5月6日に埼玉・さいたまスーパーアリーナでライブイベント「VIVA LA ROCK EXTRA ビバラポップ!」が開催される。このイベントは、5月3~5日に同会場で行われるロックフェス「VIVA LA ROCK」の主宰である鹿野淳氏(FACT)が、大森靖子とピエール中野(凛として時雨)というイベントプレゼンターに託して初開催するライブイベント。欅坂46や鈴木愛理、BiSH、道重さゆみ、ラストアイドルファミリーなど多数のアイドルたちが共演することで話題を集めている。
音楽ナタリーではこのイベントが生まれた経緯を探るべく、鹿野氏にインタビューを行った。加えてプレゼンターの2人にも登場してもらい、各出演者への“愛”を語ってもらった。
取材 / 加藤一陽 文 / 加藤一陽(P1~3)、小林千絵(P4~6)
撮影 / 大橋祐希(P1~3)、西槇太一(P4~6)
鹿野淳氏インタビュー
フェスのインフラを使った新しい一手
──「VIVA LA ROCK」は5回目の開催を迎えます。これを機に、と言っていいのかわかりませんが、「VIVA LA ROCK」に続いて「VIVA LA ROCK EXTRA ビバラポップ!」というライブイベントを開催する運びとなりました。この経緯を教えていただけますか?
「VIVA LA ROCK」は毎年5月3~5日に開催していて、6日はステージや機材を撤去する日にしていたんです。でも6日がたいていは祝日で。どういうことかと言うと、さいたまスーパーアリーナという大人気の貴重な会場が、貴重な祝日に営業できないって事態がずっと続いていたんです。2020年問題とかもあるご時世ですよ? 休日のさいたまスーパーアリーナなんて何年か先まで借りることができませんから、これは異常事態なわけです。さいたまスーパーアリーナとしても僕らとしても、とてももったいないことをしていたんですよね。
──昨年は「VIVA LA ROCK」のあとの5月6日はスガシカオさんのメジャーデビュー20周年を祝う音楽イベント「スガフェス! ~スガ シカオ20年に一度のミラクルフェス~」を開催していました。
はい。ビバラというフェスのインフラをうまく活用して何かやりたいとはずっと考えていたんです。そこで去年はスガシカオさんとの出逢いに恵まれました。例えば「SUMMER SONIC」がサマソニをやる前日とかに、幕張QVCマリンフィールド(現千葉・ZOZOマリンスタジアム)でそのインフラを利用してThe Beach BoysとかBUMP OF CHICKENのライブをやったりしていて。それがフェスのインフラを活用してビジネスを行うことの、1つの見本ですよね? 正直、参考にさせていただきました。
──フェスで使うステージやPA、照明などを、別のライブイベントで活用するということですね。
はい。それで「VIVA LA ROCK」のインフラを活用して何かをやりたいと思っていて、去年は「スガフェス!」をやったわけです。スガさんも非常に喜んでいらっしゃいましたし、我々もとても充実感がありました。何百人ものチームでこのフェスはやってるんですが、正直、4日連続でフェスを運営制作するのは心身共にかなりヤラれるんですが、それでもみんなどこか充実していて、その顔色見て、「よし、やれる」という手応えをつかんだんです。
──ちなみに最初から「VIVA LA ROCK」を4日間行うという発想はなかったのですか?
いやいや、それはね、あまりにもフェス制作を知らなすぎますって(笑)。「VIVA LA ROCK」を始めるときの話なんですけど、僕が「3日間やる」って言ったらこのプロジェクトに関わってる9割8分の人は大反対でしたよ。なぜかと言うと、ビバラって1日で2万4000人参加するんですよ。3日だと2万4000人×3日。そもそも2014年の時点ですでに後発フェスなのに、そんな規模感のイベントをやるなんて。
──確かにそれで4日間となると、合計10万人弱になりますね。
そんなのまったく現実的じゃないでしょう。3日間でさえ、十分に夜逃げ覚悟だったんですから。しかも春フェスですし。当時は“春フェス”って概念すらあるのかないのかわからないくらいで、「絶対アウトでしょ!」「まず2日間成功させましょう」って周りに言われて。それでもなぜ3日間やったかと言うと、僕、このフェスでお金を使いたかったんです。
──お金を使う?
そう。「VIVA LA ROCK」ではさいたまスーパーアリーナの外の広場に「VIVA LA GARDEN」っていう入場無料のエリアを作っているんですけど、そこにフットサル場やビアガーデンやキッズランドやバーベキュー場を作りたかったし、ゆるキャラを何十体も呼びたかった。
──「VIVA LA GARDEN」は飲食ブースも充実しているし無料でライブも観られるので、「VIVA LA ROCK」のチケットを持っていない人たちもフェスの雰囲気を楽しめるエリアです。
それを実現させることが、そもそもこのフェスを始める最低条件で。ビバラをやるにあたって、“近隣の人にも楽しんでもらう”っていうのも大きな目標の1つだったんです。何故なら、このフェスのテーマは最初から今の今まで「埼玉県の音楽マーケット、そして今の時代のロックマーケットを活性化させる」。これだけですから。でも近隣の人が十分に楽しめて、かつ“フェスのついで”ではないエリアを作るためには3000万円以上必要で。そうすると「VIVA LA ROCK」を3日間にするしかなかったわけなんです。だからビバラは「こういう人たちが出てくれるからフェスをやろう」と3日間やっていたわけではなくて、3日間やらないとやりたいことの採算が現実的に取れなかったんです。
ロックの拡張よりも別枠を作るほうが夢がある
──以前鹿野さんから聞いた話ですけど、ビバラは赤字を出したことがないそうですね。
そうです。初回からずっと。
──とすると、ビジネス的には「VIVA LA ROCK」を4日間に、と考えるのも普通だと思ってしまいます。
それは僕もモヤモヤしたところではあって。今年のチケットの売れ行きを見て、「4日間できるかもしれないな」という声は必然的に上がります。「VIVA LA ROCK」を4日間にしたい人は、スタッフの中にもたくさんいると思います。春フェスで1カ月以上前にソールドアウトするわけだし、3日間合計で7万2千人が来るわけですよ? しかも毎回これだけ素晴らしいアーティストが出演してくれる。だから「これを4日間にすることは可能かも」と感じたことはあります。そう実感した1番の理由は、今年のブッキングがとても苦労したことです。もっと出てほしいアーティストやバンドが今年、今まで以上にたくさんいました。だけど、それができなかったときに、自らある意味今のビバラという器が恨めしいと思ったことは何度かありました。
──そんな状況の中、あえて新しいものを作るのはチャレンジングではありますよね。
わかります。あまり賢くないです、きっと。「VIVA LA ROCK」を4日間にするって、正直ビジネスとしても悪い話になる確率は少ないと思うんですよ。ものすごくぜいたくでかつ堅実な選択だと思います。そういういろいろな選択肢があって、しかも2018年は5周年だぞというときに、“定着”を感じ始めていることに気が付いたんですよね。
──定着とは?
「VIVA LA GARDEN」で出会ったお客さんと話したのがきっかけなんですけど、あるお客さんはお子さんを抱っこしていて、「ビバラが始まった年に妊娠をして生まれた子なんですよ。だから『VIVA LA ROCK』はずっと中に入れなくて、毎年『VIVA LA GARDEN』に来ていたんです。今年は初めて子供と一緒に『VIVA LA ROCK』を体験しようと思います」って話してくれて。
──うれしいお話ですね。
こんな体験なかなかできないです。あとは「VIVA LA ROCK」で知り合ってお付き合いを始めて結婚したってカップルもいました。なんかそういうのってグッとくるじゃないですか。しかもただグッとくるだけじゃない何かがあるなって考えていたら、音楽ファンの中になのか埼玉県になのかわからないけれど、「このフェスが定着しているのかもな」っていう気持ちになったんです。それでちょっとなんか、気が引き締まるようないい気持ちになったんです。
──へえ。
一方で埼玉県の中でロックを好きな人、もしくは日常的に音楽を聴いている人の中でロックを好きな人って、一般的に考えても50%もいないわけじゃないですか。そんな中で「VIVA LA ROCK」が埼玉県に根付いたフェスなのであれば、ビバラというブランドを使って、ほかのミュージックエンタテインメントをちゃんと埼玉県内の音楽マーケットのために提供できるような場所が作れないのかなって思ったんです。そこから「ビバラポップ!」の原案と言うか、原風景みたいなものが浮かんできました。ロックを拡張させていくよりも、別のミュージックエンタテインメントを別枠で作ることのほうが、このフェスにとっては夢があるなって。僕のようなロックジャーナリストの範疇をビバラはもうとっくに超えてて、そのビバラの器にふさわしい、必要な挑戦を5周年だからこそやるってことだったと思います。
──なるほど。
そう考えると、「『VIVA LA ROCK』を4日間やりました、5日間やりました、6日間やりました」では次のミュージックエンタテインメントを別枠で作ることはできないから。「VIVA LA ROCK」は「VIVA LA ROCK」、「ビバラポップ!」は「ビバラポップ!」、もしかしたら「ビバラスポーツ!」は「ビバラスポーツ!」……みたいに新しいものを作っていったほうが、音楽ファンと埼玉県の中にエンタテインメントがより定着する可能性を提供できると思ったんです。御社だってひたすら音楽ナタリーだけを拡大させていくんじゃなくて、コミックとかお笑いとかやっているわけでしょ? だからある意味、やってることは変わらないんですよ。
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アイドルに対して手のひらを返した
- VIVA LA ROCK EXTRA ビバラポップ!
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2018年5月6日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
OPEN 9:30 / START 11:00 / END 20:30 - 出演者
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プレゼンター大森靖子 / ピエール中野(凛として時雨)
LIVE大森靖子 / こぶしファクトリー / 鈴木愛理 / DJダイノジ(大谷ノブ彦) / Negicco / ばってん少女隊 / BiSH / Maison book girl / ゆるめるモ! / ラストアイドルファミリー(シュークリームロケッツ / LaLuce / Love Cocchi / Good Tears / Someday Somewhere) / アップアップガールズ(仮) / 吉川友 / 欅坂46 / sora tob sakana / バンドじゃないもん! / 道重さゆみ / LADYBABY
MC遠山大輔(グランジ) / ぱいぱいでか美 / 吉田豪 / 団長(NoGoD) / 西井万理那(APOKALIPPPS、生ハムと焼うどん)
- 鹿野淳(シカノアツシ)
- 音楽評論家。「ROCKIN'ON JAPAN」での副編集長を経て「BUZZ」「ROCKIN'ON JAPAN」の編集長を歴任する。2004年に株式会社FACTを設立。2007年3月に「MUSICA」を創刊した。2014年からはロックフェス「VIVA LA ROCK」のプロデューサーを務めている。