ビッケブランカ|古きよきポップスに思いを馳せて

ビッケブランカがメジャーで初となるシングル「ウララ」を4月18日にリリースする。

昨年、初のフルアルバム「FEARLESS」を発表して、タイムレスでありながらモダンさもあるグッドメロディを書ける偉大な才能を持ったシンガーソングライターであることを証明してみせたビッケ。そんな彼が「FEARLESS」以前の自分に立ち返って書いたという「ウララ」は、少しばかりのセンチメンタル成分を混ぜながらも軽快なノリで聴く者の気持ちを高めてくれる春向きのポップソングだ。音楽ナタリーでは今作のリリースに際し、インタビューを実施。ビッケにシングル収録の4曲について話を聞いた。

取材・文 / 内本順一

強い言葉と強いメロディでどーんと行きたかった

──ビッケブランカはどちらかというと“アルバムアーティスト”と言うか、10数曲のつながりでストーリーを作って伝えるのが得意なアーティストという気がしていたんですよ。初めてシングルを作ってみて、どうでした?

アルバムの場合は、例えば10曲入りだったら10曲それぞれの居場所を見つけなくてはならないわけだけど、今回は4曲なので、そういう意味では簡単でしたよ。4曲の居場所なんてすぐ見つかるんですよ。どういうふうにだって存在できる。アルバムのときは、例えば「Want You Back」とか「Broken」のような曲にどういう存在意義を持たせるか、どこに置くべきかってすごく迷ったけど、4曲だとそういうのがない。どんなふうにしてもそれぞれに存在意義を持たせられるって確信があったんです。ただし、1曲1曲は強いものでなくてはならない。アルバムの場合は全体の流れが大切ですけど、シングルは曲の強さで勝負しなくてはならない。そういう意識がありましたね。だから1曲1曲をいかにいいものにするかと言うところに時間をかけました。

──それぞれキャラの立った曲を入れようと。

そうですね。似通った曲を入れてもつまらないので。

──タイトルしかり、曲調しかり、アートワークしかり、春爛漫といった感じですよね。

そういえば季節感のある曲を最近書いてないなと思って。昔はよく書いていて、特に冬にまつわる曲が多かったんです。だけど「FEARLESS」(2017年発売のアルバム)にはそういう曲がなかった。なので、春に出すからには春の曲を書こうと思って今回は春爛漫な感じになりましたね。「FEARLESS」のときとは作り方がいろいろ違います。

──ほかにも違うところがあるんですか?

「FEARLESS」は「自分にとっての音楽的なルーツとはどういうものだろう」と考えて、それをディレクターに見出してもらいながら作ったアルバムだったんです。「そうか、自分がやってきたのはこういうことなんだ」っていう発見と喜びで作ったアルバムだった。それに対して今回はルーツがなんだとか、音楽的ってどういうことだとか流行りがどうだとか、そんなことは何も考えずに、ただ無邪気に曲を作っていた頃の気持ちに立ち返って制作したんです。

──それはどうして?

上辺をすくったものじゃなくて、強い言葉と強いメロディでどーんと行きたかったから。

──なるほど。確かに「ウララ」はバーンと歌詞とメロディが飛び込んでくる強い曲ですね。ラジオでかかったときの“一瞬でつかまれる感じ”は相当のものだと思います。弾むようなイントロのピアノと、それに続くストリングスの大きな動きから一気に引き込まれますからね。

同じコードでずっと行くっていうね。あのストリングスの動きは演奏する人たちが苦戦してるようでした。初めに自分の頭にあったものを打ち込んで、それを聴いて演奏してもらったんですけど、ああいう弦の動きをする曲は普通はあんまりないらしくて。だけど僕としては今回はストリングスをがっつり前に出したかったんですよ。「FEARLESS」の「Moon Ride」で思いきりホーンを入れてファンクをやったことに対する反動ですね。もともと僕はラッパが入った音楽をほとんど聴かずに生きてきた人間で、自分では理解しきれてない音があの曲には入っていた。でも以前の取材で内本さんが「Moon Ride」について「プリンスみたいですごくいい」って言ってくれたので僕も納得できて、スタッフにも「納得しました。これでいきましょう」って説明したんですね。だからもちろん「Moon Ride」はすごく気に入ってるんだけど、もう1回同じことはしたくなかった。と言うか、「Moon Ride」はファンクでありソウルでありロックであり、ホーン隊の音が気持ちいい曲っていうものでしたけど、今回はそういうものを全部感じさせないようなものを作りたかったんです。「ブラックミュージックのノリがカッコいいからやってみよう」みたいなところで作ることは今回はしたくなかった。

ビッケブランカ(Photo by moco.)

豪華なプレイヤーとの音作り

──アレンジはどのへんにこだわったんですか?

まずはさっき言ったイントロのストリングスの動きですね。あそこをああいうアレンジにできた段階で「よしっ!」って感じでした。風が吹いている感じがするし、高揚感もある。でもちょっとだけ動きに不穏さのようなものもある。わざわざ低いところから上がっていく感じがするでしょ。だから明るくさわやかなだけじゃない。そのバランスがちょうどいいものになったなと思いましたね。

──「つかみOK」なイントロがあって、流れるようなAメロと、そこから滑らかにつながる橋渡し的なBメロがあって、前向きな気持ちにさせるサビがあって、間奏ではピアノが踊るような場面もあって。そのどれもが分かち難く結びついてできている。上質でおいしいショートケーキみたいな曲ですよね。スポンジとクリームがレイヤーになっていて、見た目も鮮やかなイチゴがそこにのっているような。

そうですね。メロディも「Want You Back」(「FEARLESS」収録のナンバー)みたいにつながっていくんじゃなくて、ちゃんと間が空くんですよ。その瞬間にバイオリンがパーンと出てきて飛翔して、引っこむとピアノが出てきたり、ドラムが鳴ったり。常に何かしらの楽器が主役になりながら展開していく。“誰もいない”っていうふうにはならないようにできたと思います。

──演奏者たちの顔が常にちゃんと見えている曲。

そう。それを意識してアレンジしたので。アレンジは自分で家で考えたんですけど、それを実現してくれたのがこの曲に参加してくださったミュージシャンたちで。

──アディショナルアレンジメントとプログラミングが横山裕章さんで、ストリングスアレンジメントがビッケと岡村美央さん。ベースでは鈴木正人さんが参加してますね。

鈴木さんとは初めてでしたけど、さすがでしたね。あとドラムのあらきゆうこさんがすごいよかった。特にカップリングの「Get Physical」のあらきさんのドラムが本当によくて。あの曲は1つひとつの音が立っててほしい曲だったんですけど、まさにそういうふうにしてくれました。

ビッケブランカ「ウララ」
2018年4月18日発売 / avex trax
ビッケブランカ「ウララ」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
2160円 / AVCD-94050/B

Amazon.co.jp

ビッケブランカ「ウララ」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / AVCD-94051

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. ウララ
  2. Get Physical
  3. Black Rover
  4. 今ここで逢えたら
初回限定盤DVD収録内容

「FEARLESS TOUR 2017 at Akasaka BLITZ」

  • OPENING
  • Take me Take out
  • アシカダンス
  • Broken
  • 追うBOY
  • Want You Back
  • さよならに来ました
  • Stray Cat
  • THUDERBOLT
  • Moon Ride
  • Slave of Love

ビッケブランカ ULALA TOUR 2018

  • 2018年6月1日(金)北海道 cube garden
  • 2018年6月8日(金)宮城県 enn 2nd
  • 2018年6月15日(金)福岡県 BEAT STATION
  • 2018年6月22日(金)愛知県 名古屋ReNY limited
  • 2018年6月23日(土)大阪府 梅田Shangri-La
  • 2018年6月29日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
ビッケブランカ
愛知県出身の男性シンガーソングライター。高校卒業と同時に上京しピアノを習得した後、本名の山池純矢としてソロ活動を開始する。2012年にビッケブランカに改名。その後はライブを中心に活動を続け、美麗なファルセットボイスとピアノが紡ぎ出すポップチューンを武器に各地のイベントなどに出場し話題を集めている。2014年7月に配信シングル「追うBOY」をリリース。同年10月に1stミニアルバム「ツベルクリン」を発売した。2015年8月には2ndミニアルバム「GOOD LUCK」を発表。2016年10月にミニアルバム「Slave of Love」でavex traxよりメジャーデビューを果たす。デビュー作収録の「Natural Woman」はメタボリックのスムージー「enNatural」、「Slave of Love」はGoogle Play MusicのCMソングに採用された。2017年1月にワンマンツアー、5月にツーマンツアーを行い、各公演のチケットはソールドアウトを記録する。7月に1stフルアルバム「FEARLESS」をリリースし、8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」といった大型フェスに出演。9月からワンマンツアー「FEARLESS TOUR 2017」を行い、10月の東京・赤坂BLITZでのツアーファイナルを含め満員御礼となった。2018年4月にメジャー1stシングル「ウララ」を発表。6月に全国6カ所を回るライブツアー「ビッケブランカ ULALA TOUR 2018」を開催する。