WANIMAのアコースティックミニアルバム「1Time」が1月26日に配信リリースされた。
昨年11月に新事務所・Crisp Junkを立ち上げたWANIMA。新天地での初音源となる「1Time」には、メンバーの出身地である熊本への思いを込めた「りんどう」をはじめとした既発曲5曲のアコースティックアレンジ版と、ニッポン放送「星野源のオールナイトニッポン」にゲスト出演した際に弾き語りで披露した「Feel」、開催中の全国ツアー「Catch Up TOUR -1Time 1Chance-」のエンディングソングの「Fresh Cheese Delivery」という初音源化となる2曲を合わせた全7曲が収められている。WANIMAの今まで通ってきた道に対するリスペクトと新たな魅力が詰まった1作だ。音楽ナタリーではメンバー3人にインタビューし、「1Time」の選曲理由や制作エピソードを聞いた。
取材・文 / 酒匂里奈撮影 / 永峰拓也
本当に伝えたかったことを表現できた
──WANIMAは昨年11月に新事務所・Crisp Junkを立ち上げました。現在の心境はいかがですか?
KENTA(Vo, B) 「Catch Up」のときにも話しましたが(参照:WANIMA「Catch Up」特集|信じた道を突き進め!過去 / 未来と向き合って完成させた4年ぶりアルバム)、今まで通ってきた道に対するリスペクトを忘れずに、愛と情熱を抱いて進んでいきたいと思ってます。
──では初のアコースティックミニアルバム「1Time」を制作することになった経緯を教えてください。
KENTA これまでいろいろなライブやラジオ番組で、アコースティックで曲を披露していて、お客さんに「自分たちが激しい音楽をやれなくなったらアコースティックのツアーを回ろうね」と言ってきました。いつかアコースティックの作品を作りたいと思っていた中、Crisp Junkを立ち上げたこのタイミングだと思って出させていただきました。
──以前「JOY」のアコースティックバージョンを制作された際に、FUJIさんは「難しかったけど、またやりたいです。アコースティックアレンジの曲だけでCDを出せたらいいなと思うくらい面白かった」とおっしゃっていましたね(参照:WANIMA「Good Job!!」インタビュー)。
FUJI(Dr, Cho) アコースティックの曲だけでミニアルバムを出すというのは自分たちにとってチャレンジでしたけど、やりたかったことの1つなので、このタイミングで作れてよかったです。今後のWANIMAの強みになると思っています。
KO-SHIN(G, Cho) 自分たちの可能性がより広がったと思います。制作にあたっては、ここでしっかり自分たちが納得いくものを提示できたら、今後また新たなアコースティック盤にチャレンジできるなと思って取り組みました。気合いが入っていた分、納得いくものができたと感じています。
──「1Time」には既発曲5曲のアコースティックバージョンと初音源化となる2曲が収録されています。既発曲はどういった基準でセレクトしたんでしょうか?
KENTA どれも大事な曲たちで、「Can Not Behaved!!」(2014年10月にリリースされたデビューミニアルバム)から時系列でリリースした順に選びました。もともとある曲をアコースティックバージョン、“2024 ver.”として振り返りながらレコーディングしたので、原曲の歌詞を作っていたときの部屋の情景やそのとき思っていたことを鮮明に思い出せました。当時は若さゆえに技術が足りなくて、キーが高かったり、歌のニュアンスを思うように出しきれなかったりしたけど、“2024 ver.”ではそれぞれの曲の本当に伝えたかったことを表現できました。
どんなタイミングでも歌えるキー
──4曲目までは2014年から2016年にかけてのバンドの過渡期というか、取り巻く環境が大きく変わったタイミングでリリースされた曲ですね。1曲目は「Can Not Behaved!!」に収録されている「HOME」で、先ほどおっしゃっていたように、“2024 ver.”はキーが下がっていることもあって原曲とは異なる表情になっています。
KENTA 自分が伝えたいニュアンスをきっちり伝えられるキーが徐々にわかってきつつあるので、今回は寝起きでもどんなタイミングでも歌えるキーを模索しながら作りました。自分で聴いても、とっても気持ちのいい仕上がりですね。
──冒頭に加えられた歌詞も印象的ですね。
KENTA 冒頭の歌詞はたまにライブで付け加えて歌っていて、ライブ限定でしたがそれが音源にもなったということで、ぜひ聴いてほしいポイントです。「HOME」は熊本から東京に上京してきたばかりのときに作った曲で、そのときの不安と期待が詰まった、僕にとってすごく大事な曲。“2024 ver.”を作っているときに、いろいろなものを地元に置いてきて、背負って、夢を追いかけていたあの頃を思い出しました。人生の分岐点に立ったことがある人には届く歌になっていると思います。
KO-SHIN 「HOME」は、僕らもそうですけど、上京した人や、いろんな場所でチャレンジする人に向けて“帰る場所”について歌った曲。この曲が1曲目にあることで心強さを感じるし、自分に対して直接歌われているような感じが増していると思います。「Can Not Behaved!!」がリリースされた頃から「HOME」を聴いてくれている人たちにも、また違った聞こえ方で届くんじゃないかと信じています。
FUJI 「Can Not Behaved!!」は初めて全国流通したCDだったので、このタイミングで「HOME」をアコースティック盤に入れられたのはうれしかったです。「HOME」だけじゃないですけど、改めてWANIMAの曲が純粋に好きだなと思いました。
──ちなみに、「1Time」のジャケットイラストに描かれている場所はどちらなんですか?
KENTA 地元の天草にあるパチンコ屋で、僕とKO-SHINはライブやバンドの練習をしていました。今回ここで「HOME (2024 ver.)」と新曲の「Feel」のパフォーマンス映像を撮らせていただきました。昔から支えてくれている連中と一緒に、「昔はこうだったよね、ああだったよね」と言いながらステージを組み立てて、当時の様子を再現して、東京から映像チームのスタッフさんをお呼びして撮らせていただきました。いろんなことを振り返って、「あの頃あきらめずにやってきたから今日この日につながっているんやな」と改めて思いました。東京にいる仲間たち、地元の仲間たちのおかげです。
──「HOME (2024 ver.)」のイントロでは飛行機の離陸音のような音が鳴っていますが、これはどういう意図で?
KENTA あれはバスの音です。ジャケに描かれている左側の場所を、当時1日2本ほどバスが通っていました。そのバスに乗って熊本市内までライブに行っていたので、“始まりの出発音”を入れさせていただきました。
──よりノスタルジーを感じられて、また聴き直すのが楽しみになりました。次の曲「終わりのはじまり (2024 ver.)」のオリジナルは2015年8月にリリースされたシングル「Think That...」の収録曲ですが、それ以前にデモ音源でも発表されていますね。
KENTA そうです。もうだいぶ前ですね……。FUJIくんがWANIMAに仮加入する前から演奏している曲です。この「終わりのはじまり」というタイトルはKO-SHINが命名してくれました。当時は特に歌詞を決めずに感じたままにスタジオで歌っていて、発声練習でKO-SHINとよく「Lalalalaー♪」と歌っていました。
──“2024 ver.”ではアコーディオンなどが使用されていて、アイリッシュ調の民族音楽のようにアレンジされているのが新鮮でした。アレンジの方向性はどのように決めたんでしょうか?
KENTA 自然な流れでアコーディオンの音を入れたいなとなりました。原曲は短い曲なんですが、お客さんと一緒にライブで育ててきた思い入れがある曲やから“2024 ver.”を作りたかった。
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アコースティックは逃げ場がない