変化していく制作姿勢

鈴華　「なでしこ桜」はもう1つポイントがあって、山葵くんの洋楽器のパーカッションがいろいろ入ってるんです。シャシャシャッて。

山葵　鈴とかシェイカーとかを使って、曲に彩りを加えていきました。

鈴華　“おもちゃ箱”から持ってきてくれたんだよね？

山葵　そう（笑）。自分のいろんな小っちゃい楽器がいっぱい入ってる箱があるんですけど、それをガラガラと持ってきて、あーでもないこーでもないっていろいろ鳴らしてました。

──すでに8人でいろいろな音を出せるのに、楽器をさらに増やしていくんですね。

山葵　はい。バンドを始めた頃は自分のパートを引き算しながら演奏の仕方を考えてたというか、ほかのメンバーのことを考えながら一歩引いて作ってたんです。でも結局それだけじゃ平凡なものしかできなくなるんですよね。それに気付いてから1人ひとりそれぞれの持ち味を生かしつつ、自分を出していくっていうコツをつかめてきたかなって気がしますね。

神永　足しすぎや、場所によってはお見合いしちゃったみたいなのも減ってきて、より自然に作れるようになりました。

ある意味必死の撮影

──「なでしこ桜」のミュージックビデオは、「戦-ikusa-」で男性陣が斬り合っていたものと違い、艶っぽくしっとりとした内容になっていますね（参考：和楽器バンド、新作「なでしこ桜」映像をGYAO!で公開）。

鈴華　水に入ってますからね。私は着物のままずぶぬれになって、ほかのメンバーは楽器を必死に守りながら演奏してます。

──水って、楽器の天敵ですよね？

鈴華　ですね（笑）。なのにギターに水がシャッとかかったり、あと雨も降らせたりして。

黒流　こっちもある意味必死でパフォーマンスしてた（笑）。

山葵　僕は全身水の中に突っ込んだのにカットされちゃって……。

亜沙　だって背中に描いた文字めっちゃにじんじゃってたじゃん。

鈴華　（笑）。山葵くんのNGシーンや撮影中の面白いやり取りはミュージックビデオのおまけとして収録されているので、そこでしか観られない素の表情や、殺陣で本気で焦ってる表情なども楽しんでいただけるかなって思います。

和楽器バンドの一番の目的

──映像へのこだわりが今回も強く現れていますね。一方で「戦-ikusa-」の映像が公開された際は殺陣が本格的だからかTwitterなどで「和楽器バンドはいったいどこへ向かっているの？」なんてコメントも挙がっていました。

鈴華　殺陣は「こんな見せ方もあるよ」っていう提案の1つなんです。私たちの主軸は、あくまで今の日本のカッコよさを国内や世界に向けて発信していくというところにあるので。

──音楽に限らない形で。

鈴華　はい。けれどももちろん和楽器のあるロックバンドとしての活動もブレてはいけないなっていうのも常に考えています。

──なるほど。では和楽器バンドが伝えていこうとしている音楽的なカッコよさとはどんなものだと考えていますか？

鈴華　日本にたくさん入って来る洋のものを取り入れながら、和を表現する部分ですね。

いぶくろ　和楽器ってもともと中国とかから渡ってきたものも多いんです。それを日本人がいいと思ってその楽器をどんどん使っていった結果、日本の伝統のものとして残ったものもあるわけで。だから僕たちも洋楽器と一緒に合わせるという形で今カッコいいと思うものをやっていきたい。そうしないと次の時代に残らないと思うんですよね。

黒流　和楽器奏者の中には自分の楽器にこだわるあまり、和楽器以外の人との共演みたいなチャレンジをしない人がたくさんいるんですよね。

蜷川　だから私たちは変なこだわりとかを持たないようにしていて。

黒流　うん。去年の夏に東京ディズニーランドで演奏してたんですけど。ディズニーの音楽チームの人は「コブシを振れる人は普通に歌える人が少ない」って言ってたんですね。すべてがそれっぽくなるっていう。でも（鈴華）ゆう子ちゃんは両方できる、歌い分けができるということで僕らに依頼がきたんですよね。