ビッケブランカ|古きよきポップスに思いを馳せて

ビッケ流の昭和の時代のポップス

──「ウララ」は歌詞が強いと言うか、内容に具体性がありますがこれは意識的に?

はい。意味ありげに書くことで深みを出すっていうようなやり方はしたくなかったので。現代のポップスって「なんかイミシン」みたいなのが多いじゃないですか。わかるようなわからないような、なんか深いこと歌ってるふう、みたいな。でも僕が子供の頃とかによく聴いていた昔の歌はそうじゃなかった。ちゃんといい言葉が選ばれて歌われていたのが昭和の時代のポップスだったから。昭和ってテレビ番組で歌っても歌詞の字幕が出ない時代でしたけど、それでも聴けばわかる言葉の強さが歌にあった時代だと思うんですよ。今はミュージックビデオもある時代だから、フワっとした言葉を使っても映像で世界観を伝えることができるけど、昔はそういうのがなくて、歌手は歌番組で歌うしか世界観を伝える術がなかった。だからあの頃の歌のほうが言葉が強かったと思うんです。今は言葉が弱くなってる。そこで僕は強い言葉で書きたいと思ったんです。

──なるほど。

ビッケブランカ(Photo by Marui "Motty" Motoko)

強い言葉、わかりやすい言葉で書くとサムい感じにもなりかねないけど、今回はそれを恐れず思い切り言い放ってみようと思って。「おもひでひとつ大人になって 去年のことは忘れませんか」なんて、歌詞というより手紙みたいなものですからね。でもそれをスカッと言い放つことができるかどうか、というのが今回の自分にとってのチャレンジだったんです。

──そういえば、キャンディーズの「春一番」のオマージュ的なものを感じさせるところもある。

「春一番」とか太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」とか、めちゃめちゃいい曲だなって改めて最近思って。ああいう構成のしっかりした曲を書けたらいいなあと。

──ビッケは昔から昭和の時代の曲、フォークやニューミュージックなんかもよく聴いていたと前に話してましたもんね。

そうですね。親父が風(伊勢正三がかぐや姫解散後に組んだデュオ)とかイルカとかチューリップとか、フォークソングが好きだったんですよ。車でそのへんをよくかけていて、僕はそれを当たり前に聴いていた。だから大人になってからも、歌詞がスッと頭に入ってくる曲じゃないと嫌なんですよ。で、ある時期から洋楽ばかり聴くようになって、自分も英語で歌詞を書いたりするようになったわけですけど、今回は日本語であの頃の歌詞の強さをいかに取り戻せるかってことに挑戦してみたくなったんです。それと昭和の時代のポップスって、軽快さとか明るさの中に切なさや寂しさが漂っていたりするじゃないですか。それを自分なりにやってみたいという気持ちもありましたね。

歌詞へのこだわり

──歌詞の中で、自分なりにここはうまく書けたなと思うところはありますか?

まず「ウララ」の冒頭の「玄関ドアでつむじ風ができるほど」というところ。“なんとかでなんとかなほど”っていうので始まるのは、実はユーミン(松任谷由実)の影響です。そういう表現の仕方をユーミンはよくするんですよね。それから思い出を「おもひで」としたところ。あと「はる風」という表現も気に入っています。“はる風”と言うのは、春の風のことかもしれないし、胸を張って感じる風かもしれない。だから「はる」をひらがなにしました。

──僕は「きっときっときっとってやわな言葉で」というのが耳に残りました。「きっと」を、やわな言葉と捉えるのが面白いなと。

自分の力で「絶対」って言うんじゃなくて、本当は器用じゃないのでどこか他力本願なところがあるんでしょうね、この主人公は(笑)。あと僕は「季節が立って、時季が経って そしたらわかるのでしょうか」っていうサビの歌詞もいいなと思ってますね。これは会心です。風の歌詞みたいなんですよ。「わかるのでしょうか」って書けたとき、すごくうれしかったですね。

ビッケブランカ(Photo by Marui "Motty" Motoko)

──正やん(伊勢正三)が歌いそうですもんね。

はははは(笑)。そうそう。その感じを今の時代に出せたことがうれしい。このくだりは自分にとって完璧ですね。

──平成の歌に、この感じはなかなかない。

そう。一歩間違えるとダサくなりますからね。もっとオシャレな言い回しだってできるわけで。そこをあえてやるってことですから。

──ちなみにMVはどんなイメージで作ったんですか?

それこそ昭和ですよ。昭和っぽくしないと逆に時代錯誤になっちゃう気がしたので。僕が歌詞で伝えたかったことを僕のチームがみんな理解して作ってくれてるってことを、これで示せたと思います。

──でもさっきから昭和昭和って言うけど、曲を聴いた限り別に昭和歌謡のようだとは思いませんでしたけど。

あれ? 思わなかったですか? 狙いが外れたかな。もっとベタに行ったほうがよかったですかね?

──いやいや、そういうことじゃなくて。昭和っぽい言葉の使い方も取り入れつつ、聴いた印象としては紛れもなく現代のポップスになっているのが素晴らしいなと。

そっか。じゃ、よかったです(笑)。自分としては悔いはないですね。初めてのシングルですけど、それにふさわしい曲ができたと思うので、あとはこれからどういうふうにこの曲が歩いていってくれるのか楽しみです。

ビッケブランカ「ウララ」
2018年4月18日発売 / avex trax
ビッケブランカ「ウララ」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
2160円 / AVCD-94050/B

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ビッケブランカ「ウララ」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / AVCD-94051

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CD収録曲
  1. ウララ
  2. Get Physical
  3. Black Rover
  4. 今ここで逢えたら
初回限定盤DVD収録内容

「FEARLESS TOUR 2017 at Akasaka BLITZ」

  • OPENING
  • Take me Take out
  • アシカダンス
  • Broken
  • 追うBOY
  • Want You Back
  • さよならに来ました
  • Stray Cat
  • THUDERBOLT
  • Moon Ride
  • Slave of Love

ビッケブランカ ULALA TOUR 2018

  • 2018年6月1日(金)北海道 cube garden
  • 2018年6月8日(金)宮城県 enn 2nd
  • 2018年6月15日(金)福岡県 BEAT STATION
  • 2018年6月22日(金)愛知県 名古屋ReNY limited
  • 2018年6月23日(土)大阪府 梅田Shangri-La
  • 2018年6月29日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
ビッケブランカ
愛知県出身の男性シンガーソングライター。高校卒業と同時に上京しピアノを習得した後、本名の山池純矢としてソロ活動を開始する。2012年にビッケブランカに改名。その後はライブを中心に活動を続け、美麗なファルセットボイスとピアノが紡ぎ出すポップチューンを武器に各地のイベントなどに出場し話題を集めている。2014年7月に配信シングル「追うBOY」をリリース。同年10月に1stミニアルバム「ツベルクリン」を発売した。2015年8月には2ndミニアルバム「GOOD LUCK」を発表。2016年10月にミニアルバム「Slave of Love」でavex traxよりメジャーデビューを果たす。デビュー作収録の「Natural Woman」はメタボリックのスムージー「enNatural」、「Slave of Love」はGoogle Play MusicのCMソングに採用された。2017年1月にワンマンツアー、5月にツーマンツアーを行い、各公演のチケットはソールドアウトを記録する。7月に1stフルアルバム「FEARLESS」をリリースし、8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」といった大型フェスに出演。9月からワンマンツアー「FEARLESS TOUR 2017」を行い、10月の東京・赤坂BLITZでのツアーファイナルを含め満員御礼となった。2018年4月にメジャー1stシングル「ウララ」を発表。6月に全国6カ所を回るライブツアー「ビッケブランカ ULALA TOUR 2018」を開催する。