながら自分の気持ちが高まっていくのを感じてます。止まらずにここまで来られた感じがありますね。
──しかも野外でのフィッシュマンズって、特別じゃないですか。
そうなんですよ。それがうれしくてね! 「やっぱりフィッシュマンズのライブといえば野音だよね」ってことは佐藤(伸治)くんともずっと話していたので、今も野外でやれるとなるとすごく心がときめくんです。
──「WIND PARADE」の会場は秩父ミューズパークという場所なのですが、茂木さんの中で秩父はどんなイメージですか?
秩父、行ったことないんですよ。でもきっと美しい山があって……過ごしやすそうな予感がしていますね。あと僕は小さい頃に鉄道が好きだったんで、西武鉄道のレッドアロー号のイメージがすごくあるな。カッコいいなあ!と思って。
──名前からしてカッコいいですもんね(笑)。
あとはね、フィッシュマンズにバイオリンで参加してくれていたHONZIが亡くなってからずっと「HONZI LOVE CONNECTION」というライブを開催してくれている、みっち。っていう人が秩父に暮らしてるんですよ。和菓子店の娘さんでね。だから秩父っていうとみっち。のことも思い出しますね。
とんでもない発見をすることがフェスの醍醐味
──茂木さんといえばフィッシュマンズや東京スカパラダイスオーケストラで国内外の数々の野外フェスに出られているわけですけれども、お客さんとしての“野外ライブ初体験”はいつ頃だったんでしょう?
とっても古い記憶なんだけど、中学1年生のときに横浜スタジアムで開かれた「JAPAN JAM 2」(1980年)というイベントに行ったのが原体験ですね。僕は当時Cheap Trickの大ファンでファンクラブに入るくらいだったので、Cheap Trick目当てでチケットを手に入れて。アリーナ席の一番後ろの列で観たのをすごい覚えていますよ。でね、すごいんです、このイベント。トリのCheap Trickのほかの出演者がAtlanta Rhythm Section、Kalapana、サザンオールスターズで、オープニングアクトがRCサクセションだったんです。
──めちゃくちゃすごいラインナップですね。
当時自分の中にまったくデータがなかったRCサクセションを知ることができたから、僕にとってものすごい大きな出来事だったなって。それまで知らなかったアーティストにたまたま出会ってとんでもない発見をすることがフェスの醍醐味だと思うけど、初体験の時点でそういうことが起きていたんですよね(笑)。サザンはサザンで、オープニングにメンバー以外の人も大勢出てきてみんなで神輿を担ぐっていうことをやっていたんだけど、どんなインパクトを与えながらステージに上がるかも重要なんだなって、あの時点で感じていたしなあ……って、いろいろ思い出してきた(笑)。「野外ライブって楽しいな」と思ったのはね、1988年だったと思うんですけど、ROGUEの江ノ島でのライブをフィッシュマンズの佐藤くんと小嶋(謙介)さんと(柏原)譲で観に行ったとき。それがとっても楽しくて!
──ROGUEの野外ライブですか。
そう。佐藤くんに教えてもらったんだけど、当時みんなROGUEが大好きでさ。その日も「ROGUE、演奏うまいなあ」と感じた記憶があります。
──野外ライブの楽しさって、ライブ以外の時間の過ごし方なんかも大いに関係しますよね。
そうなんですよね。あと僕がすごく感じるのは、自分が大好きなアーティストが出てくるあの瞬間に、チケット代の大半の興奮が詰まっているんじゃないかなって(笑)。お客さんとして観に行くときにいつもそう思っているから、自分がステージに上がる瞬間も、ものすごく大切にしているんですよ。だからお客さんの前に出るときに緊張しないことはないですね。ものすごく高いテンションと興奮が常に入り混じっている感覚なんです。
野外でライブをやるのはすごく自分たちらしい
──では、出演者として初めて出たフェスは?
「NATURAL HIGH!!」(1996年8月に東京テレポートタウン青海 STATION SQUAREで開催)かな? あとは、日比谷野音でやった「SWEET LOVE SHOWER」の第1回(1996年10月)。対バンイベントはその前にもいくつかあったけどね。
──ちなみにフィッシュマンズの野音初ライブは「SWEET LOVE SHOWER」ですか?
その1年前の5月に、真心ブラザーズのイベントに呼んでもらったんです。それが最初の野音かな。急に参加が決まったからサポートギターのスケジュールが合わなくて、その日は佐藤くんと譲とハカセと僕の4人でやったんですよ。ステージからの景色と気持ちよさに感動したことをすごく覚えていますね。あと、リハーサルのときに佐藤くんがステージ上でタバコを吸って、真心の現場監督にものすごい怒られてた(笑)。そういう懐かしい記憶があります。
──以降、だんだんと「フィッシュマンズといえば野音」というイメージが定着していきますよね。
1997年になると「闘魂」(自主企画)とかも野音でやるようになって、9月にはワンマンも……「宇宙 日本 世田谷」(1997年リリースアルバム)のツアーですね。ああ、また1つ野音の話で思い出したことが(笑)。
──ぜひぜひ。
僕らがデビューした1991年の9月頭に、新宿アルタ前のステーションスクエアっていう野外スペースで昼と夜の2回ライブをやったんですけど、そのライブがすごくよかったんですよ。5人時代のフィッシュマンズのライブの中で一番よかったんじゃないかな?と思うくらい(笑)。フィッシュマンズの楽曲……特に初期の楽曲は野外で鳴らすのがすごく合っていると佐藤くんをはじめみんな思っていましたし、そのときに「日比谷野音でやりたいね」と、メンバー間で話していた記憶がありますね。野外でライブをやるのはとても自分たちらしいなって、すごく早い段階から思っていました。
──野音も然りですが、野外で演奏すると独特なエナジーみたいなものが生まれるんでしょうか?
それはありますね。野外だと、その瞬間にその場で起こっていることがダイレクトに感じられるというか……風が吹いている、鳥の声がする、真夏ならセミの鳴き声が聞こえる。“その日のリアル”がそのまま目の前にあって、今自分がどこにいるのかがめちゃくちゃハッキリするんです。そうすると、やっぱりグルーヴも変わってくるんですよね。その日のみんなの気分みたいなものが、屋内で演奏しているときよりも如実に音に出てくる。フィッシュマンズの演奏って、みんなのバイブレーションがよければ誰にも負けないようなグルーヴを巻き起こせるものだと思っていますから。この気持ちよさは絶対にやめられないし、その気持ちいい瞬間が皆さんに届く喜びっていうかね。「フィッシュマンズとはなんぞや」ということを思いっきり感じてもらえる場がそこに生まれる。風が吹いたり陽が差し込んだりすれば、なおさら相乗効果が生まれるんですよね。
──秩父も自然豊かな場所ですから、マジカルな演奏が行われる期待がありますね。
本当に! 「パワースポット」なんて言いますけど、まさに自然がくれるエネルギーとか“気”ですよね。自然から受け取る力っていうのは、自分が想像しているより何倍も強力なものなんだろうなと思います。
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この人たちの声が同じ秩父に響くのか