Wakanaがソロとして初のフルアルバム「Wakana」をリリースした。
昨秋に開催されたツアーを経て、今年2月リリースのシングル「時を越える夜に」で本格的にソロとしての活動をスタートさせたWakana。待望の1stアルバムとなる本作には自身が作詞を手がけた6曲を含め、多彩な魅力を感じる全11曲が収録されている。
Kalafinaとして築き上げてきた10年のキャリアに縛られることなく、あらゆるトライアルを通して新たな可能性を提示する本作を、Wakanaは果たしてどんな思いで制作したのか? 4月からは全国7カ所を巡るツアー「Wakana LIVE TOUR 2019 ~VOICE~」も控える彼女に話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 星野耕作
アルバムの中にいる全部が私
──待望の1stアルバムが完成したことで、ソロとしての新たなスタートを改めて実感している部分もあるのではないですか?
そうですね。昨年の8月にはフルオーケストラコンサートに出演させてもらったり、秋には初めてのソロツアーも経験させてもらったりしていたので、徐々にソロとして活動していくことへの実感は湧き上がっていたんです。でも、今年の2月にリリースしたシングル「時を越える夜に」を経てこのアルバムにたどり着いたことで、その思いはより強いものになったと思います。シングルで初めて作詞をさせてもらったことは私にとって大事件で。「自分で作詞したんですー!」みたいな感じで当初はすごく興奮していたんですけど(笑)、それも徐々に落ち着いてきたというか。ソロであることを実感しつつ、自分のやりたいこと、やれることを冷静に見つめながらアルバムの制作に取り組めた気がします。
──ソロ活動に対してのプレッシャーや不安などはなかったですか?
最初はもう不安だらけでしたよ。インタビューなんかでも「もうどうなるかわかんないんです! あんまり聞かないでください」って答えていたくらいでしたから(笑)。秋のツアーを始めるときは緊張のピークを迎えていたので、リハーサルでは盛大なミスもたくさんしていました。ただ、その緊張も徐々にほぐれていって。ステージに立ってしまえば、そこにはやっぱり楽しい時間が存在していたし、公演を重ねていく中で、皆さんの前で歌えることの喜びをしっかり噛みしめることができたんです。緊張はもちろん毎回あるけど、だからこそ味わえる刺激的なドキドキが私は好きなんだなって改めて気付いたところもありましたね。
──では、ソロとしての初めてのアルバムはどんなものにしたいと思い描いていましたか?
秋に行ったツアーには「時を越えて」というタイトルを付けていたんですけど、アルバムに関してもそういったテーマの1枚にしたいと思っていました。自分自身にとってのこれまでと今、そして未来までを結ぶ、時間を飛び越えられるような内容になったらいいなって。とは言え、なにぶんソロアルバムを作るのは初めてのことなので、全体像を見ながら作っていく余裕はまったくなく(笑)。1曲1曲に向き合って作っていった結果、このようなアルバムができあがりましたという感じです。
──でも、今作ではこれまでのキャリアがあってこその圧倒的なボーカルを聴くことができますし、ご自身で書かれた歌詞からは今の思いもリアルに伝わってきます。そして、さまざまなタイプの楽曲から見える新たな可能性は確実に未来へとつながっていくものでもある。そういう意味ではまさに“時を越えた”アルバムになっている印象でした。
わ、ありがとうございます! 曲をセレクトしていく段階では「個性が本当にさまざまだな」と感じるところもあったんです。でも、いろんな作家さんが私のことを思い描いて作ってくださった曲を聴き、歌うことで「まだまだいろんな私がいるんだな」と気付けたところはあって。そこに自分の思い、自分の歌を乗せれば、ちゃんとWakanaとしての色が出る。今回味わえたそういう感覚は、今後の活動にもつながっていくような気はしていますね。
──すべての曲を自分の色に染められた。だからこそアルバムタイトルにご自身の名前である「Wakana」を掲げることができたんでしょうか。
そうですね。最初は、このタイミングで改めて私の存在を皆さんに知ってもらうという意味で、自分の名前をタイトルにしようと決めたんです。でもアルバム全体を眺めてみれば、ホントに個性の強い曲ばかりだけど……そのすべてに私をちゃんと詰め込むことができたなと感じる部分もあって。すべての曲に対して「これを私は一生歌っていくんだ!」という強いパワーを込めて作り上げたので、「このアルバムの中にいる全部が私です」っていう意味としての「Wakana」でもあるっていう。このタイトルにしてよかったです。
書くことが楽しくなっていった
──本作の大きなトピックの1つは、先ほどからお話に出ているようにWakanaさんご自身が数多くの曲で作詞を手がけられたことだと思います。そのトライアルはご自身から申し出たものだったんですか?
最初は「時を越える夜に」を作ってくださったShusuiさんの発案だったんです。実はShusuiさんとは私が10代の頃からの知り合いで、時を経て今回ご一緒することになったんですよ。そうやって気心知れた部分があるので、「作詞はぜひWakanaちゃんがしてください」と言っていただけて。最初はビックリしましたけどね。自分で歌詞を書くなんて思ってもみなかったので「そうか、自分で作詞をしてもいいのか」みたいな(笑)。ただ、いざ書き始めてみたらそれはもうホントに大変で。「作詞は選ばれた人しかできないものなんだな」と思い、1曲で「もうムリ、あきらめます!」って感じだったんですよ(笑)。
──でも実際はあきらめず、アルバムではその「時を越える夜に」を含めた6曲で作詞をされていますが。
ありがたいことに「こんな曲もあるので、ここでも歌詞を書いてみください」とほかの楽曲についても言っていただいて。最初はもちろん「えー!」って感じだったんですけど、せっかくならトライしてみようと思ったんです。で、いざやってみるとだんだんわかってくる感覚もあって。「こんなこと書いたら変だよな」「こんなクサイ言葉はダメだよな」って自分の勝手なイメージでガチガチに凝り固まった考えを持っていたんですけど、いや、そうじゃないなと。ダメなものは作家さんを含めた周囲の人が指摘してくれるだろうから、自分で言葉や表現を制限するのはやめようと思うようになって。そこからは書くことが楽しくなっていったんです。
──新しい扉が開いたわけですね。
そうですね。今後も作詞を続けていけばまた悩むことも出てくるだろうし、言葉が出てこなくなってしまう不安みたいなものとも戦っていくことになるのかな、とは思うんですけどね。でも、今はまだ始めたばかりなので本当に楽しいです。
- Wakana「Wakana」
- 2019年3月20日発売 / Victor Entertainment
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初回限定盤A [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1573 -
初回限定盤B [2SHM-CD]
5184円 / VIZL-1574 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-65175
- CD収録曲
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- 約束の夜明け
- 翼
- 瑠璃色の空
- 流れ星
- 記憶の人
- 時を越える夜に
- Hard Rain
- 金木犀
- 僕の心の時計
- 時の音
- 愛の花
- 初回限定盤A DVD収録内容
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- 時を越える夜に(Music Video)
- 時を越える夜に(Music Videoメイキング)
- 初回限定盤B DISC 2収録内容
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- 約束の夜明け(instrumental)
- 翼(instrumental)
- 瑠璃色の空(instrumental)
- 流れ星(instrumental)
- 記憶の人(instrumental)
- 時を越える夜に(instrumental)
- Hard Rain(instrumental)
- 金木犀(instrumental)
- 僕の心の時計(instrumental)
- 時の音(instrumental)
- 愛の花(instrumental)
- Wakana(ワカナ)
- 12月10日生まれ、福岡県出身のシンガー。12歳から声楽を学び、17歳より多数のイベントに出演する。上京後はFiction Junctionのプロジェクトに参加し、その後劇場版アニメ「空(カラ)の境界」の主題歌プロジェクトとしてスタートしたKalafina(カラフィナ)のメンバーとして2008年1月にデビュー、本格的にシンガーとしてのキャリアをスタートさせる。2019年2月に「時を越える夜に」でビクターエンタテインメントよりソロデビューし、3月にフルアルバム「Wakana」を発表した。4月からは全国7都市を回るツアー「Wakana LIVE TOUR 2019 ~VOICE~」を控えている。