ナタリー PowerPush - WEAVER
“3人の音”にこだわった セルフプロデュース作「Handmade」
アーティストの孤独
──今作の歌詞は自分たちの思いを出している曲が多いと感じました。中でも嘘のないむき出しの言葉が並んだ「アーティスト」は、すごくドキッとさせられました。
河邉 あははは(笑)。これはまさに今までなら表現する意味はないのかなと思ってたことを言葉にした曲で。どう受け止められるかはわからないけど、今はこういう嘘のない感情も歌っていきたいと思ってます。
──どこまでが皆さん自身と重なるのかわかりませんが、アーティストの本音や孤独をつづった歌詞が刺激的です。
河邉 僕がこういうことを思っていたのは2011年にホール公演を含むツアーをやったときなんですけど、すごく大きな会場にたくさんの人が笑顔でいてくれて、でもここにいる人たちはいつかいなくなってしまうのかな……っていう怖さに襲われて。どんなに一生懸命やっても、よく思われなければお客さんはいなくなるし、ずっとステージに立ってる僕たちは今褒められたとしてもすごく孤独なんだろうなって。
──歌っている杉本さんも河邉さんの気持ちに共感します?
杉本 共感できる部分は多いですね。でもその孤独をただ歌っても自己満足で終わってしまうので、最終的には孤独と隣り合わせの状況で作られた曲の存在も伝えようと思ってて。僕自身、そのアーティストが生きてた時代は知らなくても、昔発表された曲に救われることがあるし。音楽を通して全然知らない遠くの人の背中を押すことができるし、ずっとずっとつながっていられるってことをこの曲では表現できたと思っています。
──アーティスト特有の孤独っていうものもあるんですか?
杉本 うーん……やっぱり華やかなステージに立って、お客さんとすごい幸せな空間を共有した後に家で洗濯物を干してたりとか(笑)。
河邉 あるなー、それ!(笑)
杉本 あとはツアー中ひとりでホテルの部屋にいるときも、次のライブのことを考える一方で「今日やったこんな楽しいライブはほんまにまたあるんかなー」って不安になることもありますね。
楽器を間引く
──アルバム中盤で続くラブソング(「君がいた夏の空」「ふたりは雪のように」)についても伺っていいですか?
河邉 さっきお話したように、今回は僕らが今思ってることを書くようなテンションだったんですけど、やっぱりラブソングはすごく人に伝わるものだし、そういう曲も入れようということになって。でもいざ書き始めたら「ラブソングってなんやっけ?」みたいになって(笑)。ラブソング自体は結構書いてるんですけど、今までどういうラブソングを聴いて共感して………っていうのを思い返してみると、どういうものが響くのかっていうのがふとわからなくなったんです。だから「君がいた夏の空」は、最初に書いた歌詞を2人に見せたとき「だから?」みたいな反応が返ってきて(笑)。
奥野 最初に上がってきたものは、どこか頭の中で作っちゃってる感じだったんです。それがストーリーや表現に出てたんで、僕も「ふーん」としか言えなくて(笑)。その後、河邉が何度も書き直して、最終的には実在の地名が出てきたり、リアリティのある表現も出てきたり、より生々しく伝わるものになって。ラブソングの大事なところって僕はそういう部分だと思ってるので。
河邉 僕ら2012年に2回シンガポールでライブをする機会があったんですが、歌詞に出てくるセントーサっていうのはシンガポールの島の名前なんです。あとはスコールを指す表現も入ってたり、シンガポールの街や現地の人、観光客などいろんな人を見てこのストーリーができたんですけど、そうやって自分たちの経験したものが形になっていくほうがより鮮明に伝わるんじゃないかと思いますね。
──一方の「ふたりは雪のように」は、サビのメロディがスッと体に入ってくる耳なじみのいい曲ですね。
奥野 これはサビのメロができたときに「いいな」って思って作り始めて。最初はいわゆる壮大なミドルバラードになるかなと思ったんですけど、そういうものは過去にやってるし。今回はそこからもう一皮むけた部分を出したいと思って悩んだ末、楽器を間引くことにしたんです。ドラムとベースはずっとワンパターンのフレーズで、できるだけ音が少ない中で感じられる空気感がこの曲の魅力になるようにと思ってアレンジしていきました。
杉本 僕の中でこれはアルバムをセルフプロデュースにした意味が一番出た曲かなって思ってます。当たり前なんですけど、セルフプロデュースだと自分で判断しなきゃいけなくて答えがない分、何回も曲を聴き直して本当にこのアレンジでいいのかすごく考えるんです。で、自分たちで一番いい曲の形を見つけていくという中で、その「楽器を間引く」という発想に切り替えることができた。元々は僕の提案だったんですけど、ちょうど2人も新しいサウンドに敏感だったと思うし、それをすぐに受け入れてくれたんです。
- ニューアルバム「Handmade」 / 2013年1月16日発売 / A-Sketch
- 初回限定盤[CD+DVD] / 3300円 / AZZS-14
- 通常盤[CD] / 2800円 / AZCS-1022
CD収録曲
- Performance
- Shall we dance
- 風の船 ~Bug's ship~
- Reach out
- blue bird
- アーティスト
- 君がいた夏の空
- ふたりは雪のように
- 偽善者の声
- Free will
- The sun and clouds
初回限定盤DVD収録内容
- Hard to say I love you(MTV Unplugged ライブ)
- つよがりバンビ(MTV Unplugged ライブ)
- 管制塔(MTV Unplugged ライブ)
- トキドキセカイ(MTV Unplugged ライブ)
- 僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~(MTV Unplugged ライブ)
- WEAVERの2012年に行われたライブハウスツアー、レコーディングなどの活動に密着したドキュメンタリー映像
WEAVER (うぃーばー)
杉本雄治(Vo, Piano)、奥野翔太(B)、河邉徹(Dr)の3人からなる神戸出身のスリーピースピアノバンド。2004年に高校の同級生同士で結成され、2007年に現在の編成に。メンバーの卓越した演奏テクニックと、ピアノの音色が印象的なメロディアスな楽曲を特徴とする。2009年10月に配信限定シングル「白朝夢」でメジャーデビューを果たし、デビュー翌日にはflumpoolの日本武道館公演でフロントアクトを務める。2010年2月にメジャー1stミニアルバム「Tapestry」を、同年8月に亀田誠治をサウンドプロデューサーに迎え、au LISMO CMソング「僕らの永遠~何度生まれ変わっても手を繋ぎたいだけの愛だから~」などを収録したアルバム「新世界創造記」をリリースする。その後もコンスタントにリリースとライブを重ね、2011年8月に杉本のピアノ独奏を含むアルバム「ジュビレーション」を発表する。2012年3~5月にメンバー3人だけで全国各地を回るライブハウスツアー「WEAVER Live House TOUR 2012『Piano Trio Philosophy~do YOU ride on No.66~』」を敢行し成功に収めた。2013年1月にセルフプロデュースアルバム「Handmade」を発表。