「生まれたばかりの赤ん坊です!」みたいな気持ちがどこかにあったかも
──Wakanaさんが紡ぐ歌詞はすごく詩的で、聴き手に情景を鮮やかに想起させる。それはある意味、ご自身の歌声の持つ魅力と親和性が高いと思うんです。現段階で大事にしている作詞へのこだわりはあったりしますか?
細かい部分でのこだわりは1曲ごとに違うんですけど、すべての曲に言えるのは、曲から受けたインスピレーションのままに言葉を乗せることです。そこに、実際に自分が見た景色、経験したこと、願いみたいなものを落とし込んでいく感じですかね。ある意味すごく自由な感覚で書いているとは思うんですけど、でも作家の方々はそれをすごく尊重してくださって。ほとんど何も言われることなく、私から出てきた形のままでCDに収められているものばかりなんですよ。それはありがたかったです。
──“時間”というものにフォーカスしている歌詞が多いような印象もあります。
ああ、確かにそうですね。人間は流れていく時間には逆らうことができない。だからこそ、振り返る過去に何をしてきたかが大事になるなと私は思うんです。後悔のない時間の使い方をしたいなと思っているので、それが歌詞に出た部分はあるかもしれないです。「僕の心の時計」なんかは特にそうですけれど。もちろん聴き手の皆さんそれぞれに受け取っていただければいいと思うんですけどね。
──そんな中、アルバム1曲目の「約束の夜明け」の歌詞では、ソロとして大きな一歩を踏み出す今のWakanaさんの思いが色濃く描かれているように感じました。
「明日へ進む道に」とか「約束を果たす」というフレーズを使っていますもんね。
──「私の知らない未来」「一歩ずつ行ければいい」というのも今のタイミングにふさわしいメッセージかなと。
うん、うん。自然とそういう部分が出たのかもしれないです。ちなみに歌詞の中に出てくる「暗い場所」というのは、この世界に生まれる前の、お母さんのお腹の中って意味なんですよ。生まれたばかりの胎児は本当に純真無垢で、嘘偽りもないですよね。だったら大人になった自分も、嘘や偽りを心に閉じ込めたら美しいまま生きていくことができるのかなって。曲の展開から浮かんだイメージを言葉にしたので、光を感じさせてくれるサビでは「あ、向こうで光った! 私、生まれたんだ!」みたいな感覚で書いたりもしていて。
──そこも今のWakanaさんの状況にリンクしているような。
そうですね。「生まれたばかりの赤ん坊です!」みたいな気持ちがどこかにあったかもしれないですね(笑)。
やってみてダメならあきらめもつくじゃないですか
──そしてこのアルバム、さまざまなクリエイターによる楽曲群は本当に多彩ですよね。
作家さんによって生まれる楽曲もさまざまなんだなってすごく思いました。「約束の夜明け」を作ってくださった桜井(美希)さんはとってもお若くてかわいらしい女性の方。今回の制作では楽器のレコーディングにもできる限り立ち会わせていただいたんですけど、それが本当に楽しくて。「約束の夜明け」にはティンホイッスルが入っているんですけど、そのレコーディングでは桜井さんがディレクションをされていたんです。そこで「今のすごくよかったです!」とおっしゃったときに「あ、私もそう思った!」っていう瞬間があったりして。作家さんが見ている世界にちょっとだけ近付けたような気がして、すごくうれしかったんですよね。
──「翼」と「僕の心の時計」の作曲とアレンジは武部聡志さんです。
武部さんは昨年のツアーから音楽監督として入っていただいていて、今度の春のツアーでもお世話になるんですけど、レコーディング作業は今回が初めてだったからすごく楽しみでした。武部さんの2曲ではバンドの方々と一緒に私も仮歌で参加して、一緒にグルーヴを作らせてもらえたんですよ。まるでライブさながらのレコーディングだったのですごく楽しかったです。武部さんがピアノを弾く姿を間近で見られたのもうれしかったですね。音楽への熱い情熱を持っている方々の演奏を見ることで、いろいろ勉強になったなと思います。
──Shusuiさんが手がけられた「流れ星」では、Wakanaさんは作詞に加えて楽器でも参加されていますしね。
そうなんですよ! 小っちゃいシンバルのようなティンシャと、レインスティックという楽器で参加させてもらいました。これもまたShusuiさんに「Wakanaちゃんが演奏すればいいじゃん」と言っていただいたことで実現したことなんですけど、自分の曲の音の制作にしっかり関わっているんだという“一員感”をすごく感じられたのがうれしかったです(笑)。
──作詞も含め、薦められたことに臆せずトライしていく姿勢は素晴らしいですよね。
基本的にそういうタイプですね。やったことのないこと、自分の知らないことは積極的に経験してみようっていう。やってみてダメならあきらめもつくから。バンジージャンプだけは絶対にしないって最近はもう決めているんですけど(笑)、それ以外のことに関しては食わず嫌い、毛嫌いをせずにトライをすることが大事なんじゃないかなって。なので楽器に関しても、もしまた機会があればやってみたいですね。
──5曲目の「記憶の人」ではシンガーソングライターの安藤裕子さんが作詞・作曲を手がけられています。
裕子さんは曲を作っていただくことをお願いしたときにお会いしたんですけど、ホントに素敵な、“THE透明感”という感じの方。いただいた曲もホントに素敵で、聴いた瞬間ニヤけてしまいました。ただ、裕子さんならではの強い世界観を持った曲でもあるので、それを自分がどう歌うかという部分はけっこう難しかったんですよ。
──レンジが広くて、けっこう低いキーも出てくるメロディですしね。
そうなんです。レコーディングのとき、低いキーのところではあまり声が乗っていないような気がしてしまって「これでいいのかな?」とちょっと不安になるところもありました。でも「そこは息交じりの感じでいいんだよ」と言っていただけたのでホッとしたんです。自分にとって歌の表現の幅を広げてくれる曲になったと思います。バンドサウンドで派手さもあるけど、どこかかわいくて、優しい雰囲気のあるお気に入りの曲ですね。
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“女だからこそ!”みたいな気持ちを込めて
- Wakana「Wakana」
- 2019年3月20日発売 / Victor Entertainment
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初回限定盤A [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1573 -
初回限定盤B [2SHM-CD]
5184円 / VIZL-1574 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-65175
- CD収録曲
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- 約束の夜明け
- 翼
- 瑠璃色の空
- 流れ星
- 記憶の人
- 時を越える夜に
- Hard Rain
- 金木犀
- 僕の心の時計
- 時の音
- 愛の花
- 初回限定盤A DVD収録内容
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- 時を越える夜に(Music Video)
- 時を越える夜に(Music Videoメイキング)
- 初回限定盤B DISC 2収録内容
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- 約束の夜明け(instrumental)
- 翼(instrumental)
- 瑠璃色の空(instrumental)
- 流れ星(instrumental)
- 記憶の人(instrumental)
- 時を越える夜に(instrumental)
- Hard Rain(instrumental)
- 金木犀(instrumental)
- 僕の心の時計(instrumental)
- 時の音(instrumental)
- 愛の花(instrumental)
- Wakana(ワカナ)
- 12月10日生まれ、福岡県出身のシンガー。12歳から声楽を学び、17歳より多数のイベントに出演する。上京後はFiction Junctionのプロジェクトに参加し、その後劇場版アニメ「空(カラ)の境界」の主題歌プロジェクトとしてスタートしたKalafina(カラフィナ)のメンバーとして2008年1月にデビュー、本格的にシンガーとしてのキャリアをスタートさせる。2019年2月に「時を越える夜に」でビクターエンタテインメントよりソロデビューし、3月にフルアルバム「Wakana」を発表した。4月からは全国7都市を回るツアー「Wakana LIVE TOUR 2019 ~VOICE~」を控えている。