ビッケブランカ「革命」インタビュー|ルール無用で自由自在、高らかに響く革命の音色

ビッケブランカが新曲「革命」を配信リリースした。

メジャーデビュー5周年を迎えた2022年の3月にベストアルバム「BEST ALBUM SUPERVILLAIN」をリリースし、10月には初のアリーナ公演「Vicke Blanka presents RAINBOW ROAD -軌-」を開催するなど、アニバーサリーにふさわしい活動を繰り広げてきたビッケブランカ。5周年を経て、新たなフェーズに突入した彼が作り上げた新曲「革命」は、ドラマティックな構成とエモーショナルなメロディ、超ポジティブなメッセージがひとつになった楽曲だ。

ビッケブランカの独創性をさらにアップデートさせた楽曲とも言える「革命」のリリースに際し、音楽ナタリーではインタビューを実施。楽曲制作や現在のモードについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之撮影 / 梁瀬玉実

変われるチャンス、伸びるチャンス、直せるチャンス

──メジャーデビュー5周年イヤーだった2022年は、ビッケさんにとってはどんな1年でしたか?

制作とライブが続いていたし、一番忙しかった1年だった気がしますね。なんとなく続けているよりも、周年というマイルストーンがあったほうが切り替えやすいと思うし、いい1年だったと思います。変われるチャンス、伸びるチャンス、直せるチャンスもあって。

ビッケブランカ

──新たなイベント「RAINBOW ROAD」もスタートしました。初のアリーナライブだったわけですが、手応えはどうでした?(参照:ビッケブランカが「RAINBOW ROAD」で見た“素晴らしい景色”「またここで会いましょうね!」

今までとは全然違う感覚だったし、気持ちよかったですね。会場の東京ガーデンシアターは、ギリギリ肉眼でも後ろの客席から自分が見えるという絶妙な距離感なんですよ。会場内にビジョンを設置すると観客の目線がバラけるじゃないですか。「全員こっちを見てほしい」という気持ちがあるし(笑)、そういう意味でもちょうどいいサイズ感だったなと。5周年のタイミングで、一番最適な会場でやれたと思います。「RAINBOW ROAD」は毎年続けていくので、僕自身も楽しみですね。

メロディ、言葉、アレンジがピタッとハマって、キランって光り始めるんです

──では、新曲の「革命」についてお聞きします。楽曲のスケール感やメッセージ性、構成やアレンジを含めて、すごくビッケブランカらしい曲ですね。

うん、そうですね。5周年の区切りを経て、まっさらな頭で作り始めたら、自然とメジャーデビューの頃……例えば「Slave of Love」(2016年発表のメジャーデビューミニアルバム)みたいなイメージの曲になっていったんです。ピアノが目立っていて、複雑な構成で、ちょっと変わった音楽というか。そこに戻ることを狙ったわけではないんだけど、メンタリティ的にはそんな感じだったのかも。あとは、スタッフのみんなに誘われているところもあると思います。「デビュー当初の感じの曲が聴きたいな」という雰囲気があったし(笑)、自分もそこに乗ってみたというか。「Ca Va?」(2019年発表の3rdシングル)みたいな極端な曲も最近作ってなかったから、いろいろとアイデアも貯まっていたんですよね。「革命」みたいな曲を作ってると、「ひえー!」「ふぁふぁふぁふぁふぁ!」みたいな感じになるんですよ(笑)。その感覚で作るのは疲れるんだけど、本当に楽しくて。ひさびさでしたね、その感じは。

ビッケブランカ

──その感覚を言語化してもらえますか?(笑)

なんだろう? とりあえず大笑いしているし、「こいつ、やべえな」って自分に言いながら作ってて(笑)。ルール無用で自由自在、なんでもオッケーな状態というか。天と自分がつながって、めちゃくちゃアイデアが出てくるし、それがバスン!バスン!という感じで組み合わさって。メロディ、言葉、アレンジがピタッとハマって、キランって光り始めるんです、ホントに。

──ゾーンに入ったままハイになってるというか。最初に「革命」を聴いたときは、すごすぎて笑いそうになりました。

そういう反応が一番うれしいですね(笑)。ルールに関係なくやれるのがソロアーティストの利点だし、ビッケブランカのいいところじゃないかなって。「革命」は「ピアノとギターが両方とも立ってる曲にしたい」というところから始まったのかな。ギターロックに傾倒しすぎるのではなく、ピアノのバラードでもない曲調をイメージしながら、エモロック的なリズムにたどり着いて。BPMを決めて、楽器の種類やアレンジを固めていった。いきなりドカーンとロックっぽく始まるのは違うなと思って、冒頭にマーチングロックみたいなパートを作ったんですよ。

──コーラスワークもすごいことになってますね。

ひさしぶりに重ねまくりました(笑)。でも、それほど時間はかからなかったんですよ。家でデモを作ってるときにすでに答えが出ているというか、それぞれのラインはハッキリしてるから、レコーディングはどんどん録っていくだけ。マーチング的なパートを最初と最後に配置したことで、歌詞を違う角度から書けたことも大きいですね。曲中は“僕”で、前後の部分は“私”という人称になってて。“僕”ではリアルな自分の言葉を吐露していて、“私”はヒストリカルなフレーズを大仰に表現しているんです。

ビッケブランカ
ビッケブランカ

──交響曲やマーチングみたいな雰囲気がありつつ曲の中心はエモーショナルなロックサウンドだし、このアレンジは素晴らしいと思います。ギターは設楽博臣さん、ベースはfou-toussiさん、ドラムは佐野康夫さんという布陣ですね。

この曲は最強メンバーじゃないと成立しないと思って、意地でもこの3人をブッキングしようと決めてました。プリプロは基本、自分の家で全部作るんですけど、レコーディングしたときにプリプロとレコーディング音源のクオリティの差がトントンくらいだと困るんですよ。さらによくしてもらわないと意味がないし、特に「革命」はデモをほぼ完璧に仕上げていたので、最高のミュージシャンじゃないとデモに飲まれてしまう気がして。3人とも圧倒的に図抜けている方だし、最高の演奏をしていただきました。エンジニアも絶対、渡辺省二郎さんしか考えられなかったです。バイオリンと管楽器があって、ドラムやギターもバキバキに鳴ってて、コーラスも積みまくってる曲なので、省二郎さんじゃないとまとめられなかっただろうなと。人間国宝にすべきですね、マジで。録りの音から最高だし、どうやってバランスを取ってるのか全然わからないんですよ。やっぱり才能なんだと思います。

2023年4月7日更新