どこで自分たちの音楽を根付かせていきたいのか

──アメリカではインタビューでどんな質問をされたんですか？

亜沙（B）　「感銘を受けた人は誰ですか？」とか。

いぶくろ聖志（箏）　それ、必ず入ってる！

鈴華　あとはアニメとかゲームのワードは必ず入ってきました。日本だとそういうものに対してネガティブな印象を持っている人がまだ多いですけど、海外の人たちはそれらを日本のすばらしい文化として当たり前のように受け入れていて、「日本は素敵なアニメにあふれていてうらやましい！」って言ってる方も多くて。もっと自信を持って日本の文化として広めていけたらいいなと思いました。

神永　政治や宗教についての質問も多くて。たしか、僕らがアメリカに行った頃にどこかの学校で銃の乱射事件があって、「それについてどう思いますか？」とか。

いぶくろ　あったあった！ 難しいよね。

神永　ミュージシャンとしてどういうふうに生きて、世界にどんなメッセージを発信していくのかっていうところを問われる質問……音楽だけじゃなくて、1人の人間としての価値観を聞かれることが多かったりします。

亜沙　国によってバックグラウンドが違うと思うんですよね。アメリカは基本的に合理的な国だと思うし、宗教や政治の面でも非常にパーソナルな国だと思うから、個々がどう思って活動しているのか、なぜそれをやるのか、そういう部分が重要なんだろうなあって。

──それは興味深いですね。あと、和楽器バンドに関するとあるアメリカメディアの記事を読んだら、「和楽器バンドは和楽器とメタルの融合」みたいに書かれていて。そういう受け止められ方についてはどう思いますか？

いぶくろ　僕たちの音楽を分かりやすく説明するときに、「和とボカロの融合」なのか、「和とメタル」なのか、「和とV系」なのか、日本国内でも伝える相手によって表現が変わってくると思うんですけど、アメリカの場合はインタビュアーの方がメタルっていう言葉を使うことが多かったですね。

町屋　サウンドがメタルに近いんでしょうね。

いぶくろ　あとは日本よりもアメリカではロックのサブジャンルが一般の人に広く認知されてるんだと思います。

──ああ、そうかもしれないですね。

神永　ヨーロッパも含めて、メタルは土着の音楽とつながって新しいジャンルになることもあるから、日本からもそういうメタルバンドが出てきたんだって理解されたのかもしれないですね。

山葵　ジャパニーズフォークメタル。

──ああ、確かにそう言えますね！ では、今後行ってみたい国や都市はありますか？

鈴華　行ってみたい国はもちろんあるんですけど、どこで自分たちの音楽を根付かせていきたいのかっていうことをしっかり考えて、その国でしっかり広げていく方向にシフトしてもいいんじゃないかっていう話をちょうどメンバーとしてました。

町屋　本当はツアースケジュールの中に海外の公演も組み込めたら一番理想的なんですけどね。

──声をかけてくれたから行くのではなく。

鈴華　そういうことももちろんあっていいと思うんですが、それだけだと「行きたいところに行く」っていう感じではないので。

勝負するには今がいいタイミング

──では、シングル「雨のち感情論」の話に移りたいと思います。デビュー4年目にして初のCDシングルですが、これにはどういった狙いがあるんでしょうか。

鈴華　和楽器バンドは動画サイトに上げたミュージックビデオをきっかけにデビューまでつながっているので、まず目で観ても楽しめるということを意識して、これまでCDシングルは出さず、映像シングルとしてDVDを出してきました。そしてデビュー以降、日本武道館でのライブや東京体育館2DAYS公演を経て、全国ツアーも3回終えて、海外での経験も積ませていただく中で、メンバーのことをお互い理解できるようになって、“和楽器バンドとは”というものもわかってきました。そこで次の展開をメンバー同士で話し合った結果、これまで私たちはメディアにあまり出てこなかったんですが、一般的なCDシングルというものを出して勝負するには今がいいタイミングなんじゃないかということで、今回シングルを切ることにしました。

──“和楽器バンド第2章スタート”という感覚があります。

町屋　これまでは自分たちの引き出しを全部広げながらギリギリのところでがんばってきた部分があったんですけど、4、5年やってきてだいぶバンドとしてまとまってきたと言うか、1stアルバム「ボカロ三昧」の頃は誰が全体を取りまとめるわけでもなく、みんなが音を重ねていった結果としてアルバムができたっていうノリだったんですけど、今は「こうしたいからこういうふうにしよう」という当たり前のことをやっと考えられるようになったんです。和楽器バンドの土台がここにきてしっかりできあがったということで、「じゃあ、このシングルを名刺代わりにしてフェイズ2に行きましょうか」というノリを僕は感じています。

──初のCDシングルを出すにあたって、どういう楽曲が必要だと感じてましたか？

鈴華　今まで和楽器バンドに一切触れてこなかった人が聴いても耳なじみのいい、キャッチーな曲をテーマにして作りました。

──これまでゆう子さんが書いてきた楽曲の中でもとびきりポップでキャッチーだと感じたんですけど、これはあえて狙った結果なんですね。

鈴華　あえてです。もともと、私の中では鳴っている系統の曲ではあるんですよね。私は昔からJ-POPを聴いてきた人だし。でも、サビはキャッチーにしつつも、和楽器バンドらしいソロ回しを入れたりしてます。歌詞にはこれまでの活動に対する思いを書いてます。