ロックフェスの頑固さ
──初めて「ビバラポップ!」の構想について聞いたときに、ロックとポップの定義付けと言うか、ジャンルの住み分けが難しそうだなと思いました。
そうですか? 定義付けは、定義を決めるってことですよね? だから、それは腹をくくって決めればいいことです。「ロックという音楽をちゃんと見つめ直そう」というキャンペーンを打ったフェスを作っている自分としては、例えばロックフェスにアイドルの方々に混ざってもらうことが、ロックにとってもいいことだと思わないし、アイドルの方にはアイドルの方なりに今とは違う音楽フェスのあり方があると信じて、この新しいフェスを立ち上げたんです。むしろジャンル付けなどないというのが今の気分かもしれませんが、僕はいい意味でお互いを尊重する意味でもあると思っているので、その住み分けの難しさなどはそもそも感じていないです。
──今はジャンルに関しては、一緒くたのフェスが多いですよね。
ですよね。それを否定するつもりはまったくないです。フェスはフェスとしてよければ、それでいいものですから。でもそんな中でも、僕はこの「ビバラポップ!」の発想は正しいと思うんです。今はロックフェスにアイドルの方が出るのが当たり前になっていて、アイドルの方もロックバンドの方も“ロック”っていう観念に対して曖昧になっている、さっきの質問はそういう話ですよね? でもその一方で、例えば大森は「ビバラポップ!」の開催にあたって「よっぽどアイドルフェスで覚悟を持って演じきっているアイドルのほうが私はロックを感じる」というようなメッセージを発していて、実際そういうこともあるのかもしれないと思います。ロックは「ロックだから」という防御のためにあるのではなく、もっと生きる武器であるべきものだと思います。だからこそ、「VIVA LA ROCK」はこういう時代ならこういう時代なりに、ロックバンドたちに対して“ロックに携わる覚悟”を持って出演してもらいたいという気持ちがあって。いろんな意味でロックフェスの頑固さを持ち合わせていたいんです。
──ロックフェスの頑固さですか。
はい。いろんなものを中途半端にブレンドしたくないって気持ちがあるんです。楽しければなんでもいいっていう今のフェスシーンがもしあったとして、今僕が話したことって必ずしも真ん中の発想ではないと思います。でもそういうふうに、ある意味すごく不器用にやっているのが「VIVA LA ROCK」なんです。器用なフェスは世の中に増えていると思うし、だからフェスシーンは充実しているし、それで感心することもたくさんあるんですけど、感動は別のところにあるかもしれないじゃないですか……と、僭越ながら発言させていただきたく思います。
それでもビバラは変わらずにいられるのか?
──「VIVA LA ROCK」は主催者の顔が見えるところが支持を集める大きな理由だと思います。例えばホスピタリティも行き届いていて、それを感じるたびに「鹿野さんはこんなところまで気を遣っているんだな」と思います。
ありがとうございます。その言葉は真に受けさせていただきます(笑)。確かにビバラは“顔が見えるフェスでいい”って言われるんですけど、でもそれ、よくわかんないんですよね。謙遜でもなんでもなくて。だってこんな顔、マイナスイメージしかないですから。残念ながら自分がそれを一番わかってます。SNSもそれをわからせてくれますし、真摯に受け止めながらビバラというフェスの持っている力と可能性を誰よりも自分が一番信じてやってます。
──では、どういったところが支持を集める理由なのでしょう。
僕は初年度を開催するまでの10カ月間でさいたまスーパーアリーナの使い方がうまくなるための努力をものすごい執念でしました。だからそう言っていただけるとがんばった甲斐があったなとは思います。でもそれは、研究すればするほどうま味が出てくるスルメのようなさいたまスーパーアリーナがあったからできたわけで、僕の力じゃなくてさいたまスーパーアリーナの力です。そういうものがこのフェスでの中にはたくさんあります。リピーターが多いフェスだと聞いていますが、その参加者に対しても同じ思いを持ってます。ビバラって「ライブがエモい」とか「客が“クる”」とか言われているんですけど、それは明らかにお客さんのおかげだし。
──「客が“クる”」とは?
“圧”みたいなものの話。出演してくれるアーティストがみんな言うんですよ。それって、お客さんたちがそれぞれ勝手に「このフェスは俺に任せろ」「俺たちがすごい盛り上げてやるから」「俺らがロックを体現してやるから」って思って臨んでくれているからだと思っているんですね。それでライブもエモくなっていく。だからこのフェスが支持を集めているとしたら、そういった会場やお客さんたちに恵まれたフェスだからなんです。極めてラッキーだと思います。
──ビバラは今年で開催5周年です。それを大々的に打ち出しはしないんですか?
まあそれに近い感覚は持ってるけど、5周年でアニバーサリーとか調子乗ってんじゃねえよって感じですよね。だから“非常に控えめに”です。5年目を迎えて一番、そのことを示したいのは、「ビバラポップ!」を開催するし、立ち上げたことです。だからこそ、ビバラーの皆様に、「ビバラポップ!」を味わってほしいし、ビバラと同じでこのフェスをまた一緒に作ってほしいです。きっと作りがいがあるフェスだから(笑)。ビバラって5年の間に何百人も関わっていて、やっぱりそのほとんどの人が5周年を喜んでいるんですよね。ありがたいなと思う。だから今年は「5周年だからさ」っていう気持ちをちょっとだけ持ちながら開催できたらうれしいですね。
──「VIVA LA ROCK」の今後の展望は?
5年目を迎えるにあたり一番よかったなと思うことは、変化しなかったし、ブレなかったことなんですよね。変化しないことが必ずしもいいことだと思わないんですけど、ビバラに関してはブレなかったことがいいことだと思っていて。いかに頑固なフェスだったかを実感していますし、変わらなかったからここまで来られたと思う。生意気な言い方をさせてもらうと、今回初めてチケットが3日間すべてソールドアウトしたんです。そんな状況を踏まえて「それでも来年も『VIVA LA ROCK』は変わらずにいられるのか?」って、“フェスという魔物”の目に今、睨まれている気がします(笑)。任せてください、舐めんじゃねえよって感じです。
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大森靖子&ピエール中野(凛として時雨)による出演者紹介
- VIVA LA ROCK EXTRA ビバラポップ!
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2018年5月6日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
OPEN 9:30 / START 11:00 / END 20:30 - 出演者
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プレゼンター大森靖子 / ピエール中野(凛として時雨)
LIVE大森靖子 / こぶしファクトリー / 鈴木愛理 / DJダイノジ(大谷ノブ彦) / Negicco / ばってん少女隊 / BiSH / Maison book girl / ゆるめるモ! / ラストアイドルファミリー(シュークリームロケッツ / LaLuce / Love Cocchi / Good Tears / Someday Somewhere) / アップアップガールズ(仮) / 吉川友 / 欅坂46 / sora tob sakana / バンドじゃないもん! / 道重さゆみ / LADYBABY
MC遠山大輔(グランジ) / ぱいぱいでか美 / 吉田豪 / 団長(NoGoD) / 西井万理那(APOKALIPPPS、生ハムと焼うどん)
- 鹿野淳(シカノアツシ)
- 音楽評論家。「ROCKIN'ON JAPAN」での副編集長を経て「BUZZ」「ROCKIN'ON JAPAN」の編集長を歴任する。2004年に株式会社FACTを設立。2007年3月に「MUSICA」を創刊した。2014年からはロックフェス「VIVA LA ROCK」のプロデューサーを務めている。