求められているものに敏感に反応したい

──普段、新しい音楽の情報はどこから収集していますか？

やっぱりネットですね。あとバンドメンバーがみんな根っからの音楽好きなので「最近なんかいいアーティストいる？」って情報交換することも多いです。中には全然理解できない音楽もあるんですけど（笑）。

──メンバー4人、聴いている音楽はバラバラなんですか？

バラバラですね。みんなホントにいろんな音楽を聴きます。昨日おにぃ（大喜多崇規）の車に乗せてもらったんですけど、ずっと聴いたことのないようなエレクトロの曲がかかってました。ひなっちは最近ジャズを聴いてるし、（生形）真一はジャズのテイストが入ったロックが気になってるみたいです。僕は今、ブルースなどの昔の曲を聴いてます。

──四者四様なんですね。それぞれ聴いている音楽がバンドにフィードバックされているんでしょうか？

はい。アルバムのカラーが毎回変わるのは、そのときのモードが影響しているせいですね。あといつも必要に迫られてではなく、作りたくて音楽を作っているので、インプットして溜めたものを一気に放出すると言うよりは、ライブや毎日の生活で得たものをその都度形にしているイメージで。自己満足だけの音楽にしたくないと言うか、今の時代にリスナーが求めているものに敏感に反応していたいんです。そういう思いもあってみんないろんな音楽を聴いています。

──常に流行をチェックしているんですね。

その中でも裏側にカッコいいルーツがあるアーティストを聴くようにしています。僕らの音楽はひと言で表せばロックですが、新しく取り入れる要素をどうやって自分たちなりにブレンドして、自分たちらしい音にできるかにこだわってますね。

──サブスクリプションサービスを通して新しいアーティスト、音楽と出会うこともありますか？

ありますね。最近はHonneっていうイギリスのエレクトロデュオが面白いなと思いました。ほかのアーティストを聴いていたときに、レコメンドで表示されて聴いてみたんです。

──サブスクリプションサービスにはどのような印象を持っています？

自分たちの曲が配信されるまでサブスクリプションサービスを使ってこなかったんですけど、サブスクには自由にプレイリストを作って聴ける楽しさがあるし、有名人ではない、普通の音楽好きの人が作ったプレイリストをいろんな人が聴けるのはいいことだと思います。昔はみんなタワレコに足を運んだり、僕は船橋のWAVEに行ってジャケ買いしたりしてましたが、それに代わる文化が今はサブスクなんでしょうね。あと僕らは海外にも目を向けていく時期に来ていると考えているので、アジア圏で強いKKBOXは今のナッシングスにすごくフィットしていると思います。

ほかのバンドと比べて階段を登るスピードが早かった

──Nothing's Carved In Stoneは今年結成10周年を迎えました。これまで9枚のアルバムを発表していて非常に多作なバンドだと思いますが、メンバーの創作へのモチベーションは10年間ずっと高いままでした？

ちょっとアルバムを作るのがしんどいと感じる時期もあったんですけど、基本的に楽曲制作に対する熱量は変わらないですね。

──スランプも特になく？

どうだろう。メンバー個々にはあるんじゃないですかね。たとえスランプがあったとしても、4人が集まってアイデアを出し合う時間が大事なんだと思います。それぞれバンドに対する考え方も少しずつ違うので。

──10年間でバンドに大きな変化はありましたか？

自分たちとしてはあまり変わっていない気がしていますが、ライブをやっていく中でいろいろと形にして、自信を付けてきたのかなと思います。僕以外はキャリアがあるメンバーが集まって始まったバンドなので、最初から周りの期待値は高かったと思うんですけど、すぐにお客さんを集められたわけではないし、期待値以上のものを見せられるバンドだったかというとそうでもなくて。付いてきてくれている人たちのおかげで10年間も続けられています。

──なるほど。バンドにとってのターニングポイントはありましたか？

いつだろうな……めちゃくちゃいっぱいあるんですけど、特にどことは言えないですね（笑）。10年間でアルバムを9枚作っているバンドって周りにいないし、普通なら3、4年のスパンでやることを1年ずつやってきたので、ほかのバンドと比べて階段を登るスピードが早かったんですよ。ツアーやアルバムのたびに考えることがありました。