wacci×asmiインタビュー|コラボならではの明るい輝き放つエールソング「リバイバル」

wacciがasmiとコラボレーションした楽曲「リバイバル feat. asmi」が、5月24日に配信リリースされた。

「リバイバル」はフジテレビ系の情報番組「めざましどようび」のテーマソングとして橋口洋平(wacci)が書き下ろした曲。ゲストボーカルにasmiを迎え、「我慢したり、失ったりした分だけ、これからの日々が素晴らしいものになるように」といった願いを力強く表現したエールソングで、蔦谷好位置がアレンジを担当した。

音楽ナタリーではwacciとasmiにインタビューし、「リバイバル」の制作エピソードや蔦谷のアレンジの魅力について聞いた。

取材・文 / 田中久勝撮影 / 望月宏樹

いつもはここまで明るい歌は書けなかった

──フジテレビ系の情報番組「めざましどようび」のテーマソング「リバイバル」は、新しい一歩を踏み出す人の背中を優しく押すエールソングです。まずこの曲がどうやって生まれたのか教えてください。

橋口洋平(Vo, G) 去年から今年にかけてたくさんの学園祭でwacciにお声がけいただいたんです。そこでコロナ禍に青春時代を過ごした学生たちの声を聞いて。悔しい思いを抱きながらも学園祭を心から楽しもうとしてる姿を見ているうちに、学生の皆さんのリアルな思いが伝わってきたんです。自分の思いはもちろん、10代、20代の若い人たちの悔しい思いを込めつつ、前向きに生きられるような歌がいいなと考えて書きました。「誰かを守るために 投げうった青春」や「差し出した日々」という歌詞は、直接出会った方々からもらったフレーズのような気がします。

──ゲストボーカルとしてasmiさんが参加されていますが、もともとasmiさんの声を想定しながら曲を書いていったのでしょうか?

橋口 はい、asmiさんがいなかったらできなかった曲です。僕はいつもはここまで明るい歌はなかなか書けないのですが、今回はasmiさんがいてくれたので、書く勇気が出たのかなと思っています。

wacci

wacci

──もともとasmiさんの声に対してどういう印象を持っていましたか?

橋口 asmiさんのソロ作品や、ほかのアーティストとコラボしている楽曲を聴いて感じたのは、誰よりも近くで歌ってくれているような感覚です。存在感はあるけど身近でかわいらしくてポップで、でもカッコいい部分もあって。唯一無二の声だと思っています。

──asmiさんは今回のコラボにあたって「これまで何かに思い悩んだ時、wacciの曲に幾度となく救われてきました。暗くて怖い夜道を温かく灯す道標のような橋口さんの歌声は、今も変わらず私の希望であり憧れです」とコメントしています(参照:wacciとasmiが「めざましどようび」新テーマ曲歌う)。

asmi 中3のとき、wacciさんの「大丈夫」という曲が主題歌になっているドラマ「37.5℃の涙」を観て、そこでwacciさんの存在を知りました。それ以来、めちゃくちゃしんどいときもイヤホンで「大丈夫」を聴いて救われていたので、今回コラボをさせていただけて本当にうれしかったです。

asmi

asmi

──asmiさんは橋口さんからデモを受け取って聴いてみて、どんな感想を持ちましたか?

asmi デモをいただいたのが今年の3月に入ってすぐくらいで、ちょうどコロナの規制緩和を政府が進めるタイミングで、やっと未来が明るくなり始めると思えたときでした。私が音楽活動をスタートさせたのが4年前で、事務所に入ったのがコロナ禍だったんです。なので実質1年しか規制のない状態で活動できていなくて。アーティスト活動だけではなく、おばあちゃんとおじいちゃんに会いに行けない寂しさや苦しさも感じていたので、「リバイバル」のデモを聴いたときは感動して鳥肌が立ちました。サビの「世界中の心拍が戻り」というフレーズで、私の心拍も戻ったような感覚を覚えました。

全部サビに聞こえるようなメロディ

──先ほど橋口さんが「いつもはこんな明るい曲は書けない」とおっしゃっていましたが、メンバーの皆さんは「リバイバル」のデモを最初に聴いたときどんな印象を受けましたか?

村中慧慈(G) 率直にwacciだけでは作れなかった曲ができあがったなと思いました。

横山祐介(Dr) 今までにない明るさや元気さがあって、前を向いてる感じがしました。2番の「いらないと言われて なお繋いだ絆に胸を張れ」という歌詞が、去年の学園祭のステージで橋口が学生たちに伝えていた「コロナ禍で会うべきでないと言われ続けた中で、紡いできた皆さんの友情はどの世代のものよりも強い」というメッセージからつながっているなと思いました。実際に感じた気持ちを歌詞に含めていて聴いた人の印象に強く残る曲を作ってきたなという印象を受けました。

因幡始(Key) 僕がいつもとの違いを一番感じたのはサウンド面ですね。展開が進む中でまるで別の曲みたいなメロディラインがどんどん出てくる。それが普段のwacciにはない感じなので、曲の組み立て方が面白いと思いました。橋口に聞いたら「全部サビに聞こえるようなメロディを狙った」と。そういう作り方があるんだと感心しました。たぶん音域もasmiさんに合わせて作っていて、いつもの音域と変わっているから新鮮に感じた部分もあると思います。

橋口 「めざましどようび」の中でどのフレーズを使ってもらってもいいように、僕のパートもasmiさんのパートもサビっぽくなるように作りました。

小野裕基(B) asmiさんが歌うことを想定して曲も歌詞も書いていることが伝わってきましたね。wacciの新たな一面が出てきたなと感じました。

wacciとasmi。

wacciとasmi。

──今回プロデュースを手がけた蔦谷好位置さんは、asmiさんの声を「時代の声」と評していました。

橋口 本当にその通りだと思います。ストリートライブでも思わず足を止めてしまう声だと思うし、SNSで歌っている動画が流れてきても指を止めてしまう声というか。

──でもasmiさん本人はご自身の声の特徴について中学生くらいまではそこまでに意識しなかったと、過去のインタビューで話されていましたね(参照:asmi「earth meal」インタビュー|TikTokで「ヨワネハキ」が総再生数26億回超え、Z世代の共感を呼ぶシンガーソングライター・asmiの素顔に迫る)。

asmi そうなんです。高校時代は軽音楽部に在籍していて、大編成のバンドでボーカルとコーラスをやっていたんです。でもバンドの中では声が埋もれてしまったり、張り上げて歌う子のほうがオーディションに受かったりで、私はコーラスでがんばるという感じで。メインボーカルになかなかなれないし、そういう意味で自分の声がコンプレックスにすらなっていました。

帯域で時代性が変わってくる

──蔦谷好位置さんのプロデュースを受けて、どんな学びや気付きがありましたか?

小野 とにかく蔦谷さんの作業の速さにビックリしました。頭の中に着地点、完成型が明確に存在しているからなのかなと。

因幡 少しマニアックな話になりますが、帯域の棲み分けが天才的で、ローの部分の使い方とか、上の帯域をどこまで抜けさせるかでその楽曲が持つ時代性が変わってくると教えていただいて驚きました。蔦屋さんの仕事の緻密さと、蔦屋さんと共同でアレンジをしてくださったKOHDさんの丁寧な仕事ぶりにもびっくりしましたね。あと自分の中ではミステイクだと思った部分を、蔦谷さんはよしとすることが多々あって。それは勢いやニュアンスを優先してくださっているからなんですよね。逆に自分が大丈夫と思ったコードのトップの音が、蔦谷さんが狙っている音と違うときは「その音はこういうふうに弾いてほしい」と言っていただいたり。それはみんなが言っていたように、蔦谷さんには曲のゴールが見えているからだと思います。

asmi 私も自分自身で「これちょっとアカンかったかな」と思ったところが案外OKで。それが意外でしたね。声を張り上げなければいけないキーだったのでそこはチャレンジでしたが、そんなにつまずくこともなく、あっという間にレコーディングが終わった印象です。

──この曲の制作の裏側を追った動画で蔦谷さんは「この曲はピアノとアコギがほぼ主役」ということをおっしゃっていました。

村中 アコギのレコーディングはすごく興奮しました。8本くらい用意してもらってたよね?

橋口 8本用意してもらって、ちょうど蔦谷さんが求める音にハマるアコギがあったので、それで現場のテンションが上がっていましたね。

──ベースも、小野さんの演奏のオクターブ下にサブベースがずっと流れていて、それがサウンドの厚みにつながっていると思いました。いつもはやらない手法ですよね?

小野 自分ではなかなか選ばないやり方ですけど、やったことがないアプローチは勉強したいですし、実際入れてみていただいたのはとても面白かったです。今回経験せずに見よう見まねでやろうとしてもこううまくはできなかったでしょうし。

──アレンジに関して蔦谷さんにはどんなリクエストを?

橋口 「めざましどようび」の番組スタッフからいただいたオーダーや、自分の意図は伝えさせていただきました。そして蔦谷さんに「曲が始まってすぐにストリングスを入れたほうがいいね」とか、いろいろとアイデアをいただいて、ワンコーラスだけが上がってきたときに、かなり完成形に近くて。自分たちの曲のアレンジをメンバー以外にお願いをするときって、最初にアレンジが上がってきた段階で、細かい修正をオーダーすることもあるのですが、今回は何も言うことがないくらい本当に素晴らしくて。

村中 僕らは細かいところが気になる5人なんですけど、蔦谷さんとの制作は本当にスムーズに進みましたね。

wacci

wacci

橋口 いつもはメンバーの誰かが中心になってアレンジしていて、ほかの4人はその人の意向になるべく沿うようにやっているんです。今回はメンバーではなく蔦谷さんにいろいろアドバイスをいただきながら進めたことで、本当に勉強になった部分が多くて、感謝しかありません。

村中 アレンジは歌やコード進行に対してベストな音を探す作業だと思うんですが、蔦谷さんはその最上級の形を作られている感じがしていて。最近は相手の想像に対して、それを破壊して上回るようなアプローチを考えることがマイブームなんですけど、蔦谷さんのアレンジを聴いたときに歌に寄り添うことの大切さを改めて感じました。

次のページ »
気付かれない隠し味