音楽ナタリー PowerPush - VALSHE
依存からの脱却と“TRANSFORM”
「さあ、この曲で幸せになって」とは思わない
──そういう変化って、楽曲の制作にも影響してるんですか?
いえ、曲の作り方や制作スタイルが変わったということは全然なくて。そこは今まで通り、サウンドプロデューサーと「このデモはどう?」と話しながら一緒に作っています。ただ、制作のペースがすごく速くなってるんですよね。曲もどんどん増えていて、「ちょっと速すぎるんじゃない?」って思うくらいなので(笑)。1人ひとりの動けるスペースが広がってるのかもしれないですね。「自分の中で湧いてきたものは、1人で形にしてもいいんだな」と思えるようになって、新しく生まれてくる楽曲も増えたし。あと、新しい人たちも入って来やすい環境があるんですよね、今は。それが今回の楽曲の新しいトライにもつながっているので。
──新しいトライというのは?
「TRANSFORM」に関しては、初めてのアレンジャーさん(中山真斗。水樹奈々、榊原ゆいなどの楽曲を手がけているクリエイター)に参加してもらっています。以前から一緒にやってみたいと思っていた方なんですが、実際にやってみて「やっぱりすごいな」って。6人の奏者の方々に生のストリングスを入れてもらったんですが、メロディの運びがわかりやすくクラシカルなんですね。これまでのVALSHEのサウンドを残しながらも、また違ったアプローチができたんじゃないかな、と。ここで新しい方向性を提示できたのもすごくよかったと思うし。
──「marvelous road」はノベルアプリ「WRITERZ」のテーマソングなので、当然作品の世界観とリンクさせることも必要だったと思うのですが。
そうですね。歌詞も作品のテーマソングであることを念頭に置きながら書かれたので。大きく分類すると、応援歌だと思うんですよ。「WRITERZ」という作品には“勇気をなくして、一歩前に踏み出せない人たちを元気付ける”というコンセプトがあるので、それを踏まえた曲になっていますね。自分で自分を奮い立たせるというか、ここで歌われていることは誰しも経験したことがあるんじゃないかなって。
──楽曲自体は王道のVALSHEサウンドですね。
2ndシングルの「JESTER」あたりを彷彿とさせつつ、さらにスリリングでエッジの効いたアレンジになっていて。シングルの表題曲にミディアムテンポの曲を持ってくるのはひさびさなので、そこも楽しんでもらえたらな、と。
──VALSHEさんの中には「音楽を通して、リスナーに勇気や前向きな気持ちを与えたい」という気持ちもありますか?
うーん……。自分の曲を聴いてくれた人が結果的にそうなってくれたら、そんなにうれしいことはないとは思います。「VALSHEさんの曲を聴いて、手術を乗り越えました」というお便りをいただいたこともあって、そのときも本当にうれしかったし。ただ、初めから「誰かを元気にしたい」とか「幸せにしたい」とか、そんなことを思って歌は歌ってないです。音楽は自分にとって、最大の娯楽なんですよ。テンションを上げたいときに聴くこともあるし、BGMとして楽しむこともあるんですけど、そういうつもりで音楽を作ってるんですね、自分も。だから「さあ、この曲で幸せになって」とは思わないというか。そこに関しては、サウンドプロデューサーも同じ気持ちなんですよね。「そんな大それたものではないよね」っていう。結果として、誰かにとってそうであるのなら本当にうれしい。
声優への挑戦と発見
──ノベルアプリ「WRITERZ」にはテーマソングだけではなく、声優としても出演されていますね。声優への興味は以前からあったんですか?
うん、ありました。小さい頃は声優を職業として認識してなかったというか、ただ漠然と「すごいなー」と思ってただけなんですけど(笑)。4年くらい前に一度CMナレーションのお仕事をさせてもらったことがあって、そこから声を使う仕事に興味を持ったんです。声優も魅力的だなと思っていたんですが、一朝一夕でできることではないので、まずは先生について学ばせてもらって。そういう過程を踏んでからの声優デビューだったわけですが、「WRITERZ」のキャラクターに声を当てられたことはすごく幸せでしたね。
──初めての録音はどうでした?
すごく楽しかったです! 同じレコーディングといっても、歌と声優では雰囲気や制作工程がぜんぜん違うので。現場に行ってみないとわからないこともたくさんあったし、新鮮でしたね。音楽っていうのは、やっぱり自分がメインじゃないですか。自分が中心になっていて、いろいろな素材に助けてもらいながら作品を作っていくっていう。アニメやゲームの場合はそうじゃなくて、自分は1つの素材なんですよね。完成した作品を観て、自分という素材がどう使われたかわかる。それがすごく面白かったんです。声優という仕事はやっぱり魅力的だなって再確認できたし、これからも精力的に続けていきたいですね。
──声を使った表現に興味があるんでしょうね、きっと。
そうですね。声優と歌には、どちらにも生かせるものがあるんです。声優のレッスンを重ねていく中で、音楽に対するいい影響がたくさんあったし。逆にずっと音楽を続けていたからこそ声優に生かせる部分もかなりあって。声を使った表現には共通するところがある、というのも大きな発見でしたね。
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- ニューシングル「TRANSFORM / marvelous road」/ 2014年7月16日発売 / ビーイング
- 初回限定盤A / VALSHE盤 [CD+DVD] 1749円 / JBCZ-4009
- 初回限定盤B / WRITERZ盤 [2CD] 1543円 / JBCZ-4010
- 通常盤 [CD] 1337円 / JBCZ-4011
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収録曲
- TRANSFORM
- marvelous road
- Chewing girl
- TRANSFORM -Instrumental-
- marvelous road -Instrumental-
- Chewing girl -Instrumental-
初回限定盤A / VALSHE盤 DVD収録内容
- “TRANSFORM” MUSIC VIDEO
- ばる散歩 ~川越編~
初回限定盤B / WRITERZ盤 CD収録曲
- VALSHE RADIO ~スマホ落としてトイレに流れる編~
- つぐない(原曲:テレサ・テン)
- VALSHE RADIO ~スマホ落としてトイレが壊れる編~
- THE Quizzical BOX ~TRANSFORM / marvelous road Zepp Tour 2014~
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2014年7月30日(水)大阪府 Zepp Namba
- [第1部]OPEN 14:30 / START 15:30
- [第2部]OPEN 17:30 / START 18:30
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2014年8月3日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- [第1部]OPEN 13:30 / START 14:30
- [第2部]OPEN 16:30 / START 17:30
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2014年8月20日(水)愛知県 Zepp Nagoya
- [第1部]OPEN 14:30 / START 15:30
- [第2部]OPEN 17:30 / START 18:30
VALSHE(バルシェ)
アニメファンやネットユーザーを中心に支持を集める女性シンガー。2010年のメジャーデビュー以来ミニアルバム、フルアルバム、シングルと精力的に作品をリリースしている。2013年11月、人気アニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマに採用された「Butterfly Core」を6thシングルとして発売。このタイミングでアーティストビジュアルを従来のイラストから実写へ一新し、大きな反響を呼んだ。2014年2月にリリースした2ndフルアルバム「V.D.」はオリコン週間ランキングにて10位を記録。7月には両A面シングル「TRANSFORM / marvelous road」を発表する。中性的なハスキーボイスで歌われる力強いロックサウンドが魅力。