Uru「アンビバレント」インタビュー|「薬屋のひとりごと」オープニングテーマで描いた思いに迫る

Uruのニューシングル「アンビバレント」が2月14日にリリースされた。

「アンビバレント」は現在放送中のテレビアニメ「薬屋のひとりごと」第2クールのオープニングテーマ。Uruがテレビアニメのオープニングを担当するのはこれが初となった。これまでのアーティストイメージを一新するように爽快なアップチューンに仕上げられたこの曲は多くの注目を浴び、1月20日にスタートした先行配信では数多くのチャートで上位ランクインを果たしている。

登場人物の目線で歌詞を書き、アニメや原作のファンからも好評を得たこの曲をUruはどのように制作していったのか。今回のインタビューでは「アンビバレント」の制作過程や、Uruが考えるアニメ作品やそのファンへの向き合い方、自身のボーカルの魅力など、新曲を軸にさまざまな切り口から語ってもらった。

取材・文 / 廿楽玲子

初の“華やかで明るいタイアップ”に緊張

──新曲「アンビバレント」はテレビアニメ「薬屋のひとりごと」第2クールのオープニング曲となっています。Uruさんは多くのアニメのテーマソングを手がけられていますが、オープニングを担当するのはこれが初となりますね。

はい、これまではずっとエンディングを担当させていただきました。今回は「薬屋のひとりごと」のスタッフさんが、私が以前インタビューで「もう少しアップテンポの曲も皆さんに聴いていただける機会があるとうれしい」と話したのを見てくださったそうで、オープニング曲のオファーをいただきました。

──やはりエンディング曲の制作とは勝手が違いますか?

そうですね。オープニング曲は華やかさや明るい感じが求められると思うのですが、そういう曲調のシングル曲を作ったことがないので緊張しました。

──「薬屋のひとりごと」は医療ミステリーであり、宮中を舞台にした人間ドラマであり、淡いラブストーリーでもあり、多角的に楽しめる作品だと思うのですが、どこにフォーカスして制作しようと思いましたか?

おっしゃるとおり、いろんな側面のある作品なので、総合的に描くのは難しいなと思いました。主人公の猫猫(マオマオ。後宮で下働きをしている薬師)は複雑な背景を抱えていますが、彼女の人柄はそれを感じさせないし、クスッと笑えるようなシーンもあって。アニメの作風自体にスパンと突き抜けるような気持ちよさを感じるので、楽曲にもその雰囲気を出したいと思いました。

──まずはどこから制作を?

メロディを決めるところから始めました。自分の曲と作家さんからお送りいただいた曲の中から、イメージに合う曲をスタッフと探っていき、YASさんの楽曲を選ばせていただきました。サビのキャッチーさや耳に残る感じが、原作のイメージとすごく合うなと思ったので。

壬氏の目線で見た猫猫

──アニメのスタッフ側から何かリクエストはありました?

「壬氏(ジンシ。後宮で強い権力を持つ宦官で、猫猫の才気を認めている)と猫猫の距離感にフォーカスしてください」というリクエストをいただいたので、壬氏の目線で見た猫猫を歌いました。2人が今どんな状態で、どういう位置関係にあるのかがなんとなくわかるように書こうと。

──2人の関係は進展しそうで、しないんですよね。その甘酸っぱさが楽曲にも表れていて。

この歌の主人公は、自分の気持ちにまだ気付いていないというか、ちゃんとわかってはいない状態だと思うんです。気持ちが動き始めたばかりで、自分でも「たぶん好きなんだろうな」と思うくらいの曖昧さ。その「好き」というのも、恋愛感情なのかどうか、おそらくはっきりとはわかっていない。人としてすごく尊敬しているのは間違いないと思うんですけど……。そんな気持ちが「刺激的な思考回路 惹かれてく」といった歌詞に表れています。

──グラデーションがかった感情なんですね。でも壬氏が猫猫に対して恋愛以前に尊敬の念を抱く気持ちはわかる気がします。猫猫はそれほど魅力的なキャラクターなので。

私も猫猫の人柄や、彼女の持っている性質に刺激を受けるところがたくさんあって、うらやましいなと思います。彼女は他人に左右されることがないし、生きる場所が変わったとしても自分としてあり続けられる人。それはとても難しいことだと思いますが、難しく捉えずに普通にやっているのがすごいなと思います。そして私が猫猫に抱く憧れの気持ちは、たぶん壬氏が感じている気持ちと似ているんじゃないかと思ったので、その思いを素直に歌詞に書きました。

ライブでもレギュラーになっていきそうなサウンド

──「薬屋のひとりごと」は架空の国が舞台の物語ですが、現代的なテーマも織り込まれていますよね。猫猫の生い立ちは決して恵まれたものではないけど、どんな状況でも自分の思う生き方ができることを教えてくれる。それは今の時代にも大きなヒントになる気がします。

確かに、この現実世界でも猫猫のように生きられたらすごくいいだろうなと思います。猫猫は人に妬まれて、ちょっと嫌なことをされるシーンもありますが、そんなときも打ちひしがれることなくカラッとしているから、観ていてとても気持ちがいい。Dメロで「君ならどうするかな、なんて思ったり」と歌っているのは、私が猫猫を見て、ああいう考え方をすれば強くいられるのかなと思ったからなんです。

──そんな猫猫の生き方に感化されて気持ちの上がる感じが、Uruさんの歌声から伝わります。イントロの歌い出しからすごく新鮮で、「Uruさんがイェイイェイって歌ってる!」と驚きました(笑)。

(笑)。あの歌い出しはデモの段階から入っていたので、そのまま歌わせていただきました。確かにこんなに明るい感じで「イェイイェイ」と歌うのは初めてかもしれないですね。

──サウンドプロデュースは田中隼人さんです。

イントロの舞い上がるような軽やかな感じからイメージにぴったりのアレンジにしてくださいました。いつになくアップテンポな楽曲ですし、ライブでもレギュラーになっていきそうな気がしています。