ナタリー PowerPush - 浮気者

ゆよゆっぺ対談&武瑠ソロインタビューで異色プロジェクトの全貌明かす

9月20日に突如活動再開を発表したSuGのボーカリスト、武瑠がソロプロジェクト「浮気者」をスタートさせ、1stミニアルバム「I 狂 U」をリリースした。「とあるtokyoの一夜」をテーマに、0:00から5:00までの流れを描いた6曲が詰め込まれたこの作品。武瑠は各曲でTom-H@ck、ゆよゆっぺ、たむらぱん、0.8秒と衝撃。、Plus-Tech Squeeze Boxといった豪華な面々と“浮気(=コラボ)”を繰り広げており、SuGとは一線を画するディープなサウンドを楽しむことができる。

今回の特集は、アルバム3曲目「undermine」でコラボを果たしたゆよゆっぺと武瑠の対談と、武瑠のソロインタビューで構成。武瑠がソロプロジェクトを通じて何を表現しようとしているのかを、このテキストから感じてほしい。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類

武瑠×ゆよゆっぺ 対談

会ってみたら地元の友達みたいな感じ

──まず最初に、お互いの印象を教えてください。

左から武瑠、ゆよゆっぺ。

武瑠 実は“浮気”相手の中で最後に会ったのがゆよゆっぺさんで。ミックスのときに初めてお会いしたんです。

ゆよゆっぺ 自宅で作業してたから、うちまで来ていただいて。駐車場に迎えに行ったんですけど、車の外にスタッフの方が2人いて、その中で電話してる武瑠さんが見えて、「あ、これはちょっと怖いパターンじゃないかな?」と思ったんですよ(笑)。

武瑠 なんでですか(笑)。

ゆよゆっぺ いや、これで「ちいっす!」みたいな感じで出てきたらどうしようって思って(笑)。そこが一番緊張しましたね。僕も武瑠さんが活動するシーンに疎かったので、本当によくわからなくて不安だったんですけど、いざ実際に会ってみたらめちゃめちゃいい人でナイスガイでした。

武瑠 ナイスガイですか(笑)。ありがとうございます。

──武瑠くんはどうでしたか?

武瑠 まずスタッフさんからゆよゆっぺさんを推薦されたんです。で、いろいろ調べたらボカロPとしてだけじゃなくて自分でバンドをやったり、ほかのアーティストさんに曲を書いたりもしていて面白いなって。書く曲も単純にメロディがよくて、それなら1曲ぐらいサビがすげえいい曲が欲しいなと思ってお願いしたんですよ。で、曲をお願いしたらその返りがめっちゃ早くて。3日くらいで曲が届いたんです。

ゆよゆっぺ そうでしたっけ?

武瑠 すごく早かったんですよ。なんでこんな早いんだろうって。

ゆよゆっぺ それはまあ、こういっちゃアレですけど、言うたらSuGの武瑠さんから依頼が来たらねえ。正直ビビってたんで(笑)。

武瑠 あはは(笑)。

ゆよゆっぺ これはもう速攻戻すしかないだろうみたいなのもありましたし。

武瑠 で、歌詞も自分がオーダーした通りで。なんだろう、会ってみたら地元の友達みたいな感じだったというか(笑)。家で作業したのもあって、すごくユルい感じでしたね。

自分が投げたものに対してどう返してくるかを楽しむ場

武瑠 実は今回のコラボ相手の中で、ゆよゆっぺさんとは唯一直接会わずに作業を進めていたのもあって、最初はすごく不安だったんですよ。

ゆよゆっぺ 僕もです(笑)。最初のメールでのやり取りで「バンドサウンドでいくのか、打ち込み主体でいくのか」がうまく伝わってないところがあって、どっちなのか迷っていたら、僕が送った2つのバージョンを武瑠さんが合体させたんですよ。そのバージョンを聴いたときに、そこで初めて浮気者のコンセプトが理解できたんです。

武瑠 あ、本当ですか? 俺もリテイクをお願いしたメールとかちゃんと届いていたのか、すごく不安でしたよ。最初の資料とか届いてました?

ゆよゆっぺ 最初の資料?

武瑠

武瑠 新宿で何かを探して、みたいな。

ゆよゆっぺ ああ、はいはい。

武瑠 曲を作っていただく人が決まったら、まずその人と自分をつなぐようなストーリーを書いて送ったんです。例えば0.8秒と衝撃。さんは高円寺、たむらぱんさんは下高井戸とけっこう場所を限定して。で、ゆよゆっぺさんはニコ動出身というところをフィーチャーしたかったから、「初音ミクが人間になろうとして、人間の感情を勉強しに新宿に出て、そこで出会った2人」みたいなストーリーをお渡ししました。そこから3日くらいで曲ができてきたんで、実はメールが届いてなかったのかなと思ったんですけど、歌詞を読んだら「なるほど!」と。

ゆよゆっぺ 普段、文章から曲を作ることなんてなかなかないので、本当にいい経験でしたよ。小説のあらすじみたいなやつがしっかり書いてあって。でも最初は「僕はこれを渡されて、ちゃんと曲が作れるのかな? 大丈夫なのかな?」と思ったのも事実で。

武瑠 でも、そこまできっちり話を限定するつもりはなかったんですよ。ストーリーを渡して、自分が考えていたものと全然違うものが届いたとしても、そこはある程度受け入れようと思ってたんです。自分が投げたものに対して相手がどう返してくるかを楽しむ場だと思って。だから失敗してもアリだなと。

ゆよゆっぺ そう聞いて、今不安がすごく解消されたところです(笑)。

「undermine」は初めての挑戦がいっぱい詰まってる

左から武瑠、ゆよゆっぺ。

武瑠 「undermine」みたいな一番シングルっぽい曲がミニアルバムの真ん中へんに入ったことで、全体のバランスがちゃんと取れてよかったです。この曲を最初に聴いたときから、3曲目くらいだろうなと思ってたので。サビだけで言ったら、たぶんアルバムの表題曲だろうなって曲でしたから。

ゆよゆっぺ いや、ありがたいです。本当に。サビは武瑠さんが伝えてくれたストーリーがポンって当てはまればいいなと思いながら作ったんです。あとはちょっとエレクトロなニュアンスが欲しいって言われたときに、じゃあサビは最高のメロディを作って、それ以外のパートで遊んでやろうと。本当に僕が初めて挑戦したことがいっぱい詰まってるんですよ、この曲には。

武瑠 俺もやったことがなかったことばかりでしたよ。でもやってみたら意外にいいんじゃないかなと思って。あのイントロから、どうやったらあんなにすごいサビにつながるのかなと。キック1つ取っても、打ち込みのキックからサビでいきなりバンドサウンドのキックに変わりますからね。音だけで聴くとすごく変なのかもしれないけど、全体的には別になんてことはないんじゃない?って。

ゆよゆっぺ そうですよね。

武瑠 ちょっとLinkin Park感が出せたかなと(笑)。

ゆよゆっぺ あははは(笑)。

ミニアルバム「I 狂 U」2013年11月20日発売 / ポニーキャニオン
完全限定BOX盤 [CD+Blu-ray+グッズ] 6900円 / PCCA-03929
通常盤 [CD] 1800円 / PCCA-03930
CD収録曲
  1. I 狂 U
  2. 忘却の空
  3. undermine(ゆよゆっぺ提供曲)
  4. 愛の妙理(0.8秒と衝撃。提供曲)
  5. 96 (たむらぱん提供曲)
  6. rise and fall
完全限定BOX盤 Blu-ray収録内容
  • ミュージックビデオ「I 狂 U」(Original Ver.)
  • ミュージックビデオ「I 狂 U」(Another Ver.)
  • メイキング映像
浮気者(うわきもの)

SuGのフロントマン、武瑠が2013年8月に始動させたソロプロジェクト。武瑠がSuGを浮気し、「とあるtokyoの一夜」をテーマにさまざまなクリエイター、アーティストとコラボレーションを展開する。Tom-H@ck、ゆよゆっぺ、たむらぱん、0.8秒と衝撃。、Plus-Tech Squeeze Boxといった面々が参加した1stミニアルバム「I 狂 U」を11月20日にリリース。

ゆよゆっぺ

ラウドロックを軸にさまざまなジャンルを盛り込んだボーカロイド楽曲をニコニコ動画に発表し、何度も“殿堂入り”を果たしている人気ボカロP。2012年9月にアルバム「Story of Hope」でメジャーデビュー。現在は自身のバンド、My Eggplant Died Yesterdayでも活躍している。