Wez Atlasインタビュー|不安や挫折を乗り越えて、新たな物語の序章描くミニアルバム完成 (2/2)

盟友・VivaOlaとの出会い

──ところでVivaOlaさんとは、どんなきっかけで出会ったのですか?

もともとは同じ高校に通っていた同級生でした。最初はそこまで仲よくなかったんですけど、高3くらいのときに初めてちゃんと話したんですよね。彼はスマホにインストールしたGarageBandに自作のトラックをたくさん取り込んでいて、僕がラップを好きなことも知っていたので「これにラップ乗せてみてよ」と声をかけてくれて。それがきっかけで仲よくなりました。高校を卒業してから関係がどんどん深まって、ちょくちょく一緒に曲を作ったりして。とにかく、クリエイティブ面では最も古い付き合いになります。

──「Life's A Game」と「It Is What It Is」は、VivaOlaさんとKota Matsukawaさんがトラックを制作しているんですよね。

そうなんです。実はミニアルバム全体のマスタリングも2人に立ち合いをお願いしているんですよ。僕とは違う角度の専門的な目線を2人に補ってもらっています。「Life's A Game」は今作の中で最も強気な歌詞ですが、「Chicken Soup For One」と「This Too Shall Pass」を1つの大きなストーリーと考えたとき、その最終章となるのがこの曲なんです。アルバムの1曲目を飾っているけど、実はレコーディングの最後に生まれた曲。この壮大な物語の最終章であり、次の物語の序章でもあって。「この先は楽しみでワクワクしてる」という気持ちがリリックにも反映されていると思いますね。

──つまり“人生はゲーム”という曲名は、決してアイロニーではなくポジティブな意味で付けたのですね。

うーん、どちらかというとニヒリズムとオプティミズムの間というか。「人生、どうせゲームなんだったら楽しもうぜ」というニュアンスに近いかもしれないです。これは、starRoさんとセッションしたときに彼が言っていた“ニヒリスティック・オプティミズム”という考え方からインスパイアされたものです。「人生は短く、1人ひとりの一生なんて長い地球の歴史の中ではほんの一瞬だけど、だからこそ生きている間は楽しもう」みたいな意味ですね。

Wez Atlas

starRoに感じる共通点

──starRoさんは、Wezさんにとってどんな存在ですか?

出会ったのも突然だったし、「こんな人、今まで会ったことがないな」と毎回セッションするたびに思います。1つの考え方に凝り固まってしまう人が多い中、常にさまざまな価値観を提示してくれますし。こんなことを言うとおこがましいのですが、僕とstarRoさんは考え方が少し似ていると感じるときもあります。と言うのも、僕がいつもモヤモヤ考えていることを、明確に言語化してくれるんですよ。starRoさんが話しているのを聞いていると、自分の頭の中がクリアになってく感覚があって。音楽的な才能もすごいし、いつもカッコいいトラックを作ってくれるので尊敬しています。

──「Dandelion」もstarRoさんとのコラボ曲ですよね。

これはstarRoさんの別名義プロジェクト「POPS研究会」用に作っていたトラックだったらしいのですが、セッション中に「こういうのあるけどどう?」と聴かせてくれて。自分がいつもラップをしているトラックとはだいぶ雰囲気が違うけど、試しにやってみようかなとノリで作ったのがこの曲です(笑)。途中、「やっぱこれWezっぽくないかも」と思って外すつもりでいましたが、聴けば聴くほどキャッチーだし、自分の新たな可能性が広がるチャンスだなと。周りの人たちからも「この曲、めっちゃいいじゃん!」と言われたりもして、最終的に入れることになりました。

幼少期の記憶を掘り起こしながら書いた「Cul-de-sac」

──「Go Round」と「Cul-de-sac」を手がけたnonomiさんとの出会いは?

nonomiはVivaOla経由で知り合って、今は僕のライブでバックDJをやってくれています。もともと彼はクラシックピアノを習っていたのですが、ヒップホップやハイパーポップなんかも好きなので、ここ最近はかなり近未来的なサウンドに向かっていますね。「Go Round」を作っていたときは、ちょうどマック・ミラーをよく聴いていて、彼のあのふわっとしたというか、悲しくもないけどめちゃくちゃハッピーでもないムードがすごく好きで。それに影響されて仕上げた楽曲です。「Cul-de-sac」はすごくパーソナルな曲なので、ライブでやってしんみりしたムードにならないかかなり不安です……(笑)。

──「Cul-de-sac」はイントロのメロトロンっぽいサウンドが印象的です。この曲はどのようにして生まれたのですか?

「クルドサック」はフランス語で「袋小路」という意味で、アメリカの住宅街は道路の行き止まりがサークル状になっているところが多くて、ぐるっと1周回ってUターンできるスペースのことを指します。コロラドに住んでいた頃は、そのサークル状になった道路の中心部分でよく自転車に乗ったり、バスケをしたりして遊んでいました。あの頃に経験した長い夏の日々が今でも懐かしく、そういう子供時代の記憶を掘り起こしながら書いたリリックですね。

Wez Atlas
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人生いろいろあるけど

──「It Is What It Is」の意味は、アルバムタイトル「This Too Shall Pass」にも通じますし、まさにstarRoさんが言うところのニヒリスティック・オプティミズムですよね。

要するに「そんなもんだよね」という意味ですね。以前、VivaOlaに「Wezはいつも俯瞰してリリックを書いているよね」と言われたことがあって。そのときは俯瞰の意味がわからなかったんですけど(笑)、確かに何事も1歩引いたところから眺めようとする癖があるんですよね。さっきも話したように、今回レコーディングの最後に「Life Is A Game」という曲が書けたのも、「Damn!」や「It Is What It Is」という曲を経て“This Too Shall Pass”と思える境地にたどり着けたからなのかなと。「人生いろいろあるし、落ち込むことも多いけどがんばってみようぜ」みたいな。どちらかと言うと、リスナーも聴いていて最終的にそこにたどり着いてほしいというか。ミニアルバムを最後まで聴いて、「このモヤモヤを昇華できたから、明日からまたがんばろう」と思ってもらえたらうれしいです。

──この曲の「Even came to see the beauty in a downpour(土砂降りの中にも美しさを見に来たんだ)」というフレーズも印象的です。

「T.I.M.M.」(「Chicken Soup For One」収録)という曲でも、「天気につられる感情 / テルテル坊主よ、お願い明日も晴らしてください」とラップしていて。当たり前だけど、天気がいいほうが気分も上がるし雨の日は気持ちも塞ぎ込みがちじゃないですか。天気って人の気分を左右するけど、こんなに影響を受けていたら梅雨の時期とかヤバいな、土砂降りの中でも美しさを見つけなきゃ……という焦りの気持ちから生まれたリリックです(笑)。

「Wez Atlasといえば」と思ってもらえるような1枚を

──最後の曲「Me Today」はuinさんとのタッグです。

uinさんとは今回初めて一緒に曲を作ったんです。とあるソングライティングキャンプに参加したときに初対面のuinさんと共作をしたんですけど、そんな中でも一切無理せず一緒にやれたのがすごくうれしかったんです。サウンド的な好みも似ていて、この曲は「チャンス・ザ・ラッパーやサム・ヘンショウみたいなゴスペル要素を入れてみよう」みたいな話で盛り上がっていい感じに仕上がりました。

──Wez Atlasとして次なるステップの序章となる「Life's A Game」を書き、この先はどんなことに挑戦してみたいですか?

早く次の作品が作りたいですね。やっとコツがつかめてきた気がするから。ミニアルバムは2枚リリースできたし、次はフルアルバムに挑戦して「Wez Atlasといえばこれだよね」と思ってもらえるような1枚を作るのが、自分自身のことながらものすごく楽しみです。

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ライブ情報

Moment

2023年4月1日(土)東京都 笹塚ボウル


HOPE!2023 -osaka春-

2023年4月6日(木)大阪府 Music Club JANUS


EBISU BATICA 12th ANNIVERSARY Day3 x AiR

2023年4月12日(水)東京都 BATICA


Kids' Night Out Vol.3

2023年5月5日(金・祝)東京都 Creator Collaboration Space

プロフィール

Wez Atlas(ウェズアトラス)

東京を拠点に活動するヒップホップアーティスト。2021年6月にリリースしたstarRoをプロデューサーに迎えたシングル「Zuum!」は、Spotify Japanの公式プレイリスト「Next Up」のカバー、さらに「Tokyo Super Hits!」に選ばれた。2021年7月に1stミニアルバム「Chicken Soup For One」を発表。収録曲「Overthink」はストリーミングサービスで100万再生を突破した。2022年はシングルを5作リリース。2023年3月には2ndミニアルバム「This Too Shall Pass」を発表した。