ナタリー PowerPush - 忘れらんねえよ
ヤケクソ! 下ネタ! 与沢翼! 3つの武器が生み出す“時代の音”
この時代に鳴るべき音
──ほかに「ツレ伝」で学んだことってあります?
「やっぱり楽曲なんだな」ってことかなあ。その一例が、岡山でKEYTALKとやったライブなんですけど、その日の客層は爆弾ジョニーの逆。オレらのツアーなのにKEYTALKのお客さんが9.5で、オレらのお客さんが0.5という(笑)。
──「人気バンドと回る」がコンセプトの対バンツアーとはいえ……。
ここまで差があるか!って(笑)。けど、KEYTALKのライブを観て「これは確かに9.5の客を集めるな」って思いました。ライブパフォーマンスももちろんすごいんだけど、それ以上に楽曲がやっぱり。オレらとはグルーヴ感というか、BPM感覚が全然違いますもん。その曲で0.5のオレらのお客さんすらも狂ったように踊っているのを観たら「これがこの時代に鳴る音楽だな」ってスゲー思ったし、そこも勉強になりましたね。
──ただ「この高鳴り~」以降の忘れらんねえよの楽曲がKEYTALKに負けているわけでは……。
ないはずなんですよ。2ndアルバムなんて自分で聴いてて、いまだに「なんていいアルバムなんだろう」って思ってますし。
──本当に快作だと思いますよ。
でも、結局売れてない=みんな知らないってことではあるから。ランキング自体は悪くなかったけど、オレの思い通りの結果は残せなかった。あのアルバムの中の「そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか」なんて、ホントにいい曲だなって思うけど、日本中のほとんどの人があの曲を知らない。なら作ってないのと一緒なんですよ。それがホンットに悔しくて。そんな思いはもう二度としたくないから、この時代に鳴る音楽を自分たちもやりたいと思ったし、実際今回の「あの娘のメルアド予想する」って完全にそっちの音に振ったつもりですし。
めっちゃマーケティングミュージック
──「あの娘のメルアド予想する」についてまず聞きたかったのはそのサウンドの変化なんです。バラードを除けばどの曲も、これまで忘れらんねえよ内で“速い”とされてきた曲よりも明らかにBPMが上がってるし、四つ打ちだし、ダンサブルだし。これが「ツレ伝」での気付きがあってのものだとしたら、すごく戦略的な1枚ってことになるかと思うんですけど……。
そう! めっちゃマーケティングミュージック!
──あはははは(笑)。
でもホントにリサーチというか、研究はしていて。「ツレ伝」を回ったのをきっかけに「今流行ってる音楽をちゃんと聴こう」って思うようになってるんですよ。KEYTALKはもちろんだし、KANA-BOONやSiMやマンウィズ(MAN WITH A MISSION)も。とにかく片っ端から、それこそ風呂に入ってるときにも聴いてみていて。で、そのあとにオレらの「夜間飛行」を聴いたときに思ったのが「遅っ!」。いい曲なんだけど「もっと速くしろよ」って思っちゃったんですよね。オレ自身、今の時代を生きてるわけだから、みんなと同じように“この時代の音”を求めていたというか。
──世の趨勢と柴田さんの気分がうまくフィットしたがゆえの“マーケティングミュージック”だ、と。でも赤坂BLITZでの無観客ライブのときに「新作では下ネタを復活させる」と、およそ“マーケティングミュージック”らしからぬことを言っていて(参照:忘れらんねえよ、梅雨空のもと“あの娘のメルアド予想する”)、実際に復活させてますよね。
「ツレ伝」でいろんなバンドと戦っていくうちに自分たちの持っていないものに気付けたのと同時に、自分たちにしかない武器もあぶり出されてきた。彼らと同じことを歌っても勝てるわけないし、じゃあオレらにしかできないことは?って考えたら、すごくしみったれてることというか、しょーもないこと、それと下ネタとギャグっていう武器が浮き彫りになってきて(笑)。実際オレら「ツレ伝」で一緒になったどのバンドよりもお客さんを笑かせられてるつもりはありますし。まあ、そう思うようになったのにはあともう1つ、年末のある事件の影響もあるんですけど。
──「事件」?
「COUNTDOWN JAPAN」の3日目、MOON STAGEのトリをやらせてもらったんですけど、そのときの裏がBUMP OF CHICKENさんとサンボマスターさんとグドモ。まあオレらにしてみたら地獄ですよね(笑)。ステージごとにちょっとずつトリの出演時間がズレてたから、別のステージでその3バンドのライブが始まるとだんだんお客さんが減るという。オレ、悔しくて終わったあと涙が出てきましたから。でもそのとき「オレが客でもサンボ観るかもな」とも思っていて。ちょっとおこがましく聞こえるかもしれないんだけど、今言った3バンドの中でオレたちと一番方向性の近い存在ってサンボさんだと思うんですよ。だったらお客さんはサンボを取ってもおかしくないと思えてしまった。それで「それでもオレらのことを絶対に観たい」って思わせられる理由を作らなきゃダメだって、すごい思ったんです。
──その「忘れらんねえよのことを絶対に観たい」と思わせる理由がしょーもないことと下ネタとギャグ?
そうっスね。「この高鳴り~」や「空を見上げても~」を作ったおかげで“今、最もイキのいいバンド”や、サンボさんなんかと戦うためのチケットをもらえたんだけど、勝てはしなかった。対若手バンドに関しては、どうにか引き分けくらいには持ち込んでみたものの、常に土俵際まで押し込まれてる感じがしてますから。もうヤケクソになって、今持ってる武器を総動員してみることにしたんです。
収録曲
- ばかばっか
- タイトルコールを見ていた
- 体内ラブ~大腸と小腸の恋~(feat. 玉屋2060%、MAX from Wienners)
- 運動ができない君へ
- バンドやろうぜ
- 僕らチェンジザワールド
- 僕らパンクロックで生きていくんだ
- THANK YOU SEXメドレー(この街には君がいない~北極星~CからはじまるABC)
- バンドワゴン
- パンクロッカーなんだよ
忘れらんねえよ主催 ツレ伝ツアー
- ツレ伝ツアー~あの娘のメルアド予想する編~
- 2014年6月20日(金)福岡県 DRUM SON
<出演者>
忘れらんねえよ / Wienners - 2014年7月3日(木)新潟県 CLUB RIVERST
<出演者>
忘れらんねえよ / The SALOVERS - 2014年7月4日(金)石川県 vanvan V4
<出演者>
忘れらんねえよ /The SALOVERS - 2014年7月10日(木)大阪府 Music Club JANUS
<出演者>
忘れらんねえよ / asobiusu - 2014年7月13日(日)愛知県 APOLLO BASE
<出演者>
忘れらんねえよ / それでも世界が続くなら - BLUE ENCOUNT TOUR2014 DESTINATION IS "PLACE" × 忘れらんねえよ ツレ伝ツアー~あの娘のメルアド予想する編~
- 2014年6月22日(日)宮城県 HooK SENDAI
<出演者>
忘れらんねえよ / BLUE ENCOUNT - 対バン全然決まらんからもうヤケクソでワンマンにしたる「ヤケ伝」
- 2014年7月25日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
忘れらんねえよ(ワスレランネエヨ)
柴田隆浩(Vo, G)、梅津拓也(B)、酒田耕慈(Dr)からなるロックバンド。2008年結成。パンクロック由来のラウドなギターサウンドと、日々の暮らしの中にある喜怒哀楽をリリカルながらも熱量とテンション高く歌い上げる柴田の歌詞を武器に都内を中心に精力的なライブ活動を続ける。2011年8月、表題曲が日本テレビ系アニメ「逆境無頼カイジ 破戒録篇」のエンディングテーマに採用されたシングル「CからはじまるABC」でメジャーデビュー。翌2012年3月に1stアルバム「忘れらんねえよ」を発表し、2013年1月には會田茂一プロデュースの3rdシングル「この高鳴りをなんと呼ぶ」を、6月には同じく會田プロデュースのシングル「僕らパンクロックで生きていくんだ」をリリースする。また同年春から夏にかけて「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」「ARABAKI ROCK FEST.13」「ボロフェスタ2013」など、音楽フェスティバルに精力的に出演。若手最注目バンドの一角を担うように。そして2013年10月には2ndアルバム「空を見上げても空しかねえよ」を、翌2014年6月にはメジャーデビュー後初となるミニアルバム「あの娘のメルアド予想する」をリリース。