生き物らしさが増したことで“一撃”がより切なく
──PS4®で発売された「ワンダと巨像」は、1から作り直された完全なるフルリメイクです。驚くほど映像が美しいですね。
とんでもなくきれいになりましたよね。まるで別のゲームのよう。「映画を観ているような」っていう側面で言うと、PS4®リメイクはその要素が増していると思います。俺が最初にプレイして驚いたのはワンダの顔です。正直な話を言うとPS2®版のワンダの顔も粗さゆえの抽象性があって、そこに没入できた感覚もあったんですが、リメイクバージョンでは目鼻立ちがくっきりしてより人間らしさ、ワンダらしさが出ているなと思いました。
──ワンダの顔もそうですが、巨像の毛並みや石壁の質感など、それぞれのディテールがしっかりと感じられるようになりましたよね。
巨像の毛並みがモフモフしていて、生き物っぽさが増しましたよね。巨像は基本的に畏怖の対象なんですけど、生命が宿っている感じがすることにより、体に剣を刺すことがすごくかわいそうに思えました。PS2®版の頃からあった、最後の一撃を決めて巨像を倒したのにどこか寂しく思う気持ちが、一種の生き物なんだっていう意識が増すことによって、より強くなりましたね。
──あと今回搭載された、プレイ中の画面をまるで写真を撮るかのようにキャプチャできる機能「フォトモード」は試してみましたか?
はい。すごかったです。
──ズーム機能やフィルター機能があるのも新鮮ですよね。
きれいになったからこそ、やりがいのある機能だなと思いました。
──「ワンダと巨像」は1体ごとに急所の場所や倒すためのトリックが違って、敵を力技だけでは倒せないところも特徴ですよね。16体の巨像の中で好きだったものや印象に残っているものはありますか?
PS4®版のジャケットにも登場する第3の巨像はフォルムがものすごく好きですね。月日の流れとは恐ろしいもので、過去にクリアしているにも関わらず第3の巨像も倒し方がわからなくなってしまっていて、しばらく倒し方を模索しました。
──ほかに印象的だった巨像はいますか?
ナマズみたいな巨像は水の中に入って戦うのが怖かったですね。あと鳥型の第5の巨像や第8、第13の巨像も難しかった。なんとか攻略法を見つけて、それを実行した瞬間にBGMが切り替わるんですけど、その瞬間がすごく気持ちいいんですよね。昔は友達ともたまに一緒にもやっていて、「あれをこうしたらいいんじゃない?」とか言いながら、倒す方法を探るのが楽しかったことを覚えています。
影響はキャラデザから楽曲に至るまで
──米津さんはイラストも描かれますが、キャラクターデザインなどでも「ワンダと巨像」から影響を受けているのでしょうか?
自分のイラストのニュアンス面で、めちゃくちゃ影響を受けていると思います。よく角が生えている男の子を描くんですけど、これは「ICO」の主人公の男の子の影響だなと思うし。
──イラストは楽曲の世界観とリンクしていることが多いと思うのですが、楽曲にも影響を与えているのでしょうか。
俺はそもそも絵を描く子供だったので、音楽を作るにしてもまずシチュエーションから作って、それを膨らませて曲にしていくことも多いんですよ。そういう意味では自分のどこかに原風景としてある「ワンダと巨像」や「ICO」みたいな世界から生まれてきた楽曲も絶対あると思います。ゲームに使われている音楽で言うと、「ICO」のサントラを繰り返し聴いていたんです。ボーイソプラノが歌うメロディがどこかエキゾチックな感じなんですよね。そういうのが自分の楽曲に反映されている部分もあるかもしれない。
──最新シングルの「Lemon」は、死を扱うドラマ「アンナチュラル」の主題歌として書き下ろされたこともあり、死の匂いを感じる楽曲ですよね。それもまた「ワンダと巨像」に通ずる世界観なのかなと思ったんですが……。
「Lemon」はまさに死をテーマに作ったので、そういう意味で言うと、死の匂いがする「ワンダと巨像」とリンクする部分があるのかもしれないです。「ワンダと巨像」もこれだけ広大なフィールドで、生きている人間が自分しかいないっていうのもそうですけど、冒険していく中で見かける文明があったであろう場所に人がいないというのはある種、死をより浮き彫りにさせているのかなと思います。
色あせることのない普遍的な作品
──今回改めてPS4®で「ワンダと巨像」をやっていただきましたが、まだストーリーをクリアしていないと伺いました。また最後までやってみたいと思いましたか?
もちろん最後までやりきりたいと思います。
──このPS4®リメイクで初めて「ワンダと巨像」に触れる人もいると思いますが、そういう方たちに魅力を伝えるなら?
少なくとも言えるのは、俺の音楽を好きな人は好きなゲームだと思います。俺のバイブルと言うか、根底にあるものの1つで、ものすごく色濃く影響を受けていて、自分の音楽とわりと近い位置にあるものなので。だから俺の音楽を一度でもいいと思った人間はやってみて損はないと思います。あと孤独や寂しさを自分の心の中に宿していると思う人は一度やってみてほしい。そういう自分の心の中にあるものがこのゲームにはすごく詰め込まれていて、やることによって共感することができると思うので。
──逆にすでにプレイしたことがある人に薦めるのであれば?
きれいになればなるほどいいっていうものではないと思うんですよ、本末転倒ですけど。昔の映画や音楽はノイズを取り去ってリマスタリングすると素晴らしくなるのかと言うと、そうでもないことがありまして。でもこのPS4®リメイクの「ワンダと巨像」はそういう部分も考えながら、スタッフたちが愛情を持って、ちゃんと美しく作り直した感じがするので、ぜひこの生まれ変わった「ワンダと巨像」を体感してみてほしいですね。
──今回のリメイクはPS3®で発売されたリマスター版と同じくBluepoint Gamesが手がけています。彼らはタイトルへの思い入れが強く、原作の部分をとても大切にしながらアイデアを出して、新しい機能を加えた今作を完成させたそうです。
そうなんですか。すごく愛されているゲームなんですね。「ワンダと巨像」は時代に流されない、本当に普遍的な作品です。13年前の作品でも色あせないのは、研ぎ澄まされたシンプルな作品だから成立していることなんでしょうね。いちファンとして、この先も何十年も愛され続けるものになってほしいなと思っています。
- PlayStation®4ソフト「ワンダと巨像」
2005年にPS2®のソフトウェアとして発表された、PlayStation®屈指の名作と語り継がれるアクションアドベンチャーゲーム。広大なオープンフィールドの美しい景観や、強大な巨像にしがみ付きよじ登るという斬新なゲーム性で話題を集め、現在も世界中で愛されている。2018年2月8日に新たな機能「フォトモード」などを搭載したPS4®フルリメイクが発売された。
- ストーリー
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「最後の一撃は、せつない。」
その世界では、望めば死者の魂を取り戻せると伝え聞く。
青年の名は、ワンダ。魂を失った少女を救うため、足を踏み入れることを固く禁じられた禁忌の地、果てが霞むほど広大な「古えの地」へと向かう。たどり着いた「古えの地」、祭壇に少女の亡骸をそっと横たえたワンダは、天からの不思議な声を耳にする。
その声は「この古えの祠に立ち並ぶ16体の偶像すべてを破壊することができれば、望みが叶うだろう」と告げる。ワンダは16体の偶像を破壊するために、対となる16体の巨像を探し、打ち倒すことを決意する。
天からの声の主は何者なのか。偶像とは、巨像とは何なのか。たとえその行いが、我が身に恐ろしい結末を招くものだとしても、ワンダは少女の魂を取り戻すため、広大な地を駆ける。たった1人、16体の巨大な敵に挑む。
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- 米津玄師(ヨネヅケンシ)
- 1991年3月10日生まれの男性シンガーソングライター。2009年より「ハチ」という名義でニコニコ動画にVocaloid楽曲を投稿し、「マトリョシカ」をはじめ数々のヒット曲を連作。2012年5月に本名の米津玄師として初のアルバム「diorama」を発表した。楽曲のみならずアルバムジャケットやブックレット掲載のイラストなど、アートワーク面でも才能を発揮。マルチな才能を有するクリエイターとして注目を集めている。2013年5月、シングル「サンタマリア」でメジャーデビュー。2014年4月に米津玄師名義としては2枚目のアルバム「YANKEE」を発表し、6月には初ライブにあたるワンマン公演「Premium Live 帰りの会」を東京・UNITで開催した。2015年10月に3rdアルバム「Bremen」をリリース。2017年2月にはテレビアニメ「3月のライオン」のエンディングテーマ「orion」を、6月にはテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」のオープニングテーマ「ピースサイン」をそれぞれシングルとしてリリース。8月にはアニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」主題歌「打上花火」の作詞・作曲・プロデュースを担当した。11月に菅田将暉や池田エライザなどが客演として参加した4thアルバム「BOOTLEG」をリリース。オリコンをはじめ、トータル23のランキングで1位を獲得した。アルバム発売日から年をまたいで行われたワンマンツアー「米津玄師 2017 TOUR / Fogbound」の追加公演は東京・日本武道館で2DAYS開催され、いずれの日程のチケットもソールドアウトした。2018年2月にTBS系ドラマ「アンナチュラル」の主題歌「Lemon」をリリース。10月27、28日には千葉・ 幕張メッセ国際展示場1~3ホールを使ったキャリア最大規模の単独公演の開催が予定されている。
- 米津玄師「Lemon」
- 2018年3月14日発売 / Sony Music Records
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レモン盤 [CD+レターセット]
2160円 / SRCL-9745~6 -
映像盤 [CD+DVD]
2052円 / SRCL-9747~8 -
通常盤 [CD]
1296円 / SRCL-9749