VIGORMAN×那須川天心|レゲエと格闘技、好きにやり続ける2人の同世代スペシャルマッチ

3人組ジャンルレスユニット・変態紳士クラブのメインボーカルを担当するレゲエディージェイのVIGORMANが、ソロ作品「ROKUDENASHI」を配信リリースした。

2019年発売の1stアルバム「SOLIPSISM」以来、約1年2カ月ぶりのソロ作品には、等身大のメッセージを詰め込んだ応援歌「ろくでなしの唄」、ダンスホールチューン「Woh!!」、モーニングルーティーンを描写した「Serotonin」、ポジティブソング「走馬灯」、社会への憂いや反骨的メッセージを歌った「Pray For My Country」の5曲が収録されており、全体を通してリスナーの背中を押すような作品となっている。

音楽ナタリーでは本作のリリースを記念して、VIGORMANと同世代のキックボクサー・那須川天心による異色の対談をセッティング。「ROKUDENASHI」の話も交えつつ、自分が選んだ道を信じて進み続ける2人にお互いの印象などを語ってもらった。

取材・文 / 高木"JET"晋一郎 撮影 / 西槇太一

まず声が好きなんですよね

──那須川さんは変態紳士クラブのリスナーであることをInstagramに投稿されましたね。

那須川天心 2年ぐらい前からかな。普通にリスナーとして聴いてました。

VIGORMAN 「ZIP ROCK STAR」(2017年11月発売の変態紳士クラブデビュー作)のときですね。

那須川 偶然何かで流れてきて「いいな」と思って聴き始めたんです。インスタもフォローしてくれたんですよね。

VIGORMAN 俺がもともとフォローしていて、「うおーっ! フォローバックきたあ!」みたいな(笑)。

那須川 変態紳士クラブの曲を入場曲で使ってる格闘家は多いですよね。同じ日に同じ曲がかかるぐらい。

VIGORMAN マジっすか? オフィシャルだと中野椋太選手が入場曲に変態紳士クラブを使ってくれていて。原曲に彼の名前入れたりして録音し直した「ダブ」を使ってくれてますね。

──リスナーとしての那須川さんの変態紳士クラブ、特にVIGORMANさんの印象は?

那須川 まず声が好きなんですよね。

VIGORMAN

VIGORMAN マジっすか! アガるー! 俺得の対談ですこれ。すいません(笑)。

那須川 最初の歌声にピンときて聴き始めたし、耳に残りますよね。偶然流れてきたものが耳に残るっていうのは、人を惹きつけるというか、すごい力があるのかなと。声が一番のきっかけですね。

VIGORMAN すげーうれしいです。普通にアガってます(笑)。歌詞とかメロディはこだわればブラッシュアップさせることができるけど、声って根本的にはどうもできないじゃないですか。だから声を褒められるのは、唯一無二なものを褒められたみたいでうれしいですね。

那須川 音楽はいつからやってるんですか?

VIGORMAN 15歳ですね。だから今年で7、8年目とか。中学最後、高校入るかくらいのときに始めて。

那須川 きっかけは?

VIGORMAN きっかけはめちゃめちゃノリなんすよね。地元のツレがやり出して「お前もやらへん?」みたいな。初めてのライブは友達の家の空手道場の段ボールの上で。地元の奴ら50人くらい集めて、みかん箱に段ボール敷いて初ライブ(笑)。今思い返せば、それから2、3年くらいまでは全然ノリだったかな。地元の奴らが背中を押してくれたじゃないですけど、「やろうや」みたいな感じで始まったっすね。

──しかもそれが空手道場だったと。ちなみにVIGORMANさんは格闘技の経験は?

VIGORMAN やってはいないんですけど、好きで普通にいろんな格闘技の試合は観てます。天心くんの試合は全試合観てますね。

那須川 15歳でデビューしたんですが、その頃の試合も見ていただいているんですか?

VIGORMAN アマチュアの頃まではdigれてないんですけど、プロで戦績に残るとこからは観てると思います。天心くんは格闘技を始めたのは5歳とかですよね?

那須川 空手を始めたのは5歳ですね。

VIGORMAN 5歳……敵わないっすね(笑)。

格闘家じゃなかったらバンドやりたかった

──那須川さんはもともとどんな音楽を聴かれてきましたか?

那須川 僕はジャンル問わず、本当になんでも聴きます。入場曲は矢沢永吉さんの「止まらないHa~Ha~」なんですが、矢沢さんの曲も聴きますし、普通にJ-POPも、レゲエもヒップホップも、と完全にノンジャンルですね。

──入場曲に「止まらないHa~Ha~」を選ばれたキッカケは?

那須川 まず父親が矢沢さんをすごく好きで、その流れで僕もすごく好きになったんですよね。それでデビューのときから「止まらないHa~Ha~」を入場曲にしようと思ったんですけど、父親が「チャンピオンにならないとそれはダメだ」って(笑)。

──キングの曲を使うにはキングにならないとダメと(笑)。

那須川 で、最初のタイトルマッチのときにやっと使わせていただいたんですよね。それが定着して今に至るっていう。基本的にはロックバンドが好きでしたね。RADWIMPSさんとかBUMP OF CHICKENさんとか。

VIGORMAN 俺も小学校の頃はロックでした。Slipknotとか、Metallica、日本だとマキシマム ザ ホルモンとか。子供の頃の将来の夢はロックバンドでしたね。

那須川 僕も格闘家じゃなかったらバンドやりたかったです。

VIGORMAN バンドマンになりたかったすか?(笑)

那須川 なりたかったです(笑)。自分で歌詞作って、それをメロディ作って乗せて……すごいですよね。

そら勝てませんわ……

──今からでも2人でバンド組んだらどうですか?

VIGORMAN ハハハ、すごいバンド(笑)。でもジャンル問わず聴いてる人に自分の音楽を褒められるのが一番うれしいですね。レゲエだけ聴いてる人に褒めてもらうのも、もちろんうれしいけど。俺もどっちか言うたらジャンル問わず聴くし、変態紳士クラブもジャンルレスユニットって言ってるくらいで、ジャンルは無駄やなと思ってる派の音楽家なんで。特に今の時代は「このジャンルはこう」っていう正解がないし。

那須川天心

那須川 自分の格闘技への取り組み方も近いところがありますね。例えばパンチの打ち方も無限にあるわけで、基礎や基本はあるけど、正解はないんですよね。だから練習中に新しいパンチが浮かんだりして、それを試合で試したり、ほかの人がやらないような技を「すきにやる」んで(笑)。

VIGORMAN 「こんなパンチ打ったらやばいんちゃう?」ってふと思うってことですか?

那須川 そうですね。でもサンドバッグでは手応えがあったんだけど、実戦ではあんま効かないなとかもあったり。あとは試合で窮地に立たされたときに思い付いたことを無意識にやったりとかしますね。

VIGORMAN 試合って、次にどんな技出したろって思いながら戦ってるんすか?

那須川 試合中はほぼ無意識なんですよ。

VIGORMAN 無意識……!?

那須川 無ですね。やっぱり考えてしまうと、本当に「コンマ何秒」遅れるんですよね。「チャンス!」と思ってから打つのはもう遅い。空いてるとこをポーンって打たないと。

VIGORMAN もう瞬発?

那須川 瞬発ですね。だから無意識になるまで練習するっていうか。

VIGORMAN じゃあ胴回し回転蹴りとかも打ったあとに気付いてるくらいの?

那須川 そうですね。「ここ! ボンっ!」って。

VIGORMAN ハハハ……そら勝てませんわ。

一同 (笑)。