Wakanaバージョンで退勤
──原曲に思い入れが強い分、レコーディングにはさまざまなドラマがあったんですね。
本当にそう思います。アルバムの最後に収録されている「夢のゆくえ」にもドラマがありましたね。今回の制作中、この曲の歌入れの前日だけ全然眠れなかったんですよ。私は睡眠を大事にしているので、レコーディング前は絶対7、8時間は寝たいんですけど、この曲は2時間半しか寝ていない状態で本番に臨むことになってしまって。当日、半目になりながらブースに入ったんですけど(笑)、これがね! めちゃくちゃいい声が出たんですよ。優しく語りかけるように自然な歌が録れたんです。これには自分でもびっくりしましたね。
──今までのお話を聞いていると、歌は本当に生モノなんだなと思います。もちろんしっかりコントロールできる部分もあるんでしょうけど、さまざまな要因が絡み合って意図しない声が出て、それが曲にマッチするときもあるという。
コントロールしたことで生まれるのはいつも同じ声なんですよ。そこをちょっとでもはみ出すと違和感を感じてしまうので、それをなくすために睡眠をしっかり取るとか、レコーディングの前日はゆっくりするとか、自分なりのルールを決めて制御しています。
──それがWakanaさんにとってのベースとなる歌声なんでしょうね。
そうですね。そこを超えた歌というのは曲が連れてきてくれるものでもあるから、本番当日になってみないとわからないところもあるんです。今回は、そうやって自分の新しい歌声を引き出してくれる曲がすごく多かったなと思いますね。「Rain」や「やつらの足音のバラード」や「いのちの名前」なんかもそうでした。
──「Get Wild」は橋本しん(Sin)さんのアレンジで、演奏はライブで共演が決まっている1966カルテットによるものですね。言葉が詰まった曲を歌うWakanaさんがすごく新鮮でした。
原曲の持っている力強さを1966カルテットさんにガシガシと表現してもらいました。実は最初の段階ではちょっと弱気になってしまって、優しめなアレンジをお願いしていたんですよ。でも途中で自分の中に違和感が湧き上がってきて、これはやっぱりもともとのTM NETWORKさんの雰囲気を大事にするべきだなと思ったんです。自分のオリジナル曲にはこういうタイプの曲はなかったので、私も歌っていて新鮮でした。アレンジが導いてくれる雰囲気を大事に、クールさを意識して歌いましたけど、この曲は歌い重ねていくことでもっとよくなっていくような気もしていて。それが自分としては楽しみですね。
──この曲は最近ネット上で話題になっていましたから。Wakanaさんバージョンにもぜひ耳を傾けてほしいですよね。
ネットで話題になる前に選曲をしていたので、追いかけたわけではないよってことは言っておきたいですけど(笑)。ぜひWakanaバージョンの「Get Wild」でも“退勤”してほしいですよね。めっちゃいい感じに帰りのエレベーターに乗れると思いますので(笑)。
──初のカバーアルバムを完成させてみて、シンガーとして何か気付きはありましたか?
私はこれまでずっと誰かと一緒に歌ってきたんですよ。合唱団やゴスペル、そしてKalafinaとして活動してきて。だから自分の個性というものをよく知らないままここまで来ていた気がするし、ソロになってからもそこに対してずっと悩んできたんです。でも今回の経験を通して、「こうやって幼いころから慣れ親しんできた曲たちを歌うことでにじみ出てくるものがあるな。それが自分の個性なんだな」と感じることができました。同時に自分の中にはいろいろなこだわりが強く存在しているんだなっていうことにも気付くことができたし、それによってやりたいこともどんどんあふれてきて。今までさせてもらってきた経験あったからこそだし、気付けたことは自分にとって本当に大きな発見だったと思います。
──12月22日のライブ「Wakana Anime Classic 2020」も楽しみですね。
私にとっては1年以上ぶりとなるライブなので、本当に楽しみです! ライブでは1966カルテットさんの演奏で、アルバム曲はもちろん、さらにライブ用にアレンジしていただいた曲も含めて、たっぷりとお届けしたいと思っています。当日はライブ配信も行うので、会場に来られない人たちにもしっかり楽しんでいただこうと思っています。
──カバープロジェクトはこの先も続いていくわけですよね?
そうなんです。今回アルバムを作ってみたことで、本当にいろいろな発見があったので、これからはオリジナルのWakana楽曲と共に、今回のようなカバーの世界観も並行してやっていきたいんですよね。アニメソングだけでなくJ-POPの曲のカバーや、クラシックではなくバンドスタイルでのカバーにも憧れるし、いろんな形があっていいのかなと思っていますね。
──そこも含め、来年もさまざまな動きを見せてくれることに期待しています。
そうなったらいいな。まずは4月、延期になっていた「magic moment」のライブをしっかりやり遂げることが目標です。だってね、今年の3月の段階でリハーサルまで終わっていたんですよ! それが延期になってしまった悔しさたるや……。その気持ちをぶつけて、いいライブにしたいですね。コロナ禍においては先のことを考えると不安になる気持ちもありますけど、私は今を楽しむ気持ちで来年もしっかり進んでいこうと思っています!
ライブ情報
- Wakana Anime Classic 2020
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- 2020年12月22日(火)東京都 紀尾井ホール
- Wakana Spring Live 2020 ~magic moment~
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- 2021年4月24日(土)東京都 大手町三井ホール