俺、激エモだったよ
──コンセプトって大事なんだね。ちなみになんだけど、先に歌詞を見られると恥ずかしいみたいな気持ちってあるんですか?
ビッケブランカ どうだった? 俺にこれを送ったときの気持ち。
岡崎体育 恥ずかしくはなかったですね。キツネとタヌキっていうことで、なんとなくその……疎まれつつもやっていることには少し自信がある自分が、この先どうやって音楽業界でがんばっていくかな、みたいなところを書いたんですけど。
ビッケブランカ この下のブロックも体育さんが初めに作ったところなんですよ。「限りない海原へ飛び込んだ 僕らは同じ穴の狢 まるで透明な鏡を見てるみたいだ」。この“第一波”が送られてきたとき……俺、激エモだったよ。だって俺を自分と重ねてるっていうメッセージなわけですよ。
──それ、すっごいうれしいよね。
ビッケブランカ 「エッモ!!」って。そのエモさを受けて、さらにここを際立たせることができるような1番の入りのパートを作っていくという感じでしたね。
──キツネとタヌキって、言い得て妙だよね。聴きながら1人で「キツネとタヌキって、ホントそうだよな」とか思って(笑)。なんなら俺、体育くんてキツネっぽいなと最初思ってたんですよ。だけど2人が並ぶとビッケさんがキツネで、体育くんがタヌキなんだよね。
ビッケブランカ 僕、インディーズデビューしたときに「岡崎体育に似てる」ってTwitterにめっちゃ書かれましたよ。
──え、曲が?
ビッケブランカ 顔が。
──顔が?(笑)
岡崎体育 それ、僕が当時20kgくらい痩せてたからだと思う。もともと“キツネキャラ”でやっていこうと思ってたんですよ。
──そっか、確かに。「弱者」の歌詞に「狐眼」っていうワード出てくるわ。
岡崎体育 いつの間にか体格だけが独り歩きして、「あ、俺タヌキだったのかな?」って。
──自分で化けてるのに気付いてなかったっていう(笑)。
ビッケブランカ キツネ枠は私がいただいちゃいまして。
岡崎体育 でも本来、僕もビッケさんもすごいこう……陰鬱な性格だと思うんですよ。もの作りする人って、ムネトさんもそうですけど、家やったらたぶん無口じゃないですか。
──そうですね。「やっほーい!」って言いながらは作業できないんで(笑)。
岡崎体育 それでも僕らがライブするときとか、ムネトさんがラジオするときはテンション上げて自分を演じたりする。それがたぶん「化ける」というか、キツネやタヌキみたいなものなんだろうなと思って。
──確かに。それにしてもいい歌詞だよね。
ビッケブランカ 「ココンココン」「ポポンポポン」なんてあると、ただのおふざけソングに着地しちゃいそうなところですけど。
──EXITが歌ってそうだけどね(笑)。
ビッケブランカ そこはお互い、曲はたくさん作り続けてきてるんで。その中で培ってきたものは出てると思います。お互いのノウハウを持って、素晴らしい曲が作れたなと思ってますよ。大好きです、この曲。
なんでこんなタイトル付けてん、やる気ないんか?
──まずタイトルが最高なんですよね。しかも曲を聴いたら「そういう意味もあるんだ!」って、もう膝を叩いたよ私は。「化かしHOUR NIGHT」は、どっち先行で考えたんですか?
ビッケブランカ タイトルについては……僕たち関与してないんですよ。
──はて?
ビッケブランカ アイデアはいっぱい出したんですけどね。
岡崎体育 エイベックス、ソニーの合同Zoom会議があって、曲はいいがタイトルはどうしようかと。いろんな案が飛び交ったんですけどね、もうダッサいのばっかり……。
──(笑)。何か1個もらっていいですか?
岡崎体育 最初はビッケさんから個人LINEで送られてきたんですよ。なんだっけな……(スマートフォンを見ながら)「バーゲンチラシに誘われて」「ハーゲンダッツが食べたくて」とか。こいつ、ナメとんかなと。
一同 あはははは!(笑)
岡崎体育 なんでソニーとエイベックスの大手2社ががんばって売り出すのにこんなわけわからんタイトル付けてん、やる気ないんか?と。
ビッケブランカ 「化けて化かしてランデヴー」みたいなタイトルを思い付いたくだりで、「浮かんだの全部言っちゃえ」っていうモードになったんですよ。「絶対違うだろ!」っていうのが1個あるだけでさ、カンフル剤になることあるでしょ?
──アイデアが出やすくなると。
ビッケブランカ そう。それをみんなの前でやるべきだったんですけど、体育とだけのLINEに送っちゃった(笑)。
岡崎体育 「化かしHOUR NIGHT」はスタッフが出した案ですね。
──そっか、スタッフか……これ出た瞬間はやっぱり「あー!」ってなったの?
ビッケブランカ もう、沸いて沸いて!(笑)
岡崎体育 Zoomの画面が揺れましたから。
──どおりでスタッフさんがクスクス笑ってるなと思いましたよ。「そのくだりはちょっとやめてください」みたいな(笑)。
岡崎体育 いや、出していきましょうよ。
ビッケブランカ どんどん出していきましょう。
地声に代わるそれぞれの武器
──あとCDにはオーディオコメンタリーも入ってますけどね、面白かったですよ。2人の声、しゃべり声になるとちょっと似てるなと思って。
ビッケブランカ そうですね。やっぱお互い体が大きいから、響き方が一緒なんでしょうね。
──普段は声低いけど、歌うと高いじゃないですか。
岡崎体育 そんなことないんですよ。歌声は高く聞こえているだけで、キー自体は僕ら男性アーティストの中でも低いほうなんです。
ビッケブランカ もしかしたら“声低い2トップ”かも。
岡崎体育 低い同士キーが同じっていうのもあって、曲は作りやすかったですね。
ビッケブランカ そう、すごい作りやすかった。お互いに地声で出る気持ちいいところ、最高音が一緒なんですよ。
──そうなのかあ!
岡崎体育 ビッケさん、ファルセット使うから高い印象があるのかもね。
ビッケブランカ ファルセットで逃げてるだけで。
岡崎体育 ミックスボイスで歌うときは低いです。
──それ、けっこう意外ですよ。
ビッケブランカ 「粉雪」の「な」も出ないですし、「運命の人は僕じゃないー」の「ないー」も出ないし、「そばにいたいよー」の「そ」も出ないし。
──いろんな曲で言うなあ(笑)。
ビッケブランカ いわゆるJ-POPの……「ここまで出ないと人の心に届かない」みたいな音がお互いに出ないから。
──そういうのあるの?
ビッケブランカ あります、あります。今の時代のJ-POPでヒットする曲って言ったら、最低ラからシまでは地声で出ないといけないんですよ。だけど俺らはファぐらいまでしか出ないから。みんな当たり前にラくらいまで出るのに。
──そうなんだ。
ビッケブランカ なので、俺はそれをファルセットで埋めて、体育はそれをAuto-Tuneのエフェクトで埋めて。それぞれの方法で地声に代わるものを武器として持っているっていう。
──うわ、面白い。逆に、高音が出てたらファルセットにしなかったってことだ。
ビッケブランカ そうっす。地声が高かったらファルセットで歌う必要なんてないので。
──お互いのそういう共通点って、曲を作っていく中で気付いたんですか?
岡崎体育 最初の会議で「キーとかどうします?」という話になって、お互い声が低いから高く張るような歌にせず、高くきらびやかなところはトラックできらびやかにしようかとは話したよね。
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それがらしさなんだろう