ナタリー PowerPush - バニラビーンズ

トラック? 火ばさみ? ワキ丸出し!? ちょいワル社長と振り返るバニビ史

バニラビーンズにとって2枚目のフルアルバムとなる新作「VaniBest」が完成した。本作はタイトルどおりベストアルバムの要素も持ちながら、前メンバー・リカ在籍時の楽曲をリサが歌ったニューバージョンから、今後のバニラビーンズを予見させる録り下ろし曲「100万回のSMK」まで、新曲&新録ナンバーを数多く収めたオリジナルアルバム同然の仕上がりとなっている。

その音楽性やルックスのみならず、ガラス張りのトラックで行なうプロモーション“トラック生活”やインストアイベントでの“ビンタ会”など、他に類を見ない独自の活動も多くの注目を集める彼女たち。今回のインタビューでは、レナ&リサの2人だけでなく、ファンの間でも“ちょいワル社長”としておなじみのフラワーレーベル代表・戸練直木氏も同席。これまでナタリーに掲載されたバニラビーンズ関連のニュースをすべて振り返りつつ、“規格外のアイドル”バニラビーンズのこれまで、そしてこれからについてたっぷりと語ってもらった。

取材・文/臼杵成晃 撮影/中西求

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バッグに釣られました

──ナタリーで初めてバニラビーンズを取り上げたのは、2008年3月末ですね。

レナ まずはメンバー脱退から(笑)。

◎バニラビーンズがメンバーチェンジ!5月に新曲発売(2008.3.31)

──2ndシングル「ニコラ」発売前の情報ですね。2007年のデビュー時には、サウンドやビジュアルの印象でまずアイドルファンよりも、いわゆる“渋谷系”音楽好きの間で話題になっていました。が、シングル1枚のみで突然のメンバーチェンジということで「一体どうしたんだろう?」と思ったことを覚えています。

所属事務所フラワーレーベル社長 戸練直木氏 いや、あのときは本当に大変でした。

インタビュー風景

レナ 前の相方のリカがいなくなったときは「私はホントに残っていいんだろうか」って葛藤があって、私も辞めようかなと思って社長と話し合ったんです。続けていく自信もなく……。

社長 話したよなあ。

レナ でも、バッグを買ってもらって、続けていくほうに釣られました(笑)。それもう妹にあげちゃったんですけど。

社長 そのあとに、いろーんなところをあたって彼女(リサ)を見つけてきたわけですよ。その間……1カ月ぐらいかな? 俺、あんときパワー出したよなあ。このコはただの学生で、芸能活動は何もやってなかった。

──アイドルやアーティストを目指していたわけではなく?

リサ はい、まったく。

──社長はそんな一般人であるリサさんのどこに、2代目メンバーとしての才覚を見出したんですか?

社長 いや、背の高い子を探してたんですよ。それで。

──それが第一条件なんですか?

社長 そうそう。ビジュアルにもこだわったユニットなので、そこは絶対で。第一条件としては、背が高くて、顔がちっちゃいコ。ちょっとデカすぎましたけど。

リサ 現在進行形で伸びてます。今173cmぐらい。

──結成当時から音楽性とビジュアルに関しては明確なコンセプトがあったんですね。

社長 はい。結成前の段階からこの「北欧系」というコンセプトは決めてたんですよ。それで北欧を下見に行ったりしながら「北欧の世界観を伝える女の子のユニットを作ろう」と。

発売日なのにトラックの中で何やってんだろう

──メンバーチェンジを経てすぐ、2008年5月にリリースされた「ニコラ」もデビュー曲「U ♡ Me」同様、スウェディッシュポップの流れを感じるおしゃれな楽曲ですよね。ただ……この辺りから、段々とニュースの内容がおかしなことになっていきます。

◎バニラビーンズ、ガラス張りトラックで都内を爆走(2008.5.21)

社長 僕が以前ハリウッドに行ったとき、ホテルのバーにある大きな水槽で、女の子がずーっと寝そべっているのを見たんですよ。メールしたり本を読んだりしているぐらいで、何もしてない。

──それは何かの広告だったんでしょうか。

社長 いや、そのホテルのプロモーションとしてやってたようで「これは面白いな」と。これを日本でやりたいと思って、最初はショーウィンドウを探してたんですけど、それだといろんな人に見てもらえない。それで……よくマンガ喫茶の広告車が街の中を走ってるじゃない? あれを透明にして女の子を入れたら面白いんじゃないかと。そう思ってトラック屋さんに交渉して作ったのが、あの車です。

──なるほど。でも、もはやこれ北欧関係ないですね。

社長 いやいや(笑)、これは「北欧人形」というイメージなんですよ。だから彼女たちには「絶対に笑うな」と。「あくまであなたたちはショーケースに入った人形ですよ」というイメージは徹底して。

──後にこの「トラック生活」はシリーズ化していきますが、初体験のときはどうでしたか?

インタビュー風景

レナ 最初は大変だったよね。

リサ とにかくやることがなくて。何もない空間でボーッとしてるのってつらいですよ。しかも笑ってもいけないし。

レナ 食べることぐらいしかないから、すごく太りました。

──つらいけど、思惑としてはホントに何もしないのが理想なんですよね。

社長 そう。中からは外が見えないという設定だから、見てる人はあまりにも反応がないから近づいてジーッと見るんですよ。そのぐらいまったく無反応。これは当たったのかな。

──アイドルとして正解なのかはわからないですけど(笑)、これでバニラビーンズを知ったファンも多いと思うので、きっと当たりですよね。バニラビーンズが他とは違う特別な立ち位置に飛び込んだのは、やはりこれが最初じゃないかと思います。

レナ この頃にはもう「これをやって」と言われたことを素直にやってた気がしますね。

リサ CDを売るプロモーションだとはあまり考えてなかったです。「発売日なのにトラックの中で何やってんだろう」って(笑)。

──そうやって疑問に思いながらもトラックに乗ったというのは、やっぱり当時から社長のそういった戦略や姿勢に対する信頼感があったんですか?

レナリサ ……??

社長 お前……そこは即答でいいじゃないか。

レナ はい、たぶん(笑)。たぶんあったと思います(ニヤニヤしながら)。

ベストアルバム「VaniBest」 / 2010年9月22日発売 / 3000円(税込) / 徳間ジャパンコミュニケーションズ / TKCA-73558

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CD収録曲
  1. KIDS [オリジナル:MGMT]
  2. 100万回のSMK
  3. D&D
  4. 東京は夜の七時 [オリジナル:ピチカート・ファイヴ]
  5. LOVE&HATE
  6. 恋のセオリー
  7. サカサカサーカス
  8. ニコラ
  9. a little crying (レナ&リサVer.)
  10. U ♡ Me (レナ&リサVer.)
  11. ガムラスタン <ALL WE WANT TO DO IS ROCK>

<BONUS TRACK>

  1. 百人一首 君がため ver.
  2. 百人一首 今来むと ver.
  3. 百人一首 ひさかたの ver.
  4. 百人一首 有明の ver.

アーティスト写真

バニラビーンズ

庶民派でアイドル研究が趣味のレナ(キノコ頭担当)と、日本で正月を過ごしたことがないセレブのリサ(外はね頭担当)からなる実験型次世代アイドルユニット。北欧の風に乗ってやってきたという設定で2007年に「U ♡ Me」でデビューし、翌2008年に初期メンバー脱退後第2期メンバーとしてリサが加入。現在のメンバー構成となる。スウェディッシュポップを意識したサウンドとレトロなビジュアルで渋谷系ファンなどから高評価を得る一方で、近年では自由奔放なトークや「ガラス張りトラック生活」などの風変わりな活動でも注目を集めている。2010年にロート製薬「メンソレータム リフレア D&D」のCMに出演し、CMソングとして「Def & Def」を提供。同年9月に初のベストアルバム「VaniBest」をリリースした。