ワルキューレのファイナルライブツアー「SANKYO presents ワルキューレ FINAL LIVE TOUR 2023 ~Last Mission~」が5月20日に東京・有明アリーナで開幕。6月4日に行われる千秋楽公演をもって、単独ライブ活動にひと区切りをつける。
ワルキューレは、2016年に放送されたアニメ「マクロスΔ」から派生した5人組“戦術音楽ユニット”。2015年に発表された「いけないボーダーライン」を皮切りに、シングルを4作、アルバムを4作発表してきた。
音楽ナタリーでは、ファイナルライブツアーを目前に控えるワルキューレより、メンバーのカナメΔ安野希世乃とマキナΔ西田望見にインタビュー。グループが歩んだ7年間の軌跡を振り返るとともに、本日5月17日リリースのライブベストアルバム「『マクロスΔ』ライブベストアルバム『Absolute LIVE!!!!!』」の聞きどころやファイナルライブへの意気込みを語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ
奇跡のユニットだなと
──振り返ると「いけないボーダーライン」の配信リリースが2015年末なので、活動を開始したのはもう7年以上も前のことなんですよね。
マキナΔ西田望見 わー!
カナメΔ安野希世乃 じゃあ、8年目ということになるんですかね。
──通常のアーティストならそろそろ「中堅」と呼ばれ始めてもおかしくないくらいのキャリアになると思います。
西田 まだ気持ちは新人ですけど(笑)。
安野 そうだよねー。でも確かに言われてみれば、「マクロスΔ」のテレビシリーズが放送されたのって、もう……。
西田 だいぶ前だもんね。
安野 その後2作の劇場版(「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」)があって、きちんと物語を描ききっていただいた形なんですが、その間ずっと走り続けてきて今8年目に差しかかっているんだと思うと……時間の密度をすごく感じます。
西田 うんうん、密度はすごかったよね。
安野 声優としての体感でも、アニメ発の音楽ユニットとしては異例の長さなんじゃないかなって思いますね。音楽先行で“楽曲に付随してアニメもある”という作品の場合はまた事情が違うかもしれませんが、ワルキューレはまず「マクロスΔ」という作品があってのものなので。
──母体となる作品が、テレビシリーズだけで言うと6カ月間しかなかったわけですからね。
西田 そうなんですよね。テレビシリーズも7年くらいやってるんじゃないかという気持ちになっちゃってるけど(笑)。お芝居という意味では劇場版も含めて定期的に収録があったので、ずっと続いている作品という感覚があります。
安野 作品自体があれだけきれいな形で完結してもなお、ユニットとしての活動が続くというのが珍しいことなのかなと思いました。そもそも最初の段階では何年やることになるかなんて誰もわかってなかったし、スタッフさんたちがどの程度の活動期間を見越しているのかもまったく聞いてなかった。
西田 聞いてなかったよね。なんなら2ndライブ(2017年に行われた「マクロスΔ 戦術音楽ユニット“ワルキューレ” 2nd LIVE in 横浜アリーナ『ワルキューレがとまらない』」)のときに「ワルキューレはここでいったんひと区切り」ってお話があったくらいで。
安野 あの時点で2年目くらいだったよね。
西田 うん。2年でもかなり長いほうだと思うんですけど、そこからさらに4、5年続くというのはすごいなと思います。
安野 本当に奇跡のユニットだなと。
──結成当時の心境などは覚えてらっしゃいますか?
安野 私自身が「マクロスF」を観てきている世代なので、やっぱりマクロスシリーズの歌といえば中島愛さんとMay'nさんの印象がすごく強くて。ワルキューレはその次世代の歌姫にあたるんですけど、それがユニット形式になるというところがまず大きな変化だなと感じました。最初の頃はメインボーカルの2人(美雲ΔJUNNAとフレイアΔ鈴木みのり)が中心で引っ張る楽曲が多かったこともあって、私は「陰ながら2人をサポートするお姉さんでいるぞ!」みたいな(笑)、そういう心持ちで始まりました。
西田 私も本当に「マクロスF」が大好きで、実は声優になる前に「ギラギラサマー」っていうイベント(2010年8月15日に神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで行われた「マクロスF ギラサマ祭(カーニバル)」)にお客さんとして参加しているんですよ。そこで河森監督(「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」監督)が「サヨナラノツバサ」(2011年公開の映画「劇場版マクロスF ~サヨナラノツバサ~」)で使うためのガヤを録りたいとおっしゃって、観客みんなで「シェリルー!」とか「デカルチャー!」とか叫んでそれを収録するくだりがあったんです。それに私も参加させてもらっていて……。
安野 えー、すごいね!
西田 だから、私の声優デビュー作は「サヨナラノツバサ」とも言えるっていう(笑)。
安野 ガヤとしてのね。
西田 そう、ガヤとしての(笑)。まあそれは冗談ですけど、それくらい好きだったから「マクロスΔ」のオーディションに合格したときはもう、プレッシャーを感じる余地もないくらい本っ当にうれしくて。……というのと、実は私のお父さんも大学時代に「愛おぼ」(1984年公開の映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」)にハマっていて、リン・ミンメイが大好きだったらしいんですよ(笑)。親子2代にわたっての「マクロス」ファンなんです。
安野 わぁ、そうだったんだ。お父さんからしたら、自分の娘が「マクロス」ソングを歌う側に……!
西田 そうなのよ! 今はワルキューレの歌もすごく聴いてくれていて。そんなふうに家族で楽しめていることが私はすごくうれしいし、「マクロス」の歴史をすごく感じますね。
黒いポメラニアン
──実はワルキューレのインタビューは音楽ナタリーでは今回が初ということなので、改めてどんなユニットなのかというお話をしていただけたらと思うんですが……。
西田 え! そうでしたっけ!
安野 意外にも初なんですねー。
西田 最初にして、おそらく最後という(笑)。悲しい……いや、でもありがたいです。
──まず、JUNNAさんはワルキューレにとってどんな存在ですか?
西田 マスコットのような存在。かわいらしい!
安野 のぞみる(西田)は当初からずっとJUNNAちゃんのことをかわいがりまくっていて、追いかけ回していました(笑)。
西田 年齢が私とちょうど10歳違うんですよ。私が人見知りなこともあって最初はなかなかおしゃべりできなかったんですけど、「一度だけの恋なら」のミュージックビデオ撮影くらいのタイミングからだんだん仲よくなれた覚えがあります。歌声がすごく力強くてカッコいいから、そのイメージと同じように「私は絶対に誰とも話さないから」っていうようなクール系の子だったら緊張しちゃうなと思ってたんですけど、実際にお話ししてみたらすごくかわいらしい子でした。ちょっと天然なところもあったりとか。
安野 そうなのよねー。そういう意外な一面も徐々に見せてくれるようになったんですけど、最初に感じた「真面目で努力家でしっかりしてる子」という印象はずっとブレなかったですね。本当にがんばり屋さんなんですよ。まず、弱音を吐かないんです。
西田 そう! 私たちはすぐ弱音吐くよね。「無理なんだけどー!」みたいな(笑)。
安野 私と西田さんはそこの波長が合っていてですね(笑)。ワルキューレの楽曲はいつもレベルが高いので、私たちはすぐ「大変だー!」って大騒ぎするんですけど、JUNNAちゃんは常にスンッとしてるんですよ。「ヤバいですよねー」とか言いながらも、淡々と着々とやってくれる。レコーディングではJUNNAちゃんがトップバッターで録ることが多くて、彼女が最初にバシッと歌って基準点を高い水準に定めてくれるんです。そのおかげで私たちも自然と照準を高いところに持っていける部分はありましたね。
西田 イメージ的には、黒いポメラニアンみたいな感じです。「がんばります! 走ります! キリッ!」っていう。
安野 でも、見えないところでプルプル震えながら耐えてがんばってたりするの!
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灼熱の太陽、舞台上の先生