ナタリー PowerPush - VELTPUNCH
新ドラマー迎え初音源 奇妙なファイティングポーズとは?
VELTPUNCHが、通算7枚目のフルアルバム「His strange fighting pose」をリリースした。このアルバムは新ドラマーに元キウイロールのアサマナオキを迎えての初音源。今回ナタリーでは、バラエティに富んだ傑作を完成させたメンバー4人を直撃し、メンバーチェンジの経緯や、今作の聴きどころなどについて話を聞いた。
取材・文 / 高橋美穂
ナオキが入らなかったら解散してもいいと思ってた
──ニューアルバム「His strange fighting pose」制作にあたってのテーマはどんなものだったんでしょうか?
長沼秀典(Vo, G) ドラムが遠藤(泰介)から(アサマ)ナオキに変わって、重要なメンバーを失った分、「今までを超えるVELTPUNCHを作ろう」っていうところをゴールにしてきましたね。ゴールと言っても「それはなんなんだ?」っていう状態だったし、頭で具体的に想像できるものではなかったですけどね。メンバーチェンジにあわせてジャンルを変えたりする選択肢はありましたけど、それは安易じゃないですか。変化球を投げるよりは、ど真ん中の剛速球を投げて、今までよりもすごいものを作ろうという意識はありましたね。
──ナオキさんが加入した経緯も教えていただけますか?
長沼 前の音源(「BLACK ALBUM」)の制作が終わったタイミングで、遠藤から「ツアーを最後に抜けたい。別にやりたいことがある」って言われたんですね。彼とは5枚アルバムを作ってきて、一緒に描きたかったものは残せたと思っていたので、脱退を惜しむというよりは、次に進んでみなよって背中を押すことができたんです。で、残された3人で「どうしようか」って話になって、一回解散するのもアリだけど、続けるなら今までを超えるものを作らないと、自分たちもリスナーも納得できない。それは大変だけれど、やっていく覚悟はあるかっていう話をしたんです。そこでアイコが即答で「やりたい」って言ったんで、じゃあやろうと。そのときにもうドラマーはナオキしか思い浮かばなかったですね。それで声を掛けたらやるって言ってくれたんで。
──どうしてナオキさんだったんですか?
長沼 ナオキが前にやっていたキウイロールとも仲良かったし、大ファンだったし、彼ら3人(アイコ、ナオキ、姫野)は別のバンド(mpjbd)を組んだりしていたし、人間関係も音楽面でも絶対的な信頼があるから、ナオキしかいないなって。ナオキに「やんない」って言われたらバンドをおしまいにしてもいいかなっていうくらいでした。ナオキが入ってくれれば、VELTPUNCHの中でもっと可能性が描けるんじゃないかなと思っていたんですね。
──ナオキさんは即答だったんですか?
アサマナオキ(Dr) はい。自分で言うのもなんですけど、変なドラムを叩くんですよ(笑)。それをVELTPUNCHに持ち込んだらどうなるのかなって興味がありましたし。
プレイは変態的だけどいいバランスで形にできた
長沼 で、確かに変なドラムなんですけど、やってみたら、他のメンバーが出たいと思っているところは抑えてくれて、自分が出すべきところは出すみたいな感じで、ぶつからずにやれて。聴いてみて、VELTPUNCHの良さも出しつつ、ドラムが変わったことでこんなこともできるんだっていう広がりも出せて、いいバランスで形にできたと思います。
姫野聖二(G) ボトムが鮮やかなので、楽な部分もありますね。
長沼 楽じゃなくて、シンプルなプレイでも生きるということでしょ(笑)。
姫野 そうですね(笑)。
ナカジマアイコ(B, Vo) 彼はプレイスタイルは変態的なんですけど、意外と曲の流れに合わせて、それを抑えられる子なんですよ。
アサマ 大人になりました(笑)。
ナカジマ だから基本的には自然にやってもらってて、私もそれがいいなって思うことが多かったんで結構まかせてましたね。私は自分が出しゃばって前に出る必要はないと思っているので、私が曲に合わせてベースラインを変えたりとか。
CD収録曲
- The sweetest
- your pink clothes
- Dance Dance Dance Don't Dance
- 酷い悪臭を放つ黒のダウンコートとコーデュロイのパンツを身につけ、お前はただただ自己嫌悪の無駄遣いをしているだけの事だ
- CM VS HE
- KAION
- Fighting Pose
- The panty makes me crazys (ex-VELTPUNCH)
- 百人町
- 止
- 光景
- irony
VELTPUNCH(べるとぱんち)
1997年に長沼秀典(Vo, G)、ナカジマアイコ(B, Vo)らを中心に結成された4人組バンド。下北沢、渋谷、三軒茶屋を中心にライブ活動をスタート。また国内のみならず、「SXSW」など海外ライブも積極的に行い、現地での人気を高めていく。2006年に姫野聖二(G, Cho)、2011年にアサマナオキ(Dr)が加入し現在の編成に。長沼&ナカジマによるツインボーカルが特徴。ときにエモーショナルで激しく、ときに繊細なギターロックサウンドが多くのファンを惹きつけている。