現在の自分たちに歯がゆさを感じる

──ところで、先程から国民的バンドであるサザンオールスターズの名前が出てきたり、大きい場所でライブをやるとしたら、といった話もあったりと、ビジャンドゥってすごく大きなビジョンを持って活動してるように思うんですが、その辺りはどうお考えですか？

Willie　例えばジャマイカでは、ボブ・マーリーを知らない人はいないじゃないですか？ そういう（ボブ・マーリーのような）パワーのある歌や存在が、国境を越えていけるんじゃないかなって思うんです。そうやって自分たちの音楽が国境を超えて飛び火していくイメージは常に持っていますね。

──国境を超えるというのは、具体的にどうなることでしょう？

Willie　まずは、自分の国の人がみんなその存在のことを知ってることだと思います。僕らはやっぱり日本が一番大事。自分が育って、ファミリーや友達、みんながいるところなので。ただ、自分たちのできることをもっと力一杯やって、もっと飛んでっちゃうくらいのバイブレーションを詰め込んで、それを作品にして飛ばしていきたい。

──なるほど。では、Noriさんはいかがでしょう？ ビジャンドゥは確かに世界に音楽を届けられるポテンシャルを持ったグループだと思うんですが、じゃあ今の日本でビジャンドゥをみんなが知ってるかっていうとそうではなくて。

Nori　えぇ、そうですね。

──そこに歯がゆさは感じますか？

Nori　はい、非常に感じます。それはもちろん僕らの実力もあると思うんですけど、まだまだ自分がいいと思ってるものや、多くの人と共有できるほどの音楽を作りあげていきたいです。まずは日本の人たちが「コレ知ってる！」っていう存在になっていきたいですね。

──2人とも音楽的に造詣が深いから、コアなものを作ってコアな人に評価されるほうが簡単なのかなって思うところもあるんですけど。

Willie　そうですね。かつてはそういう作品も作ってたし、クラブで思いっきりコアなパフォーマンスもしたりしてました。でも、そのコアなフィルターを取り去って、うまくポップに昇華できないかな？ ともずっと考えてましたね。

Nori　僕らはまさに音楽によって生かされてるような感じですけど、普通の人にとっては音楽ってそこまで重たいものなわけじゃなくて。軽く聴いてみて良いか悪いかっていうぐらいの存在だと思うんです。でも僕らは、入り口は軽くても、音楽によってメンタルが変わっていく力を信じてるんで。僕らの音楽がきっかけになって誰かの日常が良くなるほどの力を、楽曲に持たせることはできないだろうかって、常に考えてます。

肉体がなくなった人でも、残った音楽から意思を感じとれる

──確かに、この1stアルバムはそれくらいのクオリティを持った作品だと思います。大勢の人に向けてアピールすることをすごく考えてるんだろうなって。

Willie　はい。だって結局CDになったら、プリンスもボブ・マーリーもビジャンドゥもみんな同じだし。同じ棚だし。国が違っても同じ“音楽”だし、だったらそういう（彼らみたいな）レベルじゃないといけないじゃん！ って思うし。

Nori　ネガティブな話じゃないんですけど、このデータ配信の時代に「なんでCDを作るんだろう？」ってたまに考えるわけですよ。で、やっぱり揺るがないのは、死んで肉体がなくなっちゃった人でも、その人が残した音楽からは、意思や何かを感じられる。それは素晴らしいって思うんです。僕らもできることなら、そういう音楽をカタチで残していきたいって気持ちがあるんですよね。

Willie　みんなの音楽、みんなのうた。俺はそれがビジャンドゥでいいと思う。日本語で歌ってるけど、本当にいい曲だったらジャマイカでもどこでも、その場所のオーディエンスがみんな日本語で歌うだろうし。そういうことって絶対あり得ると思うし、肌の色が違っても流れてる血はみんな一緒だしね。