WANIMAの3rdフルアルバム「Catch Up」が10月11日にリリースされた。
「Catch Up」には9月7日よりNetflixで配信されているアニメ「GAMERA -Rebirth-」をはじめとするタイアップソングに加え、WANIMAメンバーと交流のある福岡ソフトバンクホークス・柳田悠岐選手の登場曲「遠くまで」、東京ヤクルトスワローズ・村上宗隆選手の登場曲「Chasing The Rainbow」などの全20曲を収録。ライブのセットリストのような構成や、幅広い音楽性から、WANIMAの新たな一面がうかがえる1枚に仕上がっている。
音楽ナタリーではメンバーにインタビューし、成功を収めたばかりの主催フェス「1CHANCE FESTIVAL 2023」の振り返りや「Catch Up」の制作エピソードを聞いた。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 大城為喜
去年よりヒリついていた2年目の「1CHANCE FESTIVAL」
──まずは9月2、3日に熊本で開催された主催フェス「WANIMA presents 1CHANCE FESTIVAL 2023」について聞かせてください(参照:1日目レポート / 2日目レポート)。同フェスは今年で2回目の開催でしたが、手応えはいかがでしたか?
KENTA(Vo, B) 初年度はかなり緊張したけど、今回は特別な気持ちで挑ませていただいたから去年よりヒリついていました。緊張もしたし1年分強くなれたなと。誰よりも死ぬ気で楽しもうと思って臨みました。
──フェス終了直後のコメントでは「自分たちの自信にもつながりました」とおっしゃっていましたが、それだけの達成感があったと。
KENTA 「今日はもうこのアーティストで終わっていいんじゃないか」と思うくらい全アーティストがカマしたライブをしていましたし、UVERworldのTAKUYA∞くんはMCで「熊本ってツアーで飛ばされがちだけど、WANIMAがいてくれてよかったな!」と言ってくれて。今年も地元熊本でフェスを開催できたことが力になりました。去年は声出しができずに、それぞれディスタンスをとっての開催でしたけど、今年は声出しも、思いやりを持った状態でのダイブ、モッシュもありで、熊本でこういう景色を目にすることができてよかったと感じました。また3つ同時に発生していた台風はフェスのゲストにならずに、あちらから熊本を避けてくれて、9月の台風問題や気候、体調もばっちりでした。ライブが終わったあとにいろんなアーティストの方から「来年も再来年もやってくれ」「KENTAがやるんなら、また出させてよ」という声をたくさんいただいて、このフェスに対する責任感が強くなりました。
FUJI(Dr, Cho) 豪華なアーティストの方やお客さんが来てくれないと開催できないので、今年もたくさんの人が来てくれてうれしかった。自分の育った町に「1CHANCE FESTIVAL」のTシャツを着たお客さんや、アーティストの皆さんがいる光景が焼き付いていて。励みになるし、またやりたいという気持ちも自然と芽生えました。
──「1CHANCE FESTIVAL」目的で初めて熊本を訪れた方も多かったでしょうから、熊本の皆さんにとっては町おこし的な側面もあったんじゃないでしょうか。
KENTA 「1CHANCE FESTIVAL」というだけあって、お客さんがいろんな“ワンチャン”に出会えるフェスだと思うので、そういう面もあるかもしれないですね。例えば、知らないアーティストと出会うのもワンチャンやし、友達を作るのもワンチャン、飲食ブースで熊本のおいしいごはんを食べるのもワンチャン。「よし、今日はワンチャン狙ったろう!」という意識ひとつでいろんなことが変わるということを、仲間たちとこのフェスをやってきて体感してきたから。僕が熊本から東京に出ていくときも「ワンチャンつかんだろう」という気持ちでした。熊本の天草出身の僕やKO-SHINにとっては、熊本市内も地元というよりも勝負をする場所。WANIMAの前のHANIMAの時代からそれは変わっていなくて、ライブで戦う場所って感覚が強い。なので熊本市内で開催しているこのフェスでは「去年より1年分ワンチャン見せつけたろう」という気持ちです。
KO-SHIN(G, Cho) 今年は「周りの人たちのおかげ」ということを強く実感しました。僕らじゃなくて来てくれたお客さんと出てくださったアーティストの方と、支えてくれたスタッフの方、そのすべてがひとつになったから無事に走り切れたフェスだと思います。
自分たちの余裕が感じられる「Catch Up」
──ここからはニューアルバム「Catch Up」の話を聞かせてください。率直に、めちゃくちゃよかったです!
KENTA よね? よかった(笑)。
──オリジナルアルバムというくくりでは、2019年10月リリースの「COMINATCHA!!」以来、4年ぶりなんですね。その事実にまず驚きました。「COMINATCHA!!」以降も楽曲をコンスタントに発表していたので、アルバムの間隔がそこまで空いたという認識がまったくなかったんですよ。
KENTA 僕もそういう感覚です。WANIMAはコロナの時期も止まらずに無観客ライブや声出しなどの制限を設けながらのライブを開催して、お客さんとともに走り抜けてきたバンド。その時期にはミニアルバム「Cheddar Flavor」(2020年9月リリース)、シングル「Chilly Chili Sauce」(2021年4月リリース)、シングル「Chopped Grill Chicken」(2021年8月リリース)を3部作として制作して、のちにそれらをまとめた「Fresh Cheese Delivery」(2021年10月リリース)というサブスク限定アルバムも発表してきた。なので、自分たちの中では歩みを止めずに曲を作り続けてきたと思っています。
──今回のアルバムはいつ頃から制作に取りかかったのでしょうか?
KENTA 動き出したのが今から1年ちょっと前ぐらいだったかな? 20曲入りってバリバリにボリュームがあると感じると思うんですけど、流れを含めてこれしかないという20曲。「めちゃくちゃいい曲やけど、このアルバムの中では埋もれちゃうかも」という曲は次のタイミングに出そうということで、ストックに回しています。「COMINATCHA!!」のときは追われて、苦労しながら作った記憶がある。振り返って聴いてみると、自分でもそういう部分を感じるし、今回は「COMINATCHA!!」「Fresh Cheese Delivery」を経てから頭を柔軟にしてアルバムを作ることができたので、納得のいく仕上がりになった。20曲も入っているのに、キーやテンポ、歌詞の内容含め、余裕が感じられる。大変ささえ楽しみながら、追われるというより追いかけて作らせていただきました。
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過去と未来と向き合って