ナタリー PowerPush - Veni Vidi Vicious
ニューアルバム「Good Days」完成 入江良介、そのロック観を奔放に語る
共感を得るんじゃなくて、自分が発言するために歌ってる
──1stの「Time is Over」や前作の「ビジネスソング」もそうですけれど、入江さんは自分の人生のありのままを歌詞に書きますよね。それをロックンロールとして鳴らす。自分の音楽がそういうスタイルになっているのはなぜだと思いますか?
普通に洋楽を聴いてて、俺が好きになったバンドはそういう歌詞なんですよね。
──ちなみに最初に好きになったのはどのあたりですか?
高校のときはTHE STROKESとかが全盛期だったんで、そのへんは好きで聴いていて。THE CLASHとかRANCIDとかボブ・ディランも好きでしたね。そういう人たちの歌詞を見てると、好きなことを言ってる感じがするんですよ。しゃべるように言ってる感じがする。そういうのを日本語でもやったらいいなと思って。だから、語呂が悪くても言いたいことは言う。初めからそういうスタイルでしたけど、最近になってそれがより強くなってきてるかもしれないです。
──1曲目の「悪い方」でもいきなり「The Cigavettes」っていう固有名詞が出てきますし、実際今年の4月にはThe Cigavettesと対バンでライブをやってるわけで。そういうふうに、自分のドキュメントとして歌詞を書いている。
そうですね。周りで起きたことが曲になる。売れるためにやってる人だったら、言葉を選んで、聴き手の共感をなるべく得るような歌詞にすると思うんですけど、そういうことをやりたいわけじゃないし。普段から、俺は音楽以外で人に自分の思ってることを伝えたりしないんですよ。共感を得るんじゃなくて、自分が発言するために歌ってる感じです。
──じゃあもし自分が音楽をやってないとしたらどうしてると思います? ふさぎ込んでる?
何してるんでしょうかね? でもふさぎ込んでる感じじゃないと思います。音楽やってなかったら、ということは考えられないけど、何になりたいかと聞かれたら、遊び呆けてる人になりたいです。
休んでる間は自分を理解する時間だった
──昨年初頭にVeni Vidi Viciousは一度活動を休止しています。注目が集まってきた段階で突然休止したわけですけれども、あれはどういうことだったんですか?
あの頃はCDを出して、ライブにもお客さんがつくようになって、右肩上がりのときだったんです。でもある程度お客さんが増えると「あの曲をやってほしい」って思われるようになるんですよね。俺は普段セットリストも決めずにライブをやるタイプで、その場の雰囲気とか気分で次の曲を決めたりしてたんですよ。でも、あの頃は自分から「今日はあの曲をやんないと」とか考えるようになっちゃった。それは俺がバンドを始めたときと全然違う意識で。もちろんお客さんのことを考えるのは大事なんだけど、ライブをやってる最中にそういう考えが出てきちゃうのは違うなと思って。お客さんがイメージする俺の理想像と、俺自身の思う自分とが違ってきちゃったのもあったし。だからバンド活動を休止しました。
──でも1年後に再始動したわけですよね。もう一度同じ名前でやるということは、ある程度そこを引き受ける意識もあったわけですか?
休んでる間は自分を理解する時間だったので、いろんな人としゃべりましたね。で、ある人に「君にはいろいろ嫌なこともあったんだろうけど、でも全部自分の思いどおりになってるじゃん」って言われて。「確かに!」って思って。そこからはあまり無理しないようにやってますね。無理をしてまでツアーには出ないし、うまいやり方を見つけてやっていこうって思ってます。ライブをするのは好きだから。
──4月には復帰作として「9 Stories」というアルバムをリリースしていますよね。あのアルバムを作ってるときの状況はどんな感じでした?
あれを録ってるときは俺もボロボロだったし、レコーディングも無意味に8カ月くらいかかっちゃったんですよね。歌入れに行っても、声がうまく出なくて帰っちゃったり。今回はそれとは全然違いますね。オケも4日くらいで録っちゃったから。前のアルバムも曲によってはすごく好きなんですけど、その時期は無駄に時間がかかってたから、ライブでそのときの曲をやると嫌な思い出がよみがえってくる。あんまりやりたくなかったりします。
──それに比べると、今回のレコーディングはすごくいい状態だったんですね。
そうですね。やっぱり部屋で1人でデモを作ったり、パソコンを前に曲を作るようなことができないんで。ちゃんとメンバーがいて、スタジオで曲を作るというのが理想です。
Veni Vidi Vicious(べにびでぃびしゃす)
入江良介(Vo,G)、入江健(G)の兄弟を中心に2005年4月に結成。2006年「FUJI ROCK FESTIVAL '06」の「ROOKIE A GO-GO」に出演し、ライブハウスシーンで大きな話題を集める存在となる。翌2007年12月にThe Mirrazとのスプリットシングル「NEWROCK E.P」、2008年10月に1stアルバム「IRIE RACKIT」、2009年6月にミニアルバム「I Like Beethoven. Especially His Lyrics.~ベートーベンは好き。特に詞が良い。~」をリリースするも、2010年1月に突如活動を休止。同年4月に入江良介、入江健の2人体制で再始動することを宣言し、2011年4月に2ndアルバム「9 Stories」、同年10月に3rdアルバム「Good Days」をリリース。現在はサポートメンバーに松田祐伴(B)、大屋博(Dr)を加えて活動している。