BiSH、BiS、GANG PARADE、EMPiREのマネジメントを行う音楽プロダクションWACKと、同社所属アーティストの楽曲を手がける音楽制作プロダクションSCRAMBLESが2017年に設立3周年を迎えた。同年12月にはそれを記念したオムニバスアルバム「WACK & SCRAMBLES WORKS」が発表され、東京・Zepp DiverCity TOKYOで行われた「WACKのフェス。」ではWACK所属アーティストが集結し、盛況を博した。
音楽ナタリーでは、WACK代表の渡辺淳之介とSCRAMBLES代表の松隈ケンタにインタビューを実施。会社を立ち上げてからこれまでを振り返ってもらうと共に、BiSHのデビュー時に発生した“想定外”のできごとや躍進の裏側、グループごとに異なるテイストの楽曲を制作しながらも“松隈イズム”が受け継がれたSCRAMBLESの制作プロセス、そしてプー・ルイのBiS卒業にまつわるいきさつなど、さまざまなトピックについて話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 佐藤類
盟友2人のいい距離感
──WACKとSCRAMBLESが昨年、共に設立3周年を迎えました。お二人がそれぞれ会社を立ち上げたときに、今に至るビジョンはどの程度見えていたんでしょうか?
渡辺淳之介 いやいや、何も見えてなくて、ホント行き当たりばったりでした。当時はBiSの解散直後だったんで「アイドルはもうこりごりだな」と思って、何か違うことをしたいとは思ってましたけど。
──BiSの成功体験を踏まえて「引き続きアイドルをやろう」とはならなかった?
渡辺 マジでなんなかったですね(笑)。プラニメとBILLIE IDLEは以前からの流れで手がけることになったけど、それまでずっと全力疾走でやってきてもう疲れちゃってたんで。
松隈ケンタ それに僕ら2人はもともとバンドマンだからね。アイドルはもういいから、バンドとかソロシンガーとかそういうところに仕事の幅を広げていきたいっていう気持ちが最初は強かったかもしれない。
──そもそも渡辺さんと松隈さんが2人で1つの会社を運営するという案はなかったんですか?
渡辺 最初はそれも考えたんですけど、今は分かれてるからこその強みがあるなと思ってて。もし2人で会社を共同経営してたら、例えば僕が駅のデカい広告出したりしたときに、松隈さんは「えっ?」ってなったりすると思うんですよ。
松隈 うんうん、「そこに金使うならスタジオの機材買ってくれ」ってなる(笑)。そうなることがわかってたから、別の会社にしたっていうね。
──役割分担がうまくできてるんですね。
松隈 だから渡辺くんが何かやるときも俺に相談とかはほぼないしね。前日とか2日前とかに報告受けるくらい。やっぱりほとんど即断で決めちゃうんで。
──そうした渡辺さんの施策に関して「それは違うんじゃないか」と思うときもあります?
松隈 一切ないです。まあ会社も別だし、そもそも職業がまったく違うので。たまにサウンドプロデューサーなのに戦略みたいな部分に介入したがる人もいるんですけど、まあ餅は餅屋だからね。僕はそういうことは一切言わないようにしてます。まああとから笑って「あれスベっとったね」とか言うときはありますけど(笑)。
BiSHデビュー時の“想定外”
──「アイドルはこりごり」と言いつつもお二人は2015年にBiSHを世に送り出し、そこから彼女たちの快進撃が始まります。そもそもBiSHはどんなコンセプトで始めたグループなんでしょうか?
渡辺 BiSで地下アイドルをやったから、今度はそうじゃない、メジャーなものをやろうと思ってたんじゃないですかね。
──でもBiSHの楽曲は最初からオルタナ感の強いロックサウンドでしたよね。
渡辺 確かに最初のアルバム作るときにはジョンスぺ(The Jon Spencer Blues Explosion)とかスマパン(The Smashing Pumpkins)みたいなイメージでって松隈さんに話してましたね。「ギターの音もっと汚くしてください」とか言って。松隈さんからそれに沿った楽曲は1曲も上がってこなかったけど(笑)。
松隈 だってジョンスぺが弾かないとジョンスぺの音にはなんないから(笑)。
渡辺 まあアルバムっていうのはだんだん育っていくものだから。最初からみんなが気に入るようなものを作るんじゃなくて、まずは好き勝手やってみて、それを気に入ってもらえるような活動をしていけばいいんだっていうのはありました。
──BiSHは最初から狙い通りに受け入れられましたか?
渡辺 2015年4月に初ライブをやったんですけど、そのライブがシークレットだったにもかかわらず、誰かが漏らしちゃったんでしょうね、300人か400人ぐらい来ちゃって「あれ、おかしいな」「最初は15人くらいから始めるつもりだったのに」って感じにはなりました。そのあと5月に出した1stアルバム「Brand-new idol SHiT」もいきなり5000枚くらい売れちゃって。オリコン20位とかだったのかな。メジャーのレコード会社からもいっぱい問い合わせが来るし、これはなんだか思ってたのと違うなって。
──予想外に順調な滑り出しだったんですね。
渡辺 「Brand-new idol SHiT」で新生クソアイドルとか言って、ミュージックビデオでもウンコかけたりしてたのに(笑)。
──今あの映像を観ると「なんでBiSHにこんなことさせてるの?」って思いますけど。
渡辺 いや、でも(セントチヒロ・)チッチにウンコかかってるのは今観てもかわいいですよ。完全に僕の趣味の世界ですけど(笑)。
松隈 最近ファンになってくれた人たちはあれ観てどう思うんだろうね。見て見ぬふりをしてくれてる?
渡辺 うん、触れないようにしてくれてる(笑)。
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BiSH急成長の理由
- V.A.「WACK & SCRAMBLES WORKS」
- 2017年12月6日発売 / avex trax
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CD+DVD盤
4860円 / AVCD-93764/B -
CD盤
3240円 / AVCD-93765
- CD収録曲
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- スパーク(オリジナル:BiSH) / beat mints boyz a.k.a. 松隈ケンタ×JxSxK
- オーケストラ(オリジナル:BiSH) / カミヤサキ、ゴ・ジーラ、ももらんど(BiS)&ヤママチミキ、ココ・パーティン・ココ、アヤ・エイトプリンス(GANG PARADE)
- gives(オリジナル:BiS) / アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、リンリン(BiSH)&キャン・マイカ、ユイ・ガ・ドクソン、テラシマユウカ(GANG PARADE)
- Nerve(オリジナル:BiS) / BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiRE
- Plastic 2 Mercy(オリジナル:GANG PARADE) / キカ・フロント・フロンタール、パン・ルナリーフィ(BiS)&アイナ・ジ・エンド、ハシヤスメ・アツコ、アユニ・D(BiSH)
- EMPiRE is COMiNG / EMPiRE
- WACK is FXXK / SAiNT SEX
- フライングヒューマノイド(オリジナル:中川翔子) / プー・ルイ、ペリ・ウブ(BiS)&モモコグミカンパニー、リンリン(BiSH)&ユメノユア、ヤママチミキ(GANG PARADE)
- ラバソー ~lover soul~(オリジナル:柴咲コウ) / セントチヒロ・チッチ(BiSH)&アヤ・エイトプリンス(GANG PARADE)
- 屋上の空 / Buzz72+ feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)
- DVD収録内容
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- スパーク / beat mints boyz a.k.a. 松隈ケンタ×JxSxK(Music Video)
- WACK is FXXK / SAiNT SEX(Music Video)
- 渡辺淳之介(ワタナベジュンノスケ)
- BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREらが所属する事務所・WACKの代表取締役として各グループのプロデュースを担当。前例のないプロモーション施策を次々と実施し、2014年にはBiSの神奈川・横浜アリーナ公演を成功させた。現在はWACK所属アーティストのほかに、NIGOと共にBILLIE IDLEのプロデュースも手がけている。2017年7月に千葉・幕張メッセイベントホールにてBiSHの単独公演を成功に収め、8月にはWACKとエイベックス・エンタテインメント株式会社によるプロジェクト「Project aW」で新グループ・EMPiREを始動させた。
- 松隈ケンタ(マツクマケンタ)
- 福岡県出身の音楽プロデューサー、音楽制作プロダクションSCRAMBLES代表。ロックバンドBuzz72+を率いて上京し、2005年にavex traxよりメジャーデビュー。編曲家CHOKKAKUのプロデュースにより4枚のCDを発表する。バンド休止後に作詞家、作曲家としてアーティストへの楽曲提供をスタートさせ、BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREらの楽曲を手がけている。さらにロックバンドGHOST ORACLE DRIVEのボーカルを担当しているほか、ギターブランド、楽器店、音楽スクール、スタジオを運営している。