サウンドの目新しさより、楽曲ありきという考え方のほうが健全
──「和楽器バンドの土台ができあがった」という町屋さんの話を聞いて納得したんですけど、「雨のち感情論」は曲の頭から最後まで余計なものを一切削ぎ落としたアレンジだと感じました。これは今までと違う取り組みがあったということなんでしょうか。
町屋 アレンジの取り組み方としてはそんなに変わってないんですけど、これまで積み重ねてきた経験を発揮できたというのがポイントだと思います。
──特にやり方を変えたということではなく。
鈴華 この4年間でメンバーそれぞれの役割が見えてきたので作りやすくなったというのはありますね。レコーディングでは曲を作った人と町屋さんがディレクションをするというスタイルが固まってきたし、ほかにも例えば、今回はみんなレコーディングスタジオで録音したんですけど、亜沙だけは今回初めて自分の家でベースを録ったり。
亜沙 今回、ベースの音は自分的にはすごくよかったです。今まではアンプの音がいいと思って録ってたんですけど、実はあまりしっくりきてなくて。それで、俺はこれまで個人でも宅録をやってきてるし、最近はアンプシミュレーターとかの機材もいいから、宅録のほうがいいんじゃねえかと思ってやってみたら、意外とよかったですね。
──個人的には黒流さんの和太鼓がパーカッシブで印象に残りました。
黒流 和楽器バンドには打楽器が2人いるんですけど、初期は2人で詰め込むだけ詰め込んで、ずっとバトルをしているような状態だったんです。だけど、「四季彩-shikisai」を録っていく中で徐々に住み分けができてきて、ドラムを出しつつ和太鼓も出すという方法論が確立できたのかなと思いますね。2人の間に阿吽の呼吸が生まれてきたというか、事前に打ち合わせた以上のアンサンブルができてると思います。打楽器なのでメロディはないんですけど、打楽器でも歌ってるような、キャッチーなフレーズはあると思うので、ただただフレーズを細かく羅列するのではなく、グルーヴ感がある中で上モノやメロディを合わせていけば、僕らがそれを下から盛り上げることができるのかなと。
──これまでの楽曲が和楽器を聴かせることを意識したものだとしたら、今回は楽曲自体をしっかり届けることを意識しているように感じました。
町屋 確かに、サウンドの目新しさは僕らの推しポイントでもあるんですけど、それだけだと飽きられてしまうし、バンドとしては歌を聞かせて勝負していかないと成長していかないので、そう言っていただけると僕らがやろうとしていることは達成できているのかなと感じますね。和楽器の音色、軽音隊のパンチだけでは押し切れないときがいずれ来ると思っているので、楽曲ありきという考え方のほうが健全だと思います。
──そんなはずはないんですけど、「これ、キーボードが入ってるのかな?」と思う瞬間もあったりして。
町屋 あ、上モノはちょっと足しています。例えば、うちのバンドでは尺八はストリングスみたいな役割をしていて、特定のパートで「ここをもっとドラマチックに展開するようなアレンジにしたい」と思ったら、尺八の旋律を弦楽四重奏のトップに置き換えて、そこから3つトラックをうっすら足してトップの音をより際立たせるとか。箏だったらクラシックギターと同じ原理を応用してみたり、そういう工夫はしてますね。
鈴華 撥弦楽器ばかりのバンドなので、コード感はここ数年の悩みポイントでもあったんですけど、町屋さんが足りないコードをジャッジして最後にまとめてくれるようになったことで、キーボードが入っているかのようなコード感や聴きやすさが出てるんだと思います。
ちゃんとしたものを見せられなければ、次へは絶対に行けない
──さて、来年1月27日に横浜アリーナにて恒例の大新年会ライブが行われることが発表されました。東京体育館公演が終わった段階で、「次はさいたまスーパーアリーナか」なんて予想してたんですけど、わりと着実にステップを踏んでいきますね。
町屋 今までを振り返っても、僕らは徐々に会場を大きくしてるんですよ。clubasiaをやって、shibuya duo MUSIC EXCHANGEをやって、赤坂BLITZをやって、渋谷公会堂……ってけっこう刻んでるんです。なので、今回もまあまあいいところだと思います(笑)。
──改めて流れを聞くと確かにそうですね。
いぶくろ 最初のツアーファイナルが日比谷野音で、あそこは3000人ぐらい入ると思うんですけど、会場が埋まるかどうかというのも重要なポイントじゃないですか。そこをしっかり埋めて、「さあ、次!」みたいな感じで、ちゃんと押さえなきゃいけないポイントは押さえてきてるんですよ。
鈴華 うん、ムリなことはしてないね。
べに 会場はスタッフさんが決めてくるんですよ。
鈴華 サプライズみたいに「次はここだよー!」って聞いて、「おおー! がんばる!」って感じです。和楽器バンドは8人だけでは成し得ないステージでやっているので、スタッフさんを含めてチームで成り立っているんです。
亜沙 個人的には、デカい会場でやってソールドアウトできないっていうのはあまり好きじゃないですね。「ここだったらいけるんじゃないか」っていう会場に毎回挑戦していくことが大切だと思うので、武道館やって、東京体育館もやって、ほかにもいろんな会場を経験してきて、「じゃあ、次は横浜アリーナをやってみよう」と。そこがちゃんと埋められたらさいたまスーパーアリーナでやろう。さいたまスーパーアリーナが埋められたら東京ドームだよねって、一歩一歩着実にステップアップしていくやり方が俺は好きです。
黒流 そうやって会場を押さえていただくというのは逆にプレッシャーでもあって。そこで僕らがちゃんとしたものを見せられなければ、次に大きいところへは絶対に行けないと思ってます。
──横アリ公演に向けてのアイデアはすでに浮かんでたりするんですか?
鈴華 こないだ花道の話をしましたね。
黒流 ほかにもいろいろと話をしてます。現実的に可能なのか確認したり。
──可能かどうかわからないようなことをやろうとしてるんですか。
黒流 そうですね。あとは東京体育館でできなかったこととか。かといって、そういう仕掛けばかりに頼るんじゃなくて、内容についても話し合ってます。僕ら自身ステップアップした中で、どうやってそれを見せられるのかっていうことをこれから考えていこうと思ってます。
- 和楽器バンド「雨のち感情論」
- 2017年9月6日発売 / avex trax
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MUSIC VIDEO盤 [CD+DVD]
1998円 / AVCD-83911/B -
LIVE映像盤 [CD+DVD]
1998円 / AVCD-83912/B
- CD収録曲
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- 雨のち感情論
- 月に叫ぶ夜
- 雨のち感情論(Instrumental)
- 月に叫ぶ夜(Instrumental)
- MUSIC VIDEO盤DVD収録内容
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- 雨のち感情論(MUSIC VIDEO)
- 雨のち感情論(MAKING)
- LIVE映像盤DVD収録内容
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- 雨のち感情論(2017/7/21東京国際フォーラム LIVE映像)
- ワタシ・至上主義(2017/7/21東京国際フォーラム LIVE映像)
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CD ONLY盤 [CD]
1296円 / AVCD-83913
- 収録曲
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- 雨のち感情論
- 月に叫ぶ夜
- そこにあるかも知れない…
- 雨のち感情論(Instrumental)
- 月に叫ぶ夜(Instrumental)
- そこにあるかも知れない…(Instrumental)
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mu-moショップ・FC八重流専売数量限定盤 [CD+VR]
2700円 / AVZ1-83914
- CD収録曲
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- 雨のち感情論
- 月に叫ぶ夜
- VRコンテンツ収録内容
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- 空の極みへ(平安神宮単独奉納LIVE in 和楽器サミット2017)
※全4バージョン
- 空の極みへ(平安神宮単独奉納LIVE in 和楽器サミット2017)
- 和楽器バンド「和楽器バンド 大新年会2018」
- 2018年1月27日(土)神奈川県 横浜アリーナ
- 和楽器バンド(ワガッキバンド)
- ボーカル、尺八、箏(琴)、津軽三味線、和太鼓、ギター、ベース、ドラムからなる8人組。個々にプロとしてアーティスト活動するメンバーが、ニコニコ動画にアップした“演奏してみた”動画などを通じて集合し、2014年4月にエイベックスからVocaloid曲のカバー集「ボカロ三昧」をリリースした。同年8月には初のオリジナル曲となるDVD / Blu-ray「華火」を発表。2015年1月の東京・渋谷公会堂公演、5月に台湾で行ったメジャーデビュー1周年記念ライブのチケットはいずれもソールドアウトとなった。9月にはオリジナル曲を中心とした2ndアルバム「八奏絵巻」を発売し、10公演の全国ツアーを実施。2016年1月に初の東京・日本武道館での単独公演「和楽器バンド大新年会2016」を成功させ、同年3月にはアメリカ・テキサス州オースティンで開催された世界最大級のフェスティバル「SXSW 2016」にも出演した。2017年9月に初のシングル「雨のち感情論」をリリース。