Uru「アンビバレント」インタビュー|「薬屋のひとりごと」オープニングテーマで描いた思いに迫る (2/2)

アニメファンの感想はとても参考になる

──楽曲の配信に先駆けてアニメのノンクレジットオープニング映像が公開され、大反響を呼びましたね。

とてもきれいな映像で、そこに私の歌が流れているのはとてもありがたいことだなと思います。

──第1クールが大きな話題となっただけに、新たなオープニングを作るうえでプレッシャーもあったのではと思うのですが。

ありました。すごく人気のある作品なので、作品を愛する方たちに異物感を絶対に与えたくないと思って。曲作りにあたっては原作を読み、それまで放送されたアニメを観るのはもちろん、ネットのレビューやSNSに上がっている感想も読ませていただきました。

──作品のレビューや感想も読まれるんですね。

はい。その作品をいろんな立場から、いろんなふうに愛している方々がいるので、皆さんの感想はとても参考になります。

──確かに、ファンは誰よりもその作品の“愛されポイント”を知っていますもんね。

ハッシュタグをたどって皆さんの感想を読んで、自分とはちょっと違う視点の感想があったりすると、それを取り込んでみることもあります。原作本がある場合は、作者の方の思いがあとがきに書かれていたりするので、そういった文章を参照したり。

──Uruさんは以前「タイアップ曲を作るときは、その作品を自分の中に浸透させる作業に時間を使う」とおっしゃっていましたが、そこにはその作品が世の中にどう受け入れられているのかを知る作業も含まれるのでしょうか。

そうですね。作品の世界に触れて直感的に作ることもありますが、特に今回のように原作があったり、シリーズものだったりする場合は、いろんな視点で見てみることが多いです。

聴くと景色が浮かぶ、シャイトープの「ランデヴー」

──シングルに収録されるカップリング曲についても聞かせてください。シングル恒例となっているほかのアーティストの楽曲カバーは、今回シャイトープの「ランデヴー」が選ばれています。

私はこの曲の歌詞が大好きで、聴いていると景色が浮かんでくるんです。特に「食欲のない芋虫の右手」というフレーズが大好きで、これだけでこの楽曲全体の感情と情景が伝わってきます。

──「食欲のない芋虫の右手」……これ、どんな状況だと思われますか?

おそらくこれは、ベッドから出られる気分じゃなくてお布団を被ってゴソゴソしているんじゃないかな、と。本能的に何か口にしなきゃと思って右手だけ出してパンを食べるけど、全然おいしくないし、やる気も出ないし、どうにも面白くない状況。そしてサビのパートではまた空想の中に戻ってしまう……と私は捉えているんですけど。

──「玉虫色の最悪な午後」とか、言葉遣いが独特で耳に残りますよね。

ホントそうですね。「唇の色を真似たような 朝の光」も、どういう光なんだろう?っていろいろ想像しました。赤いってことなのかな、それとも血色の悪い白っぽい色なのかな、とか。

──歌にはどんな感情を乗せようと?

この歌の主人公は現実を突きつけられてから、まだそんなに時間が経ってないように感じます。つらいことが起きた次の日くらいかなと思ったので、サビで感情がワーッとなるところは、その感じを意識して歌に反映していきました。

珍しい声帯が生み出す“私らしさ”

──カップリングはほかにも、2023年11月に配信された「君の幸せを」と、前シングルに収録された「紙一重」のアコースティックバージョンのセルフカバーが収録されます。こうしたバラードを聴いて改めてお聞きしたいと思ったんですけど、Uruさんの高音域の発声は、どのへんの音からファルセットになるんでしょうか?

どうなんでしょう……自分では全然わからないんです。私の声は、地声とファルセットの境界があんまりないみたいで。

──そうなんですよね。だからすごく不思議で。地声でどこまでも高音域の音が出せるのか、それともファルセットを地声のように響かせられるのか。

音域はわりと狭めだと思うんですけど、自分では全然意識していなくて。私の場合、声帯の形が少し変わっているそうなんです。

──だからあのエアリーな声が出せるんですね。Uruさんらしい歌声をこれからも聴かせてください。さて、これが2024年最初のシングルとなりますが、今年はどんな1年になりそうでしょうか。

これまで私はずっとバラードのイメージが強かったと思うんです。もちろん今までのものも大事にするのですが、バラードの中でも少し角度の違う表現や、今回のように爽快な曲調など、少しずつ違う側面を見せていきたいなという思いがあります。「アンビバレント」でも新しい部分を出せたと思うので、この機会をいただけてよかったです。

──新たな幕明けにぴったりの曲ですよね。今はもう次の楽曲制作に入られているのでしょうか。

はい。いろいろと作り始めています。

──お忙しい毎日だと思いますが、何かハマっていることとかありますか?

ハマっていること……と言えば、水回りをピカピカにすること(笑)。最近吸水クロスを買ったんですけど、水回りのシルバーを磨くと水アカがスッキリ取れてピカピカになるんです。それがすごく気持ちよくて、1回1回手を洗うごとに磨いてピカピカにしています(笑)。

──なんてマメな(笑)。家事にストレスを感じないタイプですか?

そうですね。片付けや掃除もお料理も大好きです。

──いいですね。生活リズムもしっかり整っていそう。

朝起きる時間も決まっているし、わりとそうかもしれません。でも最近は「薬屋のひとりごと」を観るために、少しだけ夜更かししています(笑)。

プロフィール

Uru(ウル)

2013年に活動を開始したシンガーソングライター。オリジナル楽曲のほか、J-POPを中心にさまざまなジャンルの楽曲をカバーし、YouTubeで発表して話題を集める。2016年3月に東京・キリスト品川教会 グローリア・チャペルで初の単独ライブを実施。6月にシングル「星の中の君」でSony Music Associated Recordsからメジャーデビューを果たした。以降、ドラマや映画などさまざまな作品とタイアップした楽曲を多数発表している。2021年11月にはデビュー前からの念願であった東京・東京国際フォーラム ホールAでの単独公演「Uru Live 2021『To You』」を成功させた。2023年2月に3rdアルバム「コントラスト」を発表し、これを携えた全国ホールツアーを4月より開催。2024年2月にはテレビアニメ「薬屋のひとりごと」第2クールオープニングテーマのシングル「アンビバレント」をリリースした。