ナタリー PowerPush - VALSHE
素顔を明かし新たなステージへ
2010年9月にミニアルバム「storyteller」でデビュー。質の高いデジタルロックサウンドと中性的なハスキーボイスによって、ネットユーザー、アニメファンを中心に高い支持を得てきた女性シンガー“VALSHE”(バルシェ)。11月27日リリースのニューシングル「Butterfly Core」がアニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマに決定、さらに初の実写ジャケット、初めてのライブイベントも開催されるなど、その活動の幅は大きく広がりつつある。
今回ナタリーでは、「Butterfly Core」の制作プロセス、彼女自身の音楽的ルーツ、活動に対する基本的なスタンスなどをインタビュー。ベールに包まれたアーティスト像に迫った。
取材・文 / 森朋之 インタビュー撮影 / 佐藤類
ここにきてようやく万全の状態
──シングル「Butterfly Core」のことを中心にVALSHEさんの実像に迫ってみたいと思います。これまでの作品では実写のビジュアルは一度も使われず、CDなどのアートワークはイラストが中心だったわけですが、こうやって実際にお会いすると「今までのイラストは、VALSHEさんのイメージにすごく近かったんだな」と実感しますね。
だったらいいな(笑)。デビューしたばかりの頃は主にネットユーザーの方に聴いてもらっていたし、イラストで表現したい世界観もしっかりありましたから。そういう環境において、実物が出ていく必要性がなかったというのが大きい理由だと思います。イラストに関しては「これを1つの作品として完結させたい」という気持ちがあったので、描いてくれている方の持ち味も最大限に出してもらってるんですよ。デビュー当初は自分の写真だったり実物を見た上で制作してもらったんですけど、その後長く制作を続けていく中で「もっと細かく(実像に)近付けていこう」という感じになってきて。
──イラスト自体の精度が上がってきた、と。11月30日にはワンマンライブ「LIVE THE JOKER 2013」も開催されますね。デビュー4年目にして初めてのライブとなりますが、今の気持ちはどうですか?
とても楽しみです! おおまかなセットリストは1年くらい前から決まっていて、演出などに関しても半年前から準備を進めているんですよ。
──ライブをやりたいという思いは以前からあったんですね。
はい。衣装、演出、パフォーマンスを含めて、「どういうライブをやりたいか」っていうことが明確だったんです。でも、デビュー当時にそれができたかといわれると、そうじゃなかったんですよね。マイクスタンド1本でステージに立つこともできたかもしれないけど、当時の自分としては、それは違うなって。サウンドも自分自身もいろんな面で成長しなくちゃいけないと思ったし、ここにきてようやく万全の状態でライブを迎えられたのはすごくよかったです。聴いてくれる方も心の準備ができてると思うんです。4thシングル(「4 FELIDS」)あたりから少しずつ自分自身が出ていくことを示唆していたので。いきなり(イラストから実写に)差し替わったからビックリしちゃいますからね(笑)。
──きっと、すごくプロ意識が高いんでしょうね。中途半端な状態ではステージに立ちたくないっていう。
お客さんはお金を払ってライブチケットを買って会場に来てくれるわけじゃないですか。CDもそうですけど、1円でもお金をもらってる以上、中途半端なモノは見せられないです。「ライブをやってくれたらいいな」っていう声もたくさんいただいてたんですけど、当時の自分がライブをやっても「また観たい」と思ってもらえるようなステージはできなかったと思うんです。だから、やっぱりこのタイミングでよかったんじゃないかなって。その代わりずいぶん待たせてしまいましたけど。
──「早くステージに立ちたい」っていう焦りや葛藤はなかったですか?
いっぱいありました。途中でCDをリリースできなくなる可能性も当たり前にあるので、ライブをやれないまま終わってしまったらどうしよう?と思ったことも何度となくあって。でも、そのたびに「絶対に(ライブを)やろう」と強く思ったし、それを信じてやってきた結果が現在なんじゃないかな、と。特に今年はいろんなことが形になってきてるんです。アニメソングを歌いたいっていうのも、ずっと思っていましたし。
「Butterfly Core」への思い入れ
──ニューシングル「Butterfly Core」は、アニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマですね。
はい。すごく光栄です!
──制作はどんなふうに進めていったんですか?
楽曲の制作はデビュー当初からサウンドプロデューサーのminatoと一緒にやってるんですが、まず鼻歌で歌われているデモの中から選ぶんです。スマホの中に鼻歌のメロディがたくさん入っていて……あ、鼻歌じゃなくて、歯笛ですね(笑)。それを聴きながら「これはいいね」っていうものをピックアップして、それをもとにデモ作りやアレンジを進めていくっていう。ただ今回の「Butterfly Core」のサウンドに関しては、3年前のデビュー当時からあったんです。すごく気に入ってたんですけど、「今は出したくない。きっとこの先、出すべきときがあるはずだ」っていう話になって。そのときから「将来、アニメソングを歌うことになったときのために取っておきたい」という気持ちもあったんですよね。そこまで活動を続けられる確信なんてなかったから賭けだったんですけど、やっとこのタイミングで日の目を見たというか。アニメのスタッフの方にはほかの曲も聴いていただいたんですが、この曲を選んでくれたんです。この3年間、何百回聴いたかわからないくらい思い入れがある楽曲だったから、すごくうれしかったですね。
──歌詞は「コナン」の話が決まってから書いたんですか?
そうです。いつもそうなんですけど、歌詞の大きな軸が決まってからは早かったですね。
──この歌の「大きな軸」というのは……。
ざっくり言うと、“蝶”ですね。もちろんアニメの世界観に沿わせることも大事なんですが、それと同時にVALSHEの音楽として発したいメッセージもちゃんと組み込みたくて。その両方にリンクするモチーフとして、蝶を選んだということです。理由はそれぞれ違うんですけど、そこは聴いてくれる人に委ねたいな、と。
- ニューシングル「Butterfly Core」/ 2013年11月27日発売 / ビーイング
- 通常盤[CD] 1300円 / JBCZ-4007
- 初回限定盤A[CD+DVD] [CD] 0000円 / JBCZ-4006
- 初回限定盤B[CD2枚組] 1500円 / JBCZ-4007
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収録曲
- Butterfly Core
- 赤い棘
- STAR GATE
- Butterfly Core -Instrumental-
- 赤い棘 -Instrumental-
- STAR GATE -Instrumental-
初回限定盤A DVD収録内容
- “Butterfly Core” MUSIC VIDEO
- “Butterfly Core” TV SPOT
- VALSHEドキドキ♥入社面接
初回限定盤B CD収録曲
- VALSHE RADIO ~スマホでかすぎて親指届かない編~(前編)
- Growing of my heart(原曲:倉木麻衣)
- VALSHE RADIO ~スマホでかすぎて親指届かない編~(後編)
VALSHE(ばるしぇ)
アニメファンやネットユーザーを中心に支持を集める女性シンガー。2010年のメジャーデビュー以来精力的に作品を発表し、これまでにミニアルバム、フルアルバム、シングル5作をリリースしている。2013年11月27日、人気アニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマに採用された「Butterfly Core」を6thシングルとして発売。このタイミングでアーティストビジュアルを従来のイラストから実写へ一新し、大きな反響を呼んだ。11月30日には初のライブイベントをファンクラブ会員限定で開催する。中性的なハスキーボイスで歌われる力強いロックサウンドが魅力。