「もっと有名プロデューサーのほうがいいんじゃないの？」

──片寄さんとViolent is Savannaとの出会いは？

片寄明人　知り合いから「ちょっと聴いてもらいたいバンドがあるんだけど」って勧められたのが最初。僕のところにプロデュースの話がくるバンドってある種マニアックな要素を持ったバンドが多かったんだけど、Violent is Savannaはその枠からはみ出てたから、そこに一番興味を惹かれましたね。

──具体的にはどういったところが個性的だったんですか？

片寄　突き抜けたキャッチーさがあって、J-POPやJ-ROCKと言われている音楽のすごく良質な部分が遺伝子の中にあるところだね。でも、僕はそういうのが根っこになくて。自分はそういうJ-ROCKシーンの中でGreat 3として活動してきて、キャッチーなものや突き抜けたものをやりたいなって気持ちはあったんだけど、自分でやるとどこかマニアックなものになっちゃったり（笑）。だから、このバンドとだったら自分にはできなかったことができるかもってことは思いました。でも、最初は「なんで僕に頼んでくるんだろう、もっと有名プロデューサーのほうがいいんじゃないの？」って思ったけどね。

星花（Vo）　あははは（笑）。

片寄　「本当に100万枚売るような人が手がけるべきなんじゃないですか!? 大丈夫ですか？」って言ったのを覚えてます。でも、こんなチャンスはなかなかないし、ぜひやってみたいと思って。

──Violent is Savannaの皆さんは、片寄さんと最初に会ったときの第一印象って覚えてます？

星花　ザ・いい人！ もう「いい人」で辞書を引けば片寄さんの名前が出てくるんじゃないかっていうぐらい。

片寄　はははは（笑）。

川合栄次（B）　オーラから優しかったし。

星花　人当たりがいいというか、絶対嫌な気持ちにさせない人だなって。今も第一印象からあまり変わらないですね。

片寄さんは自分の中のプロデューサー像を壊してくれた

──Violent is Savannaの皆さんはメジャーデビューする前、音楽プロデューサーに対してどんなイメージがありましたか？

工藤竜之介（Dr）　肩からセーターをかけて、サングラスをいつも外さないとか（笑）。

小野貴博（G）　恐怖政治みたいなのを思い浮かべてました。

──じゃあ片寄さんはそういうイメージとは全然違った？

星花　いやもう、かけ離れすぎですよね。プロデューサーって、まず名前が固いというか怖いイメージがあったんですよ。でも、片寄さんはレコーディングするにあたって、私たちに「やりたいことをやったらいいんだよ」って言ってくれて、自分が思い描いていたプロデューサー像を見事に壊してくれたんです。

片寄　プロデューサーとしては、やっぱりヒットを出すことが一番だと思うし、その点では僕はまだまだ勉強中です。ただ、自分はプロデューサーである前にいまだにバンドマンであり、1人のミュージシャンだという自覚があるから。それこそ恐怖政治みたいなプロデューサーに潰されちゃったバンド仲間もいましたよ。だから自分がかかわるときは、まず何よりそのミュージシャンがやりたいことをヒアリングするのが自分にとって一番大事で、次にヒアリングしたことを形にしてレコード会社の人に納得してもらい、さらにスタッフを巻き込みつつ、その先のリスナーにどう伝えていくかを考えるのが自分の仕事だと思うんです。やりたいことがずれてなければ、万が一失敗したり売れなかったりしても、少なくとも本人の中で諦めはつくし。それは音楽に限らず、人生においてすごく大事なことだと思うんですよね。

星花　片寄さんから「自分のバンドなんだから、やりたいことやらないと後悔するのは自分だよ」って言われて、なるほどなと思って。片寄さんや周りのスタッフさんがいろんな意見を言ってくれるけど、まずうちらが意見を持ってなきゃいけないし、その意見を大事にしなきゃいけないんだなって改めて気づかされました。

内臓まで揺れるような踊れるアルバムにしたかった

──アルバム「SWING」ですが、制作にどれくらいかかりましたか？

片寄　出会った後、少ししてから制作に取りかかって、最終的には1年半ぐらいかな。最初に「OH LOVE YOU」からレコーディングを始めて、最後に録ったのが「とんだLove Song」。偶然にもアルバムの1曲目から作業が始まって、最後の曲で終了したんです。1年半の間に成長や進化していく姿を見れたのがすごく楽しかったね。正直、ここまでいろんなことができるバンドと思わなかったし、相当奥行きのあるアルバムになってると思います。

──こういう王道のポップロックを新鮮に聴かせるバンド、最近いなかったですしね。でも、このアルバムって1枚目らしいフレッシュさがありつつも、新人らしからぬ安定感もあって。

片寄　ベスト盤みたいな雰囲気すらあるよね。

──メジャー1枚目のアルバムっていうと、インディーズ時代からの集大成みたいなものになりがちですけど、Violent is Savannaの場合はアルバムを何枚も出してきたバンドみたいな説得力があって、不思議な感じがするんです。

川合　いやぁ、うれしいですね！

──このアルバムを制作する際に、皆さんの頭の中でイメージしてたアルバム像ってありましたか？

星花　やりたい曲をただ詰め込んだだけのアルバムにはしたくなかったので、4人で「どういうアルバムにしたい？」っていろいろ話し合いました。で、内臓まで揺れるような踊れるアルバムにしたかったのと、最初から最後まで聴いたときにちょっとだけでも前向きになれるようなアルバムにしたいよねっていうテーマを決めて、レコーディングに臨んだんです。