VIGORMAN×那須川天心|レゲエと格闘技、好きにやり続ける2人の同世代スペシャルマッチ

アンチが1人もいない奴はカッコいいのか?

那須川 そうやって自分で技を考えたりするんで、それが賞賛されたり、批判されたりもして。ただ、結果として「勝ってきている」っていうのがあるんですよ。

VIGORMAN 確かに勝てば関係ないっすよね、何言われようと。渋い(笑)。

那須川 格闘技は勝てば正義ですから。何言われても「俺、勝ったよ、強いよ」って白黒ハッキリさせられるんで。僕は16歳、最年少でRISEのタイトルを取ったんですけど、そのときもやっぱり批判はすごくされました。「なんでこんな若いのがタイトルに挑戦するんだ」「負けるでしょ」みたいに言われてたんですよ。

VIGORMAN ただ、勝てば何も言われない。

那須川 何も言われないですね。そのときから「俺、なんでこんなに批判されるんだろうな。絶対勝つのにな」って思ってたけど、実際勝ってきてるんで(笑)。

VIGORMAN 音楽でなかなかそれは難しいんですよね。ラップだったらMCバトルやDJバトル、レゲエだったらクラッシュって戦うスタイルもあるんですけど、勝ち負けが格闘技ほど明確やないし。

那須川 そうですね、格闘技は勝ちか負けか、白か黒かハッキリするけど、音楽って明確な勝敗とかトップを決めるのは難しそうだなって。

VIGORMAN チャートだけ考えても、今はいろんな基準がありますからね。だから、やっぱり究極は「好み」なんですよね。でも、それに気付いたときに、何やってもいいわって思ったんです。そこで人の好き嫌いを意識してたら、やっぱり「合わせに」いってしまうけど、それは同業者からしたら見えちゃうんですよね。「この曲ほんまはやりたくないんやろうな」みたいな。それよりも、自分の「好き」を貫いて、そこで評価されることが正しいと思う。

那須川 間違いないですね。

VIGORMAN 賛否両論あるのはどの世界でもそうだと思うし、俺はいろんな意見を知るのが全然好きで。逆に「アンチが1人もいない奴はカッコいいのか?」みたいな。粗もガンガン探してほしいですね。それが糧になるし。

左からVIGORMAN、那須川天心。

普通の高校生活への憧れ

──その意味では、お互い土俵は違えど、「自分を信じる」「自分の信念を貫く」という意識は共通していますね。

那須川 自分の道を進みたいですからね。ただ、そこで「耐える」必要もあるから、その覚悟は必要だと思います。僕は中学を卒業したら格闘家としてデビューすることを決めてたので、普通に高校に行ったら練習の時間もなくなるから、定時制の高校に通って。それはやっぱり我慢の時間でした。

VIGORMAN めっちゃわかります。俺も中卒やから高校の青春を知らないんで、ミニスカの同級生と制服デートとかなんなん?って思ってました(笑)。

那須川 体育祭とか文化祭とか……。

VIGORMAN めちゃくちゃしたかったす(笑)。

那須川 ねえ(笑)。

──ははは(笑)。VIGORMANさんの新曲「走馬灯」にある「自分の腹すらも括れないやつは⻑いトンネルをくぐれないぜ」というワードともリンクするお話だと思いますが、那須川さんにとっては進路を決めたのが腹を括った瞬間でしたか?

那須川 そうですね、俺はこれで行くって。それをバックアップしてくれた両親に感謝ですね。でも先生には止められましたよ。「格闘技ではなかなか食ってけないでしょ?」って。確かに、それは多くの場合、現実ですからね。

VIGORMAN でも、その意見を聞いてたら、ここまでの存在になってなかったわけですもんね。

那須川 なってなかったと思います。自分を信じてここまで来たって感じですね。ただ、今に満足してるかと言ったら満足してないです。本当に現状に満足するつもりはまったくない。まだ僕も22歳ですし、次何やろうってのを常に考えていて。まだまだ希望しかないですよね。

ブレない芯を持つこと

──それこそ、那須川さんはYouTuberとしても活動され、瑛人の「香水」のカバーもされたり、活動の場は広いですね。

那須川 歌いましたね(笑)。僕は格闘家って別に思われなくてもいいかなって。僕自身としていろいろやりたいし、表現者として、“アーティスト”としてやっていきたい。昔から「自分にはこれだけ!」って意識がないんですよ。ただ、格闘家としての道を極めないと、そういうスタイルは認められないとも思いますね。フラフラしてるって思われるのは嫌だし。

──ブレない芯が1個でもあれば、ほかは何をやっても大丈夫というか。

那須川 そうですね、そこがブレなければ。

VIGORMAN 僕の中でブレないことを1個挙げるとすれば、「歌詞に妥協しない」ということですね。歌詞に妥協しだしたら、もう曲を作る意味がない。だから全部の配信サイトで歌詞を見れるようにしていて。

那須川 歌詞って、そのとき思ったことを書くんですか? それとも前々からいろいろ考えて?

VIGORMAN 場合によりますね。スタジオに入って「さあ!」みたいな感じでガッと書くときもあるし、家でインスト流しながらそこで書く場合もあるし、もしかしたら今日の帰り道にふっと思いついた2行ぐらいのメモがそのあとに形になるかもしれない。今回のEPも書いたスタイルはバラバラでしたね。「ろくでなしの唄」はスタジオで、「Pray For My Country」は1回ワンヴァース、ワンフックを書いて半年ぐらい寝かしてたし、ほかの曲も別のシチュエーションで書いていて。

那須川 半年もかかる曲があるんですね。

VIGORMAN その曲だけに半年間を捧げるわけじゃなくて、後回しにするって感じです。無理に完成させたくないんですよね。変態紳士クラブやとワンヴァース、ワンフック書いたら残りは相方のWILYWNKAが書くから、言うこともコンパクトにまとまるんですけど、ソロに関しては立てたテーマに対して、言うことがなくなることもあって。そうなったら思い付くまで止めますね。