燃費が悪いオーガナイザーSORA
──これだけカッコいいバンド、アーティストが一堂に会するイベント、無視はできませんよね。MUCC結成25周年やD'ERLANGER再結成15周年という大きな節目と重なること、2016年7月に解散して以来となるgirugameshのライブなど見どころも多いですが、何より「V系Respect Super Session」と題したセッションの数々が非常に気になります。
来夢 「将来、大好きなXのPATAさんと、大好きなMUCCのミヤさんに挟まれて歌うことになるぞ」と、来夢少年に伝えたいですね。あと、初めてのMUCCさんとの対バンが武道館というのも感慨深くて。
ミヤ あれ、したことなかったけ?
来夢 そうなんです。だから、このイベントでは少年マンガみたいなストーリーを歩ませてもらいます(笑)。
ミヤ そっか、してなかったか。よろしくお願いします。
kyo キズとアルルカンはさっきも話したように夏に共演して、DEZERTとはMUCCのイベントで競演しているよね。
ミヤ そう考えるといい流れですね。
kyo 今回はSORAががんばって、いろいろつないでくれています。
Sacchan 本当にこれはSORAくんにしかできなかっただろうなと、心底思っていて。「もうちょっと楽にしてよくない?」と思うくらい、あんなに律儀な奴はいないし、本当に感謝しかないです。
ミヤ でも、燃費は悪いですよね。出演のお願いしに神戸まで来たりしますから(笑)。
Sacchan そうなんです。もうちょっと効率というものはないのかなと。
来夢 器用ではないですよね。僕、最初にこの話をもらうとき、SORAくんがすごく深刻な顔だったので、バンドに誘われるのかと思ったんです(笑)。それくらい重い雰囲気だったんですが、よくよく話を聞くと「このイベントで今のVisual Rockを見せたい、そこにはキズが絶対に必要だ」と言ってくれて、それがすごくうれしくて。裏のない、本当にまっすぐな言葉だったので、すごく心を打たれましたね。
奈緒 僕らはちょうどバンド内でトラブルがあった頃に、SORAからこのお話をいただいて。最初はバンドがどうなるかわからなかったから、せっかく誘ってもらったのに申し訳ない気持ちでいっぱいだったんですけど、無事バンドも立て直せたので、ここでしっかり恩返ししたい思いでいっぱいですね。このイベントを大成功させるためのピースとして、しっかり役割を果たしたいです。
Sacchan 本当に不器用ですけど、それを皆さんが理解してくださっているので、SORAくんに任せてよかった……と言ったら変ですけど、SORAくんがやると言ってくれてよかったと本当に思います。これをきっかけに、僕ら世代も含めてこのV系という言葉に新たな意味をもたらすことができるかもしれないし。先輩達の胸を借りる形になってしまうのは逆に申し訳ないですけど、とにかくここを経て来年、再来年と変わっていくものがあればいいなと、信じてやるしかないと思います。
奈緒 このメンツを見たらわかりますけど、今のヴィジュアル系と呼ばれるシーンのドリームチームになっているので、参加する以前に観るだけでもおなかいっぱいじゃないかな。セッションではЯyoさん(Dr / girugamesh)とご一緒するんですが、Яyoさんはアルルカンのレコーディングでエンジニアをしてもらったりと縁が深いので、こういう形で一緒にやれることがうれしいですし、ほかのセッションを見るのも楽しみですね。
来夢 SORAくんとも「文化祭みたいで楽しいね」って話してましたけど、まったく休む暇がなさそう(笑)。
──セッションにセレクトされたアーティストもそうですけど、そこに参加するメンバーの人選も的確ですよね。
ミヤ なかなか的を射ていると思いますよ。
奈緒 どれも見たいですものね。
kyo これ、SORAが「なんで俺が呼ばれないんだよ!」っていじめられないか心配だよね(笑)。
来夢 それこそ「hideさん好きな人って、誰がいたっけ?」と、改めていろんな人のルーツを確かめるきっかけになったりして楽しいです。僕、セッションに「Respect」って付いているのがいいなと思っていて。Visual Rockでもあまり見かけないじゃないですか。
ミヤ 確かに、誰をリスペクトしているってあまり口にしないし。
来夢 最近は言えるようになりましたけど、昔はインタビューでも抵抗がありました。
kyo それはね、言ったほうがいいよ。先輩にかわいがってもらえるから(笑)。
ミヤ 今回、“ムック”としても「Respect Session」に選んでもらっていますが、自分達の曲のカバーセッションって見たことがないんですよ。実はこの取材の数日前に自分達がセッションに選んでもらえていることを知って、「誰がやるの?」って聞いたくらいですから。俺が好きなメンツがそろっているから、当日が楽しみです。
「V系って知ってる?」に向けてのそれぞれの思い
──どんな曲を選ぶのかも今から気になりますね。最後になりますが、お一人ずつ当日に期待することを聞かせてもらえますか?
来夢 僕はまだこのシーンにもストーリーや感動や伝説は残っていると思っていて、今回のイベントがそのきっかけになるんじゃないかなと信じているんです。……と、堅いこと言いましたけど、いちファンとしてはPATAさんがhideさんの曲をまた弾いてくれる姿を隣で見られることで、自分の人生における最大の楽しみや感動が得られるんじゃないかと思います。自分はキズとしても出演するので、感情的にごちゃごちゃしそうですけど、自分がリスペクトしているこの“Visual Rock”というものを日本武道館で思いっ切り見せたいです。
Sacchan 先輩達が通ってきた道を、僕らはわりと楽に歩かせてもらってきた感が正直あって。なので、僕達がまだ整地されていないところも歩いていきたいという意味も込めて、ここから何かが始まればいいと思ってます。そのタイミングに偶然先輩達の周年を祝えることはSORAくんに感謝するべきところでもあるので、先輩をリスペクトしつつ、僕達の世代が“始まる”場所になればいいなと。それが来てくれたお客さんに何かしらで伝わると信じて、やっていきたいです。
奈緒 僕はヴィジュアル系というジャンルにきっかけをもらったことで、今はこんなドリームチームと一緒に、アルルカンというバンドで日本武道館に立たせてもらえるわけで。自分達が先輩の背中を見て育ってきたように、このイベントがきっかけで次の世代から「あの日をきっかけにバンドを始めました!」という人が現れてもおかしくないと思うので、つないできてもらったバトンを次に渡せるようなステージを作りたいです。
ミヤ まず、後輩がこうやって武道館を仕切ってくれるようになってきたことがすごくうれしくて。例年の流れとはだいぶ違うことはみんな感じると思うし、かつLUNA SEA、GLAY、DIR EN GREY、hide、BUCK-TICKなどそうそうたるセッションのメンツにムックが選ばれていることが単純にうれしいです。あとは、PATAさんと一緒にhideさんの曲を弾かせてもらえるのはすごく感慨深いなと。俺もそういう意味では来夢と一緒の気持ちで、世代を超えてこういう形で音を出せて、それを見てもらえる環境があることがすごくハッピーです。
kyo 僕は個人的に去年のMAVERICKの年末のイベントでたくさん迷惑をかけているので、しっかりとその借りを返したいなと。あと、今日こうやってみんなと話してみて、憧れや責任感や想いというのがすごく伝わりました。イベントを迎える前に、こうやって話す機会があって本当によかった。今回のイベントには僕達からすると後輩しかいませんけど、その中でも温度をグッと上げる役目をD'ERLANGERとして果たし、しっかりとイベントを楽しみたいです。
プロフィール
D'ERLANGER(デランジェ)
1983年に結成。メンバーチェンジを経てkyo(Vo)、CIPHER(G)、SEELA(B)、Tetsu(Dr)という編成となり、1989年にデビューアルバム「LA VIE EN ROSE」をリリースする。1990年1月にシングル「DARLIN'」でメジャーデビューを果たすも同年末に解散。それぞれソロ活動を行っていたが、2007年に解散時のメンバーが集まり再始動する。同年3月にベストアルバムとオリジナルアルバム「LAZZARO」を発表し、2008年4月にはキャリア初となる日本武道館公演を開催。以降もライブとリリースを重ね、2015年4月には初の海外レコーディング作品となるアルバム「Spectacular Nite -狂おしい夜について-」を発表した。2017年4月の再結成10周年記念ライブを東京・チームスマイル・豊洲PITにて実施。再結成15周年を迎えた2022年にはアニバーサリーツアーを開催した。
MUCC(ムック)
1997年に茨城で結成された、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)からなるロックバンド。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、ヘヴィロックやラウドロックの影響をミックスさせた音楽性が国内外で評価されている。2002年にデンジャークルー・レコード内に自主レーベル・朱を設立。結成15周年を迎えた2012年には千葉・幕張メッセにてワンマンライブを開催した。2019年2月には期間限定メンバーとして吉田トオルを迎えたアルバム「壊れたピアノとリビングデッド」を発表。2020年6月に15枚目となるオリジナルアルバム「惡」をリリースした。6月9日を「ムックの日」とし、毎年さまざまなイベントや企画を行っている。2021年10月をもってSATOち(Dr)が脱退し現体制に。2022年6月に現体制初のフルアルバム「新世界」を、12月にミニアルバム「新世界 別巻」を発表。
DEZERT(デザート)
2011年に結成された千秋(Vo)、Miyako(G)、Sacchan(B)、SORA(Dr)による4人組。2012年より音源を発表し始め、2013年8月に1stアルバム「特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~」をリリースした。2013年にはhideのトリビュートアルバム「hide TRIBUTE III -Visual SPIRITS-」で「D.O.D.(DRINK OR DIE)」をカバー。2017年にはMUCC、D'ERLANGERのトリビュートアルバムに参加している。2018年に入ってからは主催ツアー「DEZERT Presents 【This Is The "FACT"】 TOUR 2018」を実施し、アルルカン、NOCTURNAL BLOODLUSTらと各地で対バンを繰り広げた。2018年8月にMAVERICK DC GROUPの新レーベル・MAVERICKより2年半ぶりのアルバム「TODAY」を発表。2021年7月にアルバム「RAINBOW」をリリースした。2022年6月には初の東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)単独公演を行った。
アルルカン
暁(Vo)、來堵(G)、奈緒(G)、祥平(B)、堕門(Dr)の5人からなる、2013年10月に始動したヴィジュアル系ロックバンド。「激しさと切なさの融合」をコンセプトにしたサウンドと、アグレッシブなライブパフォーマンスを武器に精力的な活動を展開している。2015年8月に東京・渋谷公会堂でのワンマンライブを成功させるなど、結成からハイペースで動員を増やした。2020年8月に「Utopia」以来約4年ぶりとなるフルアルバム「The laughing man」をリリースし、10月には東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でワンマンライブを開催した。2023年4月にニューアルバム(タイトル未定)をリリース予定。
キズ
来夢(Vo, G)、reiki(G)、ユエ(B)、きょうのすけ(Dr)の4人からなる、2017年結成のヴィジュアルロックバンド。2017年4月に初ワンマンライブを開催し、5月に1stシングル「おしまい」をリリース。同年秋には初の主催ツアーを行う。以降もコンスタントにライブとリリースを重ね、着実にファンを獲得する。結成4周年を迎えた2021年にはYouTubeで動画企画「一撃」を配信し、ガラ(メリー)、逹瑯(MUCC)、NOBUYA(ROTTENGRAFFTY)といったアーティストたちと共演する。最新作は2022年8月リリースのシングル「リトルガールは病んでいる。」。2023年3月に東京・NHKホールにてワンマンライブを開催予定。