ナタリー PowerPush - 嘘つきバービー
アルバム「ニニニニ」でメジャー進出 異色スタイルの裏側を明かす
「創作童話をその場で作る大会」のビデオを撮っていた
──そんなに音楽に興味がないのに(笑)、どうしてバンドなんでしょうね?
岩下 まあ、表現手段のひとつっていう感じですね。
──何かきっかけがあったわけでもなく?
岩下 えーとね、10代のころに寸劇みたいなことをやって、それをビデオで撮ってたんですよ。まあ、ただふざけてただけですけど。
──この3人で?
岩下 あと3、4人くらいおったかな? ホントに遊びの延長なんですよ。大喜利だったり、歌のベスト10だったり。
豊田 あったねえ。
岩下 PVみたいなものを曲に合わせて作るんですよ。くだらない遊びですけどね、それも。
千布 あのビデオ、観たいね。
豊田 もうないよ。
岩下 うん、ない。前はウチの本棚にワーッと並んでたんだけど。「創作童話をその場で作る大会」とか。
──それって、岩下さんが演出してたんですか?
岩下 いや、そこまでガッツリしたもんじゃなくて。ただ単にビデオでいろんなものを撮ってただけっていう……。で、それをもうちょっとカタチにしたい、本気でやってみようってなったのが、音楽だったんでしょうね。
──劇団じゃなくて?
岩下 じゃなくて。それだと好きすぎるんですよね。好きすぎるとガッとのめり込んじゃうから、あんまり好きじゃないもののほうがいいかな、と。
──客観性を保つために?
岩下 ガチガチにならないというか。
OKが出るまで音を奉納し続ける
──メンバー間では音楽の話をしないということですが、曲はどうやって作ってるんですか?
岩下 曲作りは……まず、僕が「こういう雰囲気で」っていうのを千布に渡しますね。雰囲気っていうか「こういう登場人物が出てきて、こんな展開にする」とか。
──劇作家みたいですね。
岩下 うん、そうですね。まず、世界観を伝えるというか。
千布 それを受け取って、ギターをつけていくんです。具体的にはギターのリフとかになるんですけど、風景を思い浮かべて、それを音に変換していく感じなんですよね。ちゃんと物語があるから、そういうことが想像しやすくて。すごく面白いですよ、それは。
岩下 オイとやって良かったー?
千布 (笑)。で、「こういう感じでどう?」っていうのを(岩下に)献上して。
岩下 奉納の精神(笑)。でも、けっこう「違う」ってことがあって。
千布 そうなんですよね。OKが出るまで奉納し続けるんですけど。
豊田 かなり時間がかかりますね。
岩下 僕と千布で「こういうイメージか」っていうのが合致すれば、すぐできるんですけどね。そこまでがすごく長い。
千布 長いね。
必死でやってる人は面白い
──例えば今回のアルバムに入ってる「音楽ずるり」はどんなやりとりから始まったんですか?
岩下 えーと、これ、どうやったっけ?
千布 これは歌詞があったと思う、ある程度。そうよね?
岩下 あ、そうか。「ロックがうつる」があったんですよ、確か。ロックがうつる感じというか、ロックの鬼ごっこみたいな……。
──「ロックがうつる」ってなんなんですか?
岩下 いや、あの、必死でやってる人ってめっちゃ面白いと思うんですよね。必死でやってる人が好きやし、切なさも感じるし。で、ロックの人って必死でしょ? これは批判ではなくて「この人、家に帰ったらどんな生活やろう?」って思ったり。
──ステージの上だけでロックが感染してるのかも。嘘つきバービーはどうですか? ロックはうつってます?
岩下 どうなんですかね。ロックっていうカテゴライズも面白いじゃないですか。なんや、ロックって? っていう。
──そこから考えちゃうわけですね。ラディカルですね、ある意味。
岩下 もっと言えば「バンドか?」とか「人間か?」とか。まあ、いつも「人間かな?」とか話してるわけじゃないですけど。
──すごく面白いと思います、そのスタンスは。じゃあ、「イワとイイ関係」はどうですか?「ドキドキワクワクお歌詞づくり」っていう、非常にキャッチーなフレーズがありますが。
岩下 これはですね、今までの作品の中に出てきた登場人物をいっぱい出してるんですよ。「ジェイソンvsエルム街の悪夢」みたいなもんですね。それぞれに世界観があるんだけど、このなかではいっしょに出てくるっていう。
──夢の共演ですね。嘘つきバービーのオールスターキャスト。
岩下 そうです(笑)。
嘘つきバービー(うそつきばーびー)
2002年に長崎県佐世保市で岩下優介(Vo, B)、千布寿也(G)、豊田茂(Dr)の3人が結成した「ロック」バンド。地元・佐世保を中心にライブ活動を繰り広げ、2007年3月に初音源となるミニアルバム「子供の含みぐせ」をタワーレコード限定でリリース。2008年より活動拠点を東京に移し、同年11月に初のフルアルバム「問題のセカンド」を発表する。2009年には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2009 in EZO」に出演し、入場規制がかかるほどの盛況となった。2010年10月には東京と大阪で、落語家をオープニングアクトに迎えた異色のワンマンライブを敢行し、大きな注目を集めた。2011年4月、メジャーデビュー作となるフルアルバム「ニニニニ」をリリース。