ナタリー PowerPush - VALSHE

葛藤乗り越え突き詰めた“VALSHE's Identity”

客観的に見たVALSHEはどういう人間なのか

──アルバムの中にはVALSHEさんではなく、「Human Dolls」「EVALUATION」のようにminatoさんが歌詞を書いた曲もありますよね。それもやはりノンフィクションなんですか?

はい。minatoが想像したことではなくて、完全に自分のノンフィクションですね。「Human Dolls」の場合は、VALSHEの幼少期をminatoにリスニングしてもらうところから始まってるんです。半生を掘り下げていって、その中でクローズアップしたいエピソードをminatoが選び、それを第三者の視点から物語風に歌詞にしたっていう。minatoにとっては「そんなことがあるの?」というエピソードだったみたいで、それをもとにしながらメルヘンチックなサウンドを付けてくれたんです。自分の人生がそのまま歌詞になっているような感じだったし、レコーディングのときもしっかり自分の感情で歌えました。ここにある言葉は自分の心となんの差異もないです。

──ちなみにVALSHEさんは、どんな子供だったんですか? いつも理路整然と話してくれるし、学校の成績もよかったんじゃないですか?

……よかったです(笑)。テストに関しては完全に一夜漬けタイプでしたけど。

──活発な子でした?

今よりもインドア派だったかもしれないですね。室内でやることのほうが好きだったんです。楽器を触るのもそうだし、歌が好きだったからカラオケボックスにもよく行ってたので。だけど、アウトドアも大好きです。登山に行きたくて同伴者を募集してるんですけど、なかなか見つからなくて(笑)。散歩でガマンしてます。

──長距離の散歩が好きなんですよね(参照:VALSHE「Butterfly Core」インタビュー)(笑)。では、アルバムの話に戻って。minatoさんが作詞している「EVALUATION」はどんなふうに制作されたんですか?

客観的に見たVALSHEはどういう人間なのか?というテーマで書いてもらいました。やはり、minatoは一番身近な人物なので。minatoがライナーノーツを書いてくれたんですが……(iPadの画面を読みはじめる)「いつも何かから身を守ってる印象があって、そのために人やモノや価値観、さまざまなものを値踏みする=evaluation(査定、評価)ということで、このタイトルです。でも実際にはそんなことをしたいわけじゃなく、本当はまっすぐで単純な欲求ひとつなんだ、という歌詞です。あんまり深く言うと照れられると思うので、ここまでです」とのことです。

──(笑)。minatoさんの見解は当たってますか?

そうですね……。近くにいる人からはそういうふうに見えてるんだなって。自分自身でも「VALSHEはこういう人間だな」と客観的に見ることがあるんですけど、意外と後ろの部分は見えてなかったりしますからね。ちょっと恥ずかしくなりますけどね、この歌詞は(笑)。

「Prize of Color」はファンの皆さんに向けた曲

──アルバムの最後に収録されている「Sincerely」についても聞かせてください。「ありがとう、といま伝えたい」というまっすぐな思いが表現された歌ですが、この歌詞を書いていたときはどんな気持ちだったんですか?

これは自分の身近な人物に向けて書いていったんです。今まではそういう書き方をしたことがなかったんですが。万人に向けて発表する楽曲において、特定の個人に歌詞を書くことにあまり積極的ではなかったので。ただ今回のアルバムのコンセプトを踏まえて、またVALSHEを形作るという意味でも、この曲はどうしても欠かせなかったんです。大切な人に宛てて手紙を書くような感じですね。個人的な気持ちで書いた歌が、誰かの同じような環境や心情とリンクすることもあるかな?と。

──表現の幅も広がりますよね。

「Prize of Color」という曲もそうなんですよね。これは完全にファンの皆さんに向けて書いてるので。

──ライブを経験しなかったら、こういう歌詞は書いてない?

そうですね。この曲はサウンド的にもライブを意識しているんです。制作の段階から「ライブのとき、ここでこんなふうに盛り上がったら面白いよね」って話していたので。ライブを経験したことで、新しい制作の形も見えてきたというか……。こういうテクノポップみたいな楽曲も初めてでしたからね。

──今まではエッジの効いたデジタルロックサウンドが中心だったから、こういうポップな曲はかなり新鮮ですよね。

以前から「ポップな曲もやってみたいね」という話はしてたんです。でも、「歌詞はどうしようね?」って考えちゃうことが多くて。「Prize of Color」も、まず歌詞のテーマが先にあって、それに合うサウンドを作った感じなんですよね。このタイミングでこういう曲ができたのはうれしいし、歌ってるときもすごく楽しかったです。

──「リアルな自分を表現する」というテーマが新たな音楽性につながった、と。

デジタルロック、デジタルサウンドという軸を大きく変えるつもりはまったくないんですけどね。シングルの表題曲などについては、やはりそういう音楽性の楽曲が中心になると思うし。その上で、カップリングやアルバムの収録曲などでは遊んでもいいんじゃないかっていう。そうやってゆるく変化していきたいんですよね。実際、1stアルバムと今回のアルバムを聴き比べてみると「同じデジタルサウンドだけど、やっぱり違うよね」って思ってもらえるんじゃないかな、と。

ニューアルバム「V.D.」 / 2014年2月19日発売 / ビーイング
初回限定盤 [CD+DVD] / 4095円 / JBCZ-9004
通常盤 [CD] / 3150円 / JBCZ-9005
CD収録曲
  1. Overture
  2. RAGE IDENTITY
  3. Butterfly Core
  4. AFFLICT
  5. ASTRAEA
  6. Human Dolls
  7. Mr.Diorama
  8. Blissful Jail
  9. BLESSING CARD
  10. Leopardess
  11. EVALUATION
  12. Prize of Color
  13. Tigerish Eyez
  14. Fragment
  15. Sincerely
初回限定盤DVD収録内容
  • Butterfly Core(MUSIC VIDEO)(実写Ver.)
VALSHE(ばるしぇ)

アニメファンやネットユーザーを中心に支持を集める女性シンガー。2010年のメジャーデビュー以来ミニアルバム、フルアルバム、シングルと精力的に作品をリリースしている。2013年11月、人気アニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマに採用された「Butterfly Core」を6thシングルとして発売。このタイミングでアーティストビジュアルを従来のイラストから実写へ一新し、大きな反響を呼ぶ。リリース後には初のライブイベントをファンクラブ会員限定で開催し成功に収めた。2014年2月、2ndフルアルバム「V.D.」を発表する。中性的なハスキーボイスで歌われる力強いロックサウンドが魅力。