ナタリー PowerPush - V6
6人と6分6秒の旅に出よう 西寺郷太&corin.インタビュー
V6のニューシングル「kEEP oN.」がリリースされた。この曲の作詞 / 作曲 / プロデュースを手がけたのは、西寺郷太(NONA REEVES)とcorin.。彼ら2人は「Sexy.Honey.Bunny!」(2011年8月発売シングル「Sexy.Honey.Bunny! / タカラノイシ」収録)、「POISON PEACH」(2012年2月発売シングル「バリバリBUDDY!」収録)と2度にわたってV6の楽曲制作を担当し、その相性の良さからいつしか“にしこりコンビ”と呼ばれるようになった。
V6×にしこりコンビの最高傑作とも言える今回の「kEEP oN.」では、1曲の中にバラード、エレクトロ、ラップ、ファンク、オペラなどの世界が凝縮され、メンバー6人の個性あふれるボーカルを堪能できる。制作に5カ月を費やし、“にしこりコンビ”とV6メンバーが悩み笑いながら作り上げたという6分6秒の大作は、いかにして生まれたのか?
また、V6がデビュー17年目の今攻めている理由、彼らだけが持っている武器とは? 6人を深く理解する郷太とcorin.が、制作の裏話、メンバー1人ひとりの魅力をじっくりと語ってくれた。
取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 佐藤類
V6メンバー論 INDEX
西寺郷太+corin.“にしこりコンビ”誕生の経緯
──今回は郷太さんとcorin.さんに、新曲「kEEP oN.」の制作エピソードやV6というグループについてお話を伺いたいと思います。
西寺郷太 こういうのあんまりないですよね。ナタリーでジャニーズのグループの特集をするなんて。すごい面白い企画だなと思って。
──ナタリーとしても非常に新鮮な企画です。どうぞよろしくお願いします! さて、“にしこりコンビ”と呼ばれるおふたりがV6の楽曲制作を手がけるのは「Sexy.Honey.Bunny!」「POISON PEACH」に続いて3作連続3度目ですね。まずは「Sexy.Honey.Bunny!」でどのようにこのタッグが生まれたのか教えてください。
corin. 「Sexy.Honey.Bunny!」はいわゆるコンペで僕の曲が選ばれて、郷太くんが歌詞を書いたんだよね。
郷太 念のために言うと「コンペ」っていうのは、有名無名問わずいろんな作家から候補曲を集めて、その中からグループが今求めてるものに合わせてディレクターなりレコード会社なり事務所なりが曲を選ぶっていう形式ですね。「Sexy.Honey.Bunny!」のときは、まずcorin.さんの曲が採用されて、俺は誰が作った曲かも知らずに聴いてみたの。そのとき歌詞の締切がすごく迫ってたんだけど、あまりにも自分にフィットした曲だったから、いける!と思って。締め切り2時間前くらいに「Sexy.Honey.Bunny!」っていうフレーズが思い付いて、1時間で仮歌録って、締め切り5分前に送ったのがあの曲。その後のミーティングでcorin.さんと初めて会いましたね。
──最初から、おふたりがV6のメンバーと密にコミュニケーションを取りながら制作していくスタイルだったそうですが、現場はどんな雰囲気でしたか?
corin. 「Sexy.Honey.Bunny!」のとき、チーム全体はすごく盛り上がってたんだけど、特にほぼ初めて会うメンバーたちは僕たちのことをあんまり知らなかったから「こいつら何者なんだ」みたいな感じはちょっとあったかな(笑)。ボーカルのディレクションは郷太くんが直接やってたんだけど、そうやって外部の誰かが入って録るっていうのはジャニーズ的にも珍しかったと思うしね。
郷太 まあ異例だっただろうね。でもイノッチはずいぶん前からNONA REEVESのアルバムを買って聴いてくれていて、俺と仕事するの喜んでくれて、すごいうれしかったな。そもそもイノッチってキリンジとかTRICERATOPSとかノーナとか、ま、あえて言うけど“通”が聴くような音楽にものすごく詳しくて。彼のさまざまな音楽への深い愛情が、俺にとっては最初のキーになったと思う。そうやってメンバーと何気ない話をしてくうちに、曲がどんどん出来上がっていったんだよね。
──その「Sexy.Honey.Bunny!」はリリース後、V6の新たな魅力を引き出し、かつ音楽的にもクオリティの高い楽曲ということでファン以外からも高い評価を受けました。
corin. ファンの皆さんはもちろんだけど、僕の周りの作家とかミュージシャンとか音楽業界の人が褒めてくれたのもうれしかったですね。人づたいに「あの人もいいって言ってたよ」なんて話をガンガン聞いて。
郷太 うん。ちゃんと歌謡曲の良さ、J-POPの凄み、音楽的な面白さをわかってる人たちが本当に褒めてくれる曲だったなって。corin.さんともよく話してるんだけど、自分たちの作家人生にとってもエポックメイキングな、デカイ1曲だったと思う。
──これがあったからこそ第2弾(「POISON PEACH」)も、という話になったんでしょうね。
corin. そうなんです。だから「POISON PEACH」は元からこの2人で何か作ろうっていうスタンスで始まりました。
常識を壊した超大作「kEEP oN.」の構想
──では「kEEP oN.」の制作について。この曲は完成までに5カ月を費やしたそうですね。
郷太 コンペだったら1曲に対して5カ月かけることはないんでしょうけど、それまで「Sexy.Honey.Bunny!」「POISON PEACH」と“にしこりコンビ”でやらせてもらう中でメンバーとの信頼関係ができてたこともあって、今回は「2人と一緒にゼロから何かを作りたい」と言ってくれたんです。僕ら2人にとってはありがたいことですよね。で、みんなで最初にミーティングしたのが1月の終わりだったかな。
──そして1曲の中にバラード、エレクトロ、ラップ、ファンク、オペラなどさまざまな要素が詰め込まれた、“V6交響曲”とも言えるナンバーが出来上がりました。一体どんな話し合いからこの曲は生まれたんですか?
郷太 まず、今まで誰もやってないことをやろうっていうことと、踊れるV6、歌えるV6、そして全員の個性が1曲の中に入ればいいなっていうコンセプトだった。それでミーティングの中で僕らが最初に理想図として描いたのは、QUEENの「Bohemian Rhapsody」とか、THE BEATLESの「A Day In The Life」とか、THE BEACH BOYSの「Heroes And Villians」とか、1曲の中で目まぐるしく展開していくような曲。個人的にはやっぱりキレのある群舞がV6最大の魅力だと思ってるんで、さっき挙げたようなクラシカルなロックのエッセンスを持たせつつも、プリンスの「Batdance」が持つ摩訶不思議なダンサブルさは絶対条件だと主張しましたね。それと、もうひとつの要素として少年隊から継承されるようなジャニーズソング、ミュージカルの伝統、生ストリングスやホーンセクションのおいしさみたいなものがミックスされた作品になれば最高だなと思ってました。その全部を表現できるのは、V6しかいないんで。
──それを実践した結果、こんなにゴージャスで、6分を超える大作になったと。
郷太 だから俺たち最初に訊いたんだよね、「予算いくらかけられますか」って(笑)。元々「長さは大丈夫」「常識をギリギリまで壊していい」とは言われてたから、こっちもプロとして現実的な質問をしたんです。そしたら「いくらでもかけていい」「どんな歌詞書いてもいい」って、スタッフが制限を取っ払ってくれたんですね。これが今回本当にうれしかったことです。
──素敵な話ですね。
郷太 あ、もう1個思い出した。健くんが、1行ごとにボーカルが変わるような割り振りじゃなくて、ある一定の長さを1人で持つような、そういう曲作りをしてほしいって言ってくれたんだ。で、実は俺もそれがやりたかった。なんでかっていうと、「POISON PEACH」はむしろ1行ごとに言葉が乗っかっていくような“仮面舞踏会方式”をやってみたから、次はそうじゃなくて、このセクションはこの人、このセクションこの人って分けて長めにやるっていうのは面白いかなって。
──“仮面舞踏会方式”ってすごい呼び名ですけど(笑)、「仮面舞踏会」の「♪迷いこんだイリュージョン 時を止めた楽園~」と、「POISON PEACH」の「♪知れば知るほどに ほどかれてく~」っていうBメロ部分のことですか? 確かにワンフレーズごとにボーカルが変わり重なっていきますね。
郷太 そうそう(笑)。ノーナだとどうしても基本的にメインは1人で歌う前提で作るから、6人歌えるっていう面白さを生かしたくて。その生かし方やパターンをいろいろ試してたんだよね。
ニューシングル「kEEP oN.」/ 2012年8月8日発売 / avex trax
初回生産限定<kEEP oN.盤>[CD+DVD] / 1890円 / AVCD-48539/B / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
- kEEP oN.
- 愛をこめて
DVD収録内容
- kEEP oN.ビデオクリップ
- ビデオクリップ撮影 真剣!ドキュメンタリー
- kEEP oN DANCING!振り付けビデオ
初回生産限定<キーポン盤>[CD+DVD] / 1890円 / AVCD-48540/B / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
- kEEP oN.
- 愛をこめて
DVD収録内容
- 新番組!?「キーポンV6」
通常盤[CD] / 1260円 / AVCD-48541 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
- kEEP oN.
- 愛をこめて
- Perfect Lady
- 一生で最後の恋
- kEEP oN.(instrumental)
- 愛をこめて(instrumental)
- Perfect Lady(instrumental)
- 一生で最後の恋(instrumental)
V6(ぶいしっくす)
坂本昌行、長野博、井ノ原快彦、森田剛、三宅健、岡田准一の6人からなる、ジャニーズ事務所所属の男性アイドルグループ。1995年11月にシングル「MUSIC FOR THE PEOPLE」でCDデビューを果たす。グループとして以外にも、年長組の20th Century(坂本、長野、井ノ原。通称トニセン)と年少組のComing Century(森田、三宅、岡田。通称カミセン)がそれぞれ単独でライブやリリースを行うほか、各メンバーはドラマや映画、舞台、バラエティ番組、テレビCMなどでも活躍。また、2001~2年には台湾や香港、2009年には韓国と台北で海外公演も行っている。