ナタリー PowerPush - V6

6人と6分6秒の旅に出よう 西寺郷太&corin.インタビュー

制作現場でのメンバー

──今回の曲はメンバーと試行錯誤しながら練っていったということで、彼らからも多くの意見が出たんじゃないかと思いますが。

郷太 そうですね。さっき言ったとおり、健くんは「全部みんなで歌う必要はない」と。1人ひとりの声の良いところ、得意な面がもっとわかりやすい歌の割り振りでいいんじゃないかって最初の段階で言ってくれた。

──そういったメンバーの声はどんどん採用していくんですか?

郷太 基本的にそうだよね。

corin. うん。特に剛くんの意見は全部採用したかもしれない。そんなに多く言わないんだけど、すっごい的確なことを言ってくれるから。

──例えば?

郷太 1番の「♪感じるままにミュージック!」のあとの打ち込みのリズムは、俺たちが良かれと思ってアレンジを変えたとき、剛くんが「前のほうが踊りやすかった」って言ってくれたことで「わかった戻そう」と。

インタビュー写真

corin. やっぱり僕ら、踊ってステージで見せるとか、この曲を大きな会場で歌うとか、そういうところまで想像できないし、実際やるのは6人だからね。イントロの、バラードから一気にアップテンポになる前奏部分にラップやコーラスを入れようっていう案もあったんですけど、ここはダンスに専念する部分にしたほうがいいんじゃないかっていうのも、剛くんが言ったかな。

郷太 特にダンスと歌の関係性みたいな部分は、剛くんがいろいろ言ってくれたね。で、それとは真逆なのが坂本さん。これはこれで俺たちはうれしかったんだけど、坂本さんのスタンスは「俺は何も口出さない。その代わり要求されたことは全力でやる」っていう。

──カッコいい。完全に演者の姿勢ですね。

郷太 そう。だからこの曲もギリギリまで聴かせてなくて「坂本さんどう思うかな」って心配してたんだけど、イノッチとかは「2人のこと信頼してるからいくら突き抜けてても大丈夫だよ」って言うわけ。いくらでもってこんなミュージカルみたいなんだけどって思いつつ(笑)。で、坂本さんのレコーディング当日、来たらもう100%頭に入ってて、1回目から最高のテイク出してくれて、本当に有言実行してくれたんだよね。

corin. あのとき、スタジオでみんなスタンディングオベーションだったね(笑)。

郷太 もうショーを観たみたいな気持ちになっちゃって。レコーディングじゃなかったよね、あれは。すごいもの見せてもらったな。

──レコーディングのスタイルも6人それぞれ異なるんですね。

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郷太 長い間やってるからっていうのもあるけど、全員揃わずにレコーディングすることだって多いのに、その人にしかできないことをちゃんと選んでやってるんだよね。特にそう感じたのが、剛くんが先に録り終わって、入れ替わりで健くんが来るっていう日。剛くんと健くんは、曲の中で「♪あれーー!お前の好きな子、こんな美少女?!」「♪わーお、そうなると話変わってくんだろーー!」って素早く掛け合いをするラップパート、名付けて“剛健ワチャワチャパート”があるんですよ(笑)。でもレコーディングのスケジュール的に2人は会わないから、実際ワチャワチャすることはなく、トラック上で合わさるのかなと思ってたら、剛くんが自分のパート終わったのになかなか帰らなくて。

──うんうん。

郷太 「あれ? 時間大丈夫?」と思ってたら健くんも来て、「ここ健と2人でタイミング合わせてやります」って剛くんから言ってくれたんです。そのパートは2人に俳優のように、ラップというよりは台詞のように言い合ってほしかったから、俺としてはものすごい助かった。ていうか、多分そのへんも剛くんはわかっていて、一緒にやったほうが良くなるって思ってわざわざ残ったんでしょうね。どういう出来になるか、自分でも確かめたかったんだと思う。そういうところも剛くんは本当にすごいなと。

V6は80年代、90年代、2000年代のジャニーズを体現している

──「kEEP oN.」は生のサウンドへのこだわりも強く感じられました。

corin. 僕も歌録りに限らず、オケ段階から楽しかったです。音楽業界が縮小傾向にある今、自宅で作ったものをオンラインで送るっていうケースも増えてるけど、今回は一時期毎日のようにスタジオに通っていたし、そういうレコーディングは久しぶりだったから作家としても新鮮だった。弦も管楽器も生で録って、バンドも全部入れて、すごく豪華な仕上がりになって。

郷太 パソコンの中で作っていく音楽にも素晴らしいものはたくさんあるけど、やっぱりV6には古き良きアイドルの良さがある。そう、V6の強みって、80'sジャニーズと90'sジャニーズと2000年代のジャニーズ、そして2010年代も全部体現してるっていうことで、それを曲でも表したかったんだよね。

──それはどういう意味ですか?

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郷太 坂本さんは昔、東山(紀之)さんの付き人してたりバックで踊ってたこともあって、少年隊スピリッツが備わってる。長野さんは本当に天然記念物みたいな人で、もしかすると年齢的にも光GENJIのメンバーに当時選ばれていておかしくなかったんじゃないかって、勝手に僕思ってるんです。その上で同じキラキラ感を今も保ち続けてる。その坂本長野組の少年隊&光GENJIイズム、昭和な香りっていうのは、生ストリングスを入れることで音楽的に表現できるんだよね。で、corin.さんの作ったダンストラックに突入した瞬間、時代がちょっと近くなるんだけど、そこは90年代以降のアイドルソングを歌い踊ってきたカミセンの3人がいる。さらに幅広い音楽に精通してるイノッチがいて……。

──確かにそうですね。曲も歌謡的なメロディから最新鋭のダンスミュージックまで網羅していて、いろんな時代の音が行き交ってますね。

郷太 今ジャニーズのグループ内で9歳の年齢差って最大らしいし、時代を横断して全て知ってるっていうのは、V6の武器だと思う。「kEEP oN.」は歌詞も「タイムトリップ」がテーマになってるから、6人と音の旅をしてるような気持ちで聴いてもらいたいですね。

──もっと言えば60年代のTHE BEATLES的な匂いもするし、ジェームス・ブラウンや岡村靖幸さんの影響も感じるし。郷太さんの好きな音もしっかり盛り込まれています。

郷太 そうそう。「ハッ!!」っていうところJBっぽいでしょ(笑)。あと実はTHE BEATLESそのものっていうより、TEARS FOR FEARSやXTCなんかの、80年代後半にイギリスのバンドがやったTHE BEATLESリバイバルを意識したんだよね。ミュージカル部からバラード大合唱に突入するところでも聴けるドラムにフランジャーをかけたような、スピーカーを通して録ったような音像。THE BEATLESを研究してちょっとひねった感じのサウンドと言えば、JELLYFISHもそうかもしれない。だからイギリス、アメリカ、日本と、いろんな国のいろんな時代の伝統技を味わえる1曲だと思う。

豪華プレイヤー陣が集結

──そんなサウンドを実演したプレイヤー陣もそうそうたるメンバーですね。小松シゲル(Dr / NONA REEVES)、奥田健介(エレキギター / NONA REEVES)、西寺郷太(アコースティックギター、Cho / NONA REEVES)、村田シゲ(B / □□□、Cubismo Grafico Five)、冨田謙(Key)、corin.(シンセサイザー、プログラミング、エレキギター)、山本拓夫、村田陽一、西村浩二(以上3名ホーン)、金原千恵子ストリングスと。

郷太 ほんと大満足ですね。予算的には誰でも使えるっていう状況だったんだけど、曲の流れを考えたときに、JB的なファンクもできて、THE BEATLES的なロックもできて、四つ打ちに合わせたドラムも叩けて……ってなるとやっぱり小松がベストかな、とかいろいろ考えてたらノーナのメンバーになった(笑)。あとベースは、山本拓夫さんアレンジのストリングスがガンガン入ってくる中で、ただうまいだけじゃなくてちゃんと歌に寄り添いながらも、前に出てくる演奏が欲しくて。そういう意味でシゲはものすごく歌心のあるベーシストだし、□□□なんてサンプリングの鬼だから、最適で。

──皆さんはこの曲を演奏してみて、どう反応してました?

郷太 めっちゃ楽しんでた。小松なんかは普段は俺につっけんどんなくせにレコーディングのあと呑みに行ったら酔っぱらって、「あんなすごい曲ができるなんてお前は天才だ。それもこんな音楽的に攻めた曲がV6のシングルだろ? 各所に交渉して通したのもすごい!」って普通にミュージシャンとしてすごい興奮してた(笑)。ストリングス録るのも見に来たしね。

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corin. 金原ストリングスの皆さんが、レコーディングでミュージカルパートになるたびに笑ってるのを見て、これいけるんじゃないかと思ったな(笑)。

郷太 あははは!(笑) ブラスとか弦の演奏者って、どんな曲が来ても驚かない、めっちゃポーカーフェイスな人が多いんだけど、そんな人たちがやるたびにびっくりしてた(笑)。精神統一してグルーヴに乗ってるときに急に分断されて、坂本さんのイイ声で「♪Sunday Monday 朝まで」って急に来るから。みんな「面白い」って笑いながら楽しんでやってくれたなあ。

──V6や郷太さん、corin.さんのみならず、演奏陣、スタッフまで関係している人全員が楽しみながら完成したんですね。

corin. そうですね。僕が第1稿を作った時点では、今までの流れをくみながらも特異な構成の曲っていうだけに留まってたけど、それが郷太くんといろいろ揉んで、バンドも入って、管弦アレンジもしてもらっていく中で、その道のプロが集まって作っていくと1曲がこんなにすごい世界になるんだって久しぶりに実感した。

ニューシングル「kEEP oN.」/ 2012年8月8日発売 / avex trax

初回生産限定<kEEP oN.盤>[CD+DVD] / 1890円 / AVCD-48539/B / Amazon.co.jpへ

CD収録曲
  1. kEEP oN.
  2. 愛をこめて
DVD収録内容
  • kEEP oN.ビデオクリップ
  • ビデオクリップ撮影 真剣!ドキュメンタリー
  • kEEP oN DANCING!振り付けビデオ

初回生産限定<キーポン盤>[CD+DVD] / 1890円 / AVCD-48540/B / Amazon.co.jpへ

CD収録曲
  1. kEEP oN.
  2. 愛をこめて
DVD収録内容
  • 新番組!?「キーポンV6」

通常盤[CD] / 1260円 / AVCD-48541 / Amazon.co.jpへ

CD収録曲
  1. kEEP oN.
  2. 愛をこめて
  3. Perfect Lady
  4. 一生で最後の恋
  5. kEEP oN.(instrumental)
  6. 愛をこめて(instrumental)
  7. Perfect Lady(instrumental)
  8. 一生で最後の恋(instrumental)
V6(ぶいしっくす)

坂本昌行、長野博、井ノ原快彦、森田剛、三宅健、岡田准一の6人からなる、ジャニーズ事務所所属の男性アイドルグループ。1995年11月にシングル「MUSIC FOR THE PEOPLE」でCDデビューを果たす。グループとして以外にも、年長組の20th Century(坂本、長野、井ノ原。通称トニセン)と年少組のComing Century(森田、三宅、岡田。通称カミセン)がそれぞれ単独でライブやリリースを行うほか、各メンバーはドラマや映画、舞台、バラエティ番組、テレビCMなどでも活躍。また、2001~2年には台湾や香港、2009年には韓国と台北で海外公演も行っている。