4分の4拍子が半拍多く聞こえる
──いぶくろさんが作詞作曲を担当した「パラダイムシフト」はもはや和とか洋とかいう話の前に……。
いぶくろ どこだか分からない異国感がありますよね(笑)。これはまっちーがアレンジを大幅に変えてくれた曲で、僕が最初に出したデモはストレートなギターロックだったんですけど、まっちーが「この歌詞の世界観だったら、こういうアレンジはどう?」って返してくれて、それを受けてまた歌詞を書き直したりして、少しずつ変化をしていった曲です。こういう作り方は初めてだったので楽しかったですね。
──「調教師」「檻」「鞭の音」「抑制された四肢」といった刺激的なワードが並んでいますが、こういう歌詞をゆう子さんに歌わせたかったんですか?
いぶくろ (笑)。歌わせたかったと言うより、この曲をもともとストレートなギターロックにしていた理由として、僕の中では「馬鹿げた世界に もう / さよなら、と 手を振って」というサビの歌詞が曲の中心にあって……。
鈴華 嘘だあ!(笑)
いぶくろ いやいや(笑)。古い因習に捕らわれてる世界から新しい場所へと飛び立つ曲にしたかったんですよ。だけど、町屋さんはAメロの「調教師の指さす方へ / 囚われた檻の中」と始まる歌詞を印象的だと受け取ってくれて。
鈴華 私は初めて聴いたときに、「このAメロの歌詞は信じられない!」って思ってた。
蜷川 私たち2人は“調教師”しか頭に入ってこなくて(笑)。
いぶくろ 最終的には、“調教師=古い因習、決められた社会のルール”というメタファーをうまく残せるように歌詞を組み替えていって、1番のサビと最後のサビで“馬鹿げた世界”というのが違うものを指すように言葉を積み重ねて、「パラダイムシフト」という歌詞に出てこないキーワードをタイトルにして完成させました。
町屋 アルバムを作るときに自分たちの中で“変な曲枠”というものがあって、今回はその枠に入る曲がなくて困っていたんですけど、この曲はアレンジ次第でイケるなと。僕はプログレが大好きで、以前プログレばかりをずーっとやってたことがあるんですけど、そのうち変拍子が当たり前になって4分の4拍子が半拍多く聞こえてきたんです。それで「あ、4分の4ってめっちゃプログレだ!」って思うようになって、それからここ何年か、プログレと思いながら4分の4の曲を書いてるんですよ。そういう自分の特異な感覚にこの曲がハマったんで大胆にやれました。
──4分の4なのに変拍子っぽく聞こえるところは確かにこの曲にもありますね。
黒流 太鼓とドラムに関しては完成版のデモがレコーディング当日に届いたんですよ(笑)。 すっげえ楽しかったですね。
山葵 めっちゃ“調教”されました(笑)。
町屋 2サビのあとに8分の5拍子が来て、そのあとに4分の3が来るんですけど、スネアのアクセントがおかしな位置にある“難所”と呼ばれる箇所があって。
山葵 そういう変拍子による調教だけでなく、Aメロでひたすら右腕でフロアタムを叩き続けるという調教があって、「右腕があー!」ってなりながら叩いてました。
実はこれでもまだけっこうリミッターをかけてるんですよ
──今挙げた楽曲も含めて、作品中盤の厚みがすごいですね。
町屋 アルバムの中盤って中だるみしやすいところなんで、そこで耳を引くようなナンバーを持ってこれたらいいなと思って。あと、終盤の「砂漠の子守唄」は壮大で感動的なバラードというポジションの曲なんですけど、最後の「天上ノ彼方」で爽快にスパーン!と終わる流れにうまく引き継げると思ったんですよね。
──「砂漠の子守唄」は本当に名曲ですね。
鈴華 ありがとうございます。この曲はまっちーの家でアレンジ作業をしているときに浮かんだんですけど、「これは人がいないところでやらなきゃ」と思って、ピアノも何もない地下室みたいな部屋を借りて、小一時間ぐらいで1コーラス分の歌詞を書き上げました。
町屋 そこ、僕の寝室なんですけどね(笑)。陽の光がまったく入らない部屋で、9割が物置で、残りのスペースでかろうじて人1人が寝られるようなところなんですよ。
鈴華 闇ですよ、闇。洞穴みたいな場所で、それがすごくよかったんですよ。「これは書けるわあ!」って。ピアノを弾いてないのに頭の中でメロディが鳴り始めて、その部屋の上にあるスタジオに戻ってから初めてピアノで音にしたんです。それをまっちーに聴いてもらったら、「はいはいはい、いい曲じゃーん」って言ってくれて。本来、デモって力を入れて作る必要はないんですけど、すごく楽しくなっちゃって、そこから7、8時間ぐらいずーっとアレンジしてました。
──それはすごい。今の話を聞いたから言うわけじゃないですけど、砂漠と言うよりも、闇と言うか、Massive AttackやPortisheadみたいなダークなイメージが浮かびました。制作の環境って音に現れるんですねえ。
鈴華 出ますね! これは洞穴で書いた曲です(笑)。
町屋 私はその洞穴で毎日寝てます(笑)。
──今日は“進化”という言葉が何度も出てきましたが、和楽器バンドはこれまで得てきたものを何ひとつとして捨てることなく、次々と新しいものを吸収していくモンスターだと思います。
亜沙 ヒトカゲがリザードになってリザードンになる感じですね、「ポケモン」で言うと(笑)。
──(笑)。今回、さまざまな制約を取り払ったことで、これからすさまじい勢いで和楽器バンドの音の世界が広がっていきそうですね。
町屋 いやあ、実はこれでもまだ僕はけっこうリミッターをかけてるんですよ。(笑)。
──それはますます楽しみです。
鈴華 いつも背中に文字を書いてきた山葵も今回は封印してるし(笑)。
山葵 決してネタ切れではありません。
鈴華 そこは“進化”って言わなきゃ!(笑)
- 和楽器バンド「オトノエ」
- 2018年4月25日発売 / avex trax
-
MUSIC VIDEO盤
[CD+Blu-ray]
4968円 / AVCD-93870/B -
MUSIC VIDEO盤
[CD+DVD]
4104円 / AVCD-93869/B -
LIVE映像盤
[CD+Blu-ray]
5184円 / AVCD-93872/B -
LIVE映像盤
[CD+DVD]
4320円 / AVCD-93871/B -
CD ONLY盤
[CD]
3024円 / AVCD-93873
- CD収録曲
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- 細雪
- 「儚くも美しいのは」
- 雪影ぼうし
- 君がいない街
- World domination
- 独歩
- 沈まない太陽
- パラダイムシフト
- 風立ちぬ
- 紅蓮
- 砂漠の子守唄
- 天上ノ彼方
CD ONLY盤 ボーナストラック
- オキノタユウ-Live ver.-
(from 和楽器バンド Premium Symphonic Night ~ライブ&オーケストラ~ in大阪城ホール)
- MUSIC VIDEO盤DVD / Blu-ray収録内容
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- 雪影ぼうし (MUSIC VIDEO)
- 細雪 (MUSIC VIDEO)
- 細雪 for Piano and Symphonic Orchestra (MUSIC VIDEO)
- 砂漠の子守唄 (MUSIC VIDEO)
- 細雪 (MAKING)
- 砂漠の子守唄 (MAKING)
- LIVE映像盤DVD / Blu-ray収録内容
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- 「和楽器バンド Premium Symphonic Night ~ライブ&オーケストラ~ in大阪城ホール」より 第2幕「和楽器バンド×The WGB Symphonic Orchestra」
- オフショット
- 和楽器バンド TOUR 2018 音ノ回廊
-oto no kairou- -
- 2018年4月28日(土)
埼玉県 川口総合文化センターリリア - 2018年4月30日(月・振休)
茨城県 茨城県立県民文化センター - 2018年5月3日(木・祝)
北海道 わくわくホリデーホール - 2018年5月6日(日)
京都府 ロームシアター京都 - 2018年5月12日(土)
静岡県 静岡市民文化会館 中ホール - 2018年5月16日(水)
島根県 島根県民会館 - 2018年5月19日(土)
岡山県 岡山市民会館 - 2018年5月20日(日)
広島県 上野学園ホール - 2018年5月25日(金)
熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館) - 2018年5月27日(日)
福岡県 福岡市民会館 - 2018年6月2日(土)
愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール - 2018年6月3日(日)
福井県 フェニックス・プラザ - 2018年6月9日(土)
兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール - 2018年6月16日(土)
神奈川県 カルッツかわさき - 2018年6月23日(土)
福島県 とうほう・みんなの文化センター(福島県文化センター) - 2018年6月24日(日)
岩手県 北上市文化交流センター さくらホール - 2018年6月29日(金)
高知県 県民文化ホール オレンジホール - 2018年6月30日(土)
香川県 ハイスタッフホール - 2018年7月7日(土)
富山県 高周波文化ホール - 2018年7月8日(日)
長野県 まつもと市民芸術館 - 2018年7月16日(月・祝)
東京都 東京国際フォーラム ホールA - 2018年7月22日(日)
新潟県 新潟県民会館 - 2018年7月28日(土)
沖縄県 ミュージックタウン音市場 - 2018年8月5日(日)
宮城県 仙台サンプラザホール - 2018年9月1日(土)
大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール - 2018年9月2日(日)
大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール
- 2018年4月28日(土)
- 和楽器バンド(ワガッキバンド)
- ボーカル、尺八、箏(琴)、津軽三味線、和太鼓、ギター、ベース、ドラムからなる8人組。個々にプロとしてアーティスト活動するメンバーが、ニコニコ動画にアップした“演奏してみた”動画などを通じて集合し、2014年4月にエイベックスからVocaloid曲のカバー集「ボカロ三昧」をリリースした。同年8月には初のオリジナル曲となるDVD / Blu-ray「華火」を発表。2015年1月の東京・渋谷公会堂公演、5月に台湾で行ったメジャーデビュー1周年記念ライブのチケットはいずれもソールドアウトとなった。9月にはオリジナル曲を中心とした2ndアルバム「八奏絵巻」を発売し、10公演の全国ツアーを実施。2016年1月に初の東京・日本武道館での単独公演「和楽器バンド大新年会2016」も即日完売で成功させ、同年3月にはアメリカ・テキサス州オースティンで開催された世界最大級のフェスティバル「SXSW 2016」にも出演した。2017年9月に初のシングル「雨のち感情論」をリリース。同年11月に初のベストアルバム「軌跡 BEST COLLECTION+」を発表し、2018年5月に5枚目のアルバム「オトノエ」を発売した。