音楽ナタリー Power Push - 和楽器バンド
和楽器隊、洋楽器隊、ボーカリストがそれぞれ語った現在のモード
曲を育てたい
──武道館のライブではアルバム「八奏絵巻」の全曲を披露するそうですね。
町屋(G) はい。とにかく楽しみだなーって気持ちがすごく強いです。アルバムの中でもまだツアーでやってなかった曲がたくさんあって、その中には僕らのライブの見せ方を変えられるくらい振り幅のある楽曲も残ってるんです。それをセットリストに組み込んだときにどう演出できるかは今の課題でもあり、非常に楽しみな部分でもあります。
亜沙(B) 僕は、これから曲を覚えるのが大変だなーって。
一同 あははは(笑)。
亜沙 とはいえ早くみんなの前で演奏したいですね。やっていくにつれて曲がお客さんに浸透してノリが生まれたり、それを見て僕らが曲の役割を改めて考えたりできるので。そうすることで曲が育っていくから、どんどんいろんな曲をプレイしていきたいです。
町屋 うん。例えば「郷愁の空」は1月のワンマンで初披露して以降ライブを重ねたりアルバム用にレコーディングしたりする過程でアレンジが変わっていった曲で。この曲みたいに、いざやってみないとわからないものってあるもんね。
亜沙 そう。何事もやってみないと。
山葵(Dr) 「八奏絵巻」の曲の中には自分たちの技術の限界を突き詰めながらレコーディングしたものもいっぱいあって。録音したときはライブのことを考えずに作ってました。それを全国ツアーでいくつか演奏した結果、アンサンブルは全体的に底上げされたと思いました。だから残りの曲もできないことはないなって自信が付いたんで武道館も楽しみですね。
14カ月かかったオリジナルアルバム
──野音のライブではMCで「八奏絵巻」が14カ月かかったアルバムだとおっしゃってましたね。最初のオリジナル作品「華火」のときからもう構想を練っていたのでしょうか。
町屋 そうですね、アルバムを作ることは決まってました。「この曲をやろう」って決まっていたわけではなく、「華火」「戦-ikusa-」などをリリースしながら「この曲はアルバムに入るだろうね」って話をしていたくらいですが。それからどういう曲が必要かみたいにアルバムの会議を重ねて、もうちょっとミディアムテンポの曲、インストっぽい曲が必要なんじゃないかとか、ボカロ曲の特徴を引き継いで早口が入ってる曲がいいんじゃないかとか案をいろいろ出して、全体の構想をじっくり作っていきました。
──その結果、「八奏絵巻」はバリエーションを感じさせられる内容に仕上がりましたね。
町屋 もともと作曲できる人もたくさんいるバンドで、さらにメンバーそれぞれ「これが8人の音」っていうものが見えてきて。そうなるとロックという1つのくくりの中でもメタル寄りだったりアコースティックな風合いだったりと、いろんなサウンドを我々の持ちうるオーケストレーションで出せるんです。今回のアルバムは僕らの出せる音を末永く楽しんでいただきたいなということでこの選曲になりました。
亜沙 でも、もちろん「アルバムにはこういうタイプの曲が必要だ」という考えはありつつ、けっこう好きな感じにやった気がします。前回の「ボカロ三昧」ではアレンジの作業が中心で、それは曲を1から作るって作業ではなかったので。今回は8人で曲を作りアレンジをしてっていう、最初から煮詰める部分までやっているわけですから、やりたいことを自由に入れ込めたのかなって。
山葵 企画色の強い「ボカロ三昧」と違ってほぼ全曲オリジナルで、より和楽器バンドらしさを全面に出せたね。
和楽器バンドらしさのある楽曲
──亜沙さんが作った「Perfect Blue」はボカロ曲に多いスピーディなテンポの楽曲ですね。ただその演奏には琴の流れるような旋律が入っています。これが和楽器バンドの魅力だなあと感じる1曲でした。
亜沙 「Perfect Blue」はまさにアルバムの内容を話す中で「こういう曲を入れたいね」っていう話から生まれた曲でしたね。「六兆年と一夜物語」みたいにボカロ曲特有の早口で歌う歌をオリジナルとして作ってもいいよねって。自分はボカロPでもありますし、そういった曲を作るのは自分の役割かなって。
──楽曲の早口パートのボーカルは町屋さんが担当していますね。
亜沙 ゆう子さん(鈴華ゆう子 / Vo)がやるのもいいんですけどね。カウンター的に町屋さんがやるのってちょっと面白いんじゃないかなと思ったんです。その上で「ボカロ三昧」と違いを出せたらなと思って。
町屋 「ボカロ三昧」の「脳漿炸裂ガール」がわりと掛け合い的なボーカルの曲だったので、その流れを継承した上でより新しいものを目指しましたね。この曲ではトランペットの演奏とターンテーブルの操作も僕がやっています。
──町屋さんが作曲してメインボーカルも務めたスローナンバー「郷愁の空」も「八奏絵巻」の幅を広げた楽曲だと感じました。
町屋 「ボカロ三昧」にも僕がメインボーカルをとった「Episode.0」が入っていて、そういうボーカルの振り幅があってもいいかなってことで入れた曲ですね。もともと自分のために書いた曲だったんで、自分で歌いたいなと思って。
──この曲も出だしの尺八をはじめ、サウンドの要になってるのは和楽器ですね。
町屋 はい。ちなみにクラシックギターと琴の音色って意外と似ているのでうっすらハモらせたり、尺八で吹いてるフレーズがすごくストリングス的なアプローチの仕方だったんで、透き通るような弦の音が欲しくなって僕がバイオリンを入れたりもしています。ギターは最後に入れましたね。
──ストリングス的な尺八、って面白い言葉の響きですね。でも確かにライブでもバンドの音を聴いていると、和楽器がいわゆる和の音を出すための楽器という役割以上の働きをするなと気付かされます。すごく表現力のある楽器だなと。
町屋 そうなんですよ。例えば尺八は前に4つ、後ろに1つの5つしか穴が空いてなくて、普通に吹いたら5音階なのに、穴を4分の1だけ塞ぐことできちんとほかの楽器と同じように音をいろんな音階で出せるようになるんです。それは琴も三味線も同じで。各メンバーは楽曲を生かすための道具としてそれぞれの楽器を持っているわけで、楽器を生かすために持っているわけではないんです。例えば「Perfect Blue」のイントロって琴がバッキングで三味線が乗っかってますけど、最初それは逆で。
亜沙 ああ確かにそうですね、そこは逆だった。
町屋 実際にレコーディングを始めて、できあがった音を聴きながら「これは変えたほうがいいね」って音だけで判断して入れ替えたんです。「尺八だとちょっと間抜けだね」とも言ってて(笑)。
亜沙 ほかの楽器ではあんまり聴けない音を出せる。和楽器にはそういう面白さがありますね。
厚いリズム隊
亜沙 あと、このバンドの土台はドラムと和太鼓の2つによって作られてるんですよね。編曲もまずそこを2人で作ってるイメージ。
山葵 そうですね。まあレコーディングのときも黒流さんと僕、そして亜沙さんっていうリズム隊3人でリズムの打ち合わせをしてからレコーディングしていくんです。普通のバンドの視点だと和太鼓はパーカッションのような見え方になるけどそうじゃない。2人で1つのリズムを構築してるんです。そこはほかのバンドにない大きなところですね。
亜沙 そう、2人はセットみたいなイメージだね。
山葵 そもそも歴史的にはもともと大太鼓やシンバルなどそれぞれ独立して奏者がいましたよね。それがいつの間にかドラムセットっていう1つの楽器になった。和楽器バンドの和太鼓とドラムもそれに近くて、今や1つのリズムを作る役割のものとして統合できている。
亜沙 そんな組み合わせにも今回のアルバム制作でだいぶ慣れてきたよね。ドラムと和太鼓の棲み分けの仕方も曲の数が増えてくることでコミュニケーションがどんどんやりやすくなってる。「ここはパーカッションぽく」「ここはもう2人で全力で」って。
山葵 はい。僕と黒流さんのコミュニケーションが取りやすくなりました。そこはほかのメンバーも同じだと思ってて「この人だったらこのぐらいのことをやってくれるだろう」って見えてきたし、それをわかった上でさらにその上を目指すようにもなって。今よりもっといいものが作れるようになるんじゃないかなって期待を持ってます。
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「和楽器バンド 大新年会 2016 in 日本武道館」
- 2016年1月6日(水)東京都 日本武道館
- OPEN 18:00 / START 19:00(予定)
- ニューアルバム「八奏絵巻」 / 2015年9月2日発売 / avex trax
- 「八奏絵巻」豪華絢爛BOX
- 豪華絢爛BOX [CD+USB+2DVD+Blu-ray+写真集] / 15000円 / AVZ1-93228/B~E
- 「八奏絵巻」MUSIC VIDEO COLLECTION
- MUSIC VIDEO COLLECTION [CD+Blu-ray] 4104円 / AVCD-93224/B
- MUSIC VIDEO COLLECTION [CD+DVD] 3780円 / AVCD-93223/B
- 「八奏絵巻」LIVE COLLECTION
- LIVE COLLECTION [CD+Blu-ray] 4104円 / AVCD-93226/B
- LIVE COLLECTION [CD+DVD] 3780円 / AVCD-93225/B
- 「八奏絵巻」通常盤
- 通常盤 [CD] 2700円 / AVCD-93227
CD収録曲
- 戦-ikusa-
- 星月夜
- Perfect Blue
- 追憶
- 鋼-HAGANE-
- 風鈴の唄うたい
- 華火
- 郷愁の空
- 暁ノ糸
- 白斑
- なでしこ桜
- 反撃の刃
- 千本桜
- 華振舞
- 地球最後の告白を
(※初回盤のみボーナストラックとして収録)
MUSIC VIDEO COLLECTION 収録内容
- 千本桜
- 華火
- 戦-ikusa-
- なでしこ桜
- 反撃の刃
- 暁ノ糸
- 反撃の刃
- 暁ノ糸
LIVE COLLECTION 収録内容
- 六兆年と一夜物語
- 華火
- 星月夜
- 戦-ikusa-
- なでしこ桜
- 箏Solo
- 郷愁の空
- 虹色蝶々
- 脳漿炸裂ガール
- セツナトリップ
- 天樂
- 千本桜
- チルドレンレコード
和楽器バンド(ワガッキバンド)
ボーカル、尺八、箏(琴)、津軽三味線、和太鼓、ギター、ベース、ドラムからなる8人組。個々にプロとしてアーティスト活動するメンバーが、ニコニコ動画にアップした“演奏してみた”動画などを通じて集合し、2014年4月にエイベックスからボーカロイド曲のカバー集「ボカロ三昧」をリリース。同年8月には初のオリジナル曲となるDVD / Blu-ray「華火」を発表。2015年1月の東京・渋谷公会堂公演、5月に台湾で行ったメジャーデビュー1周年記念ライブはいずれもチケットをソールドアウトさせた。9月にはオリジナル曲を中心とした2ndアルバム「八奏絵巻」を発売し、10公演の全国ツアーを実施。2016年1月に東京・日本武道館で単独公演「和楽器バンド大新年会2016」を開催する。