Uruの新曲「『君の幸せを』」が11月22日に配信リリースされた。
2023年は2月に3rdアルバム「コントラスト」をリリースし、4月からは自身最大規模となるホールツアーを開催。最新作の世界を全国のファンに届けた充実の1年の締めくくりとして発表されたノンタイアップの新曲「『君の幸せを』」は、ポエトリーリーディングから始まる異色のラブソングだ。この中で描かれているのは、叶わない思いに終止符を打とうとする女性の心模様。切なくも激しいメッセージ、力強い意志を感じさせるメロディラインを通じ、Uruの新たな一面を印象づける1曲となった。
Uruが「『伝える』ことに重きを置いて書いた」というこの曲はなぜ生み出されたのか。音楽ナタリーではUruにメールインタビューを行い、新曲についてつづってもらった。
構成 / 伊藤雅代
「伝える」ときの心情を感じてほしい
──これまでUruさんがリリースされたシングルはほぼすべてがタイアップ曲でしたが、今回の「『君の幸せを』」はノンタイアップの新曲となります。このタイミングで新曲を制作し、リリースするに至った経緯や思いはどんなものだったのでしょうか?
アルバム「コントラスト」をリリースして全国ツアーを回りながら、4月には月9ドラマやアニメなど大きな作品の楽曲も歌わせていただきました。
私自身、デビュー前からの夢だったステージ・東京国際フォーラム ホールAでのライブを叶えることができて以後、“次の目標を探すことがテーマ”と以前のインタビューでもお話ししましたが、スタッフさんともいろいろお話ししている中で、これまでの経験値を踏まえて、改めてお題のないところから楽曲を作って発表するというところに立ち戻ってみようというのが、この曲のスタート地点です。
──ポエトリーリーディングで始まるという楽曲の構成には驚きましたが、穏やかな中にも強い意志を感じさせるような声で曲の世界に一気に引き込まれます。今回このような構成にした理由をお聞かせください。
ファンクラブのコンテンツで曲から物語を書いていたり、ライブのときも、曲の前にその曲から派生した物語を朗読してから歌唱をしたり、短編物語集を出版させていただいたり、これまでも言葉や文章、物語で想いを伝えることを大切にしてきました。
スタッフさんとの打ち合わせの際、何か新しい形でというご提案もあって、今まで私が重ねてきた言葉と文字の世界を融合させた形の曲はどうかという方向で制作させていただくことになりました。
──歌詞では主人公と、思いを寄せる相手の関係性が「恋人になれた私でいたかった」「愛される人になりたいから」といった表現に表れていて、Uruさんが過去に発表したラブソングとは違った恋愛の形が描かれています。この曲で表現したかった世界観、物語について詳しくお聞かせください。
聴いてくださる方が自由に解釈してもらえればと思いますが、「伝える」ことに重きを置いて書いた曲です。その後どうなったのかというような結果もはっきりとはさせず、「最後の言葉」を伝えようと決めるまでの心の動きや、今まさに伝えようとしているときの心情を感じてもらえればと思いながら書きました。なんとなく結果はわかっていたとしても、自分の中でどうしても消化できない気持ちを相手にぶつけて、何も悔いのない状態で前に進む。この行為はエゴとも言えますが、そこに至るまでたくさん我慢してきた分、最後はエゴくらいぶつけさせてよね。と。
──2人の関係性やこれまでの日々を感じさせる直接的な描写、踏み込んだ表現も多く、Uruさんの歌詞の世界がさらに広がったように感じます。今回の歌詞はどのように書き進めていったのでしょうか?
この曲はメロディが先に浮かんできたので、そのメロディに合う言葉を考えていったのですが、片想いなのか、恋人同士の別れの曲なのか、と考えていくうちに、この曲の持つモヤモヤとする雰囲気というか浮遊しているようなイメージから、もっともっと境界線が曖昧な……と考えているうちに、この形になっていました。
1年の最後にできた新しい挑戦
──曲自体の面でもUruさんの過去の壮大なバラード曲とはまた異なる、心の揺れを抑え込むようなメロディラインが印象的でした。メロディや楽曲全体の構成について、今回の楽曲だからこそやりたかったこと、こだわった部分を教えてください。
作品に対して書かせていただく曲は、サビの印象が強いことや、壮大な印象の楽曲をというリクエストをいただくことも多いのですが、今回はアップダウンが少ないというか、最初から最後までトーンが一貫している、そこに強い意志を感じてもらえるような曲にしたかったです。昔からR&Bが好きなので、その雰囲気も少し感じられるような曲にしたいという思いもありました。
──アレンジは「ハクセキレイ」や「横顔」を手がけた橋本幸太さんが担当されています。今回、橋本さんにはどのようなサウンドにしてほしいと考えていましたか?
「ハクセキレイ」もそうですが、橋本さんが作り出すギターの旋律がすごく好きで、今回も特にイントロを聴いたときはとても痺れました。
──ジャケットアートワークはPERIMETRONの荒居誠さんの手により、主人公の心を表現したような重厚なデザインに仕上がりました。モノクロでUruさんをとらえたアーティスト写真も含めて、ビジュアル面ではどんなことにこだわりましたか?
ジャケットアートワークは、荒居さんがこの曲のイメージで描いてくださったのですが、最初に飛び込んできた色が「黒」というところに驚きと意外性を感じました。
最初は、この曲の中に「抱きしめた夜」とか「あなたの横顔が窓に映っていたの」という歌詞があるので、その夜をイメージしてくれたのかなと思ったのですが、だんだんと、2人でいるときの夜ではなくて、1人でいるときに、1人で抱え込んでいる想いや、どうしようもない気持ちに溺れそうになっている夜なのかな……とか、いろいろと想像が膨らんでいって。
主人公の心の内と、大切な人が自分から解かれていくような。「痛み」を感じるところに、この曲を重ねることができました。本当に素敵なジャケットにしていただいて感謝しています。
アーティスト写真も、デビュー曲以来のモノクロなので、少し懐かしい感じもあり、しっくりくる感じもあって。笑。
──ポエトリーリーディング部分の先行公開で話題を呼んでいたミュージックビデオには茅島みずきさんが出演し、時に切なく、時に激しく主人公を演じられています。完成したMVを観てどのように感じましたか?
茅島みずきさん演じる女性が手紙を書きながら涙を流すシーンで、私も涙が出てきてしまって。いろんなことを天秤にかけて、葛藤に葛藤を重ねて選択したことだけど、いざ行動に移すときってやっぱりものすごく辛いと思うし、私も悩んだときは時々その気持ちを文にして可視化することで整理ができたりするので、ちょっと重なったりもしました。
その女性の心の機微を映した映像と曲が合わさって、「『君の幸せを』」をより伝わるものにしていただけました。
──今回の楽曲でUruさんの表現の世界がさらに広がったことを強く感じました。この曲を経て今後さらに挑戦していきたいこと、アーティストとしてやりたいことを教えてください。
まだ作り途中の曲や、レコーダーにはこんな曲もいいかも……という曲たちが溜まっているのですが、まずはそれを形にしていきたいです。笑
私の曲には、例えば「花火」とか「雪」とか「桜」のような、わかりやすく季節を感じることのできる曲が少ないので、季節感のある曲を作ってみたいな……とも思ったりしています。あとは、何度かお話ししたことがありますが、ものすごくアップテンポな曲もいつか作ってみたいです。笑
──この曲が今年最後のリリースになるかと思いますが、今年は3年ぶりのアルバムリリースや過去最大規模の全国ツアー開催など、Uruさんにとってトピックの多い1年でもあったように感じます。振り返ってみて今年はどんな年でしたか?
3枚目のアルバムをリリースできたこと、そのアルバムのツアーで全国を回れたことが今年一番のトピックでした。
アルバムでは、Ayaseさんや(wacciの)橋口洋平さん、優里さんともご一緒させていただけて、皆さんの作る音楽に触れることができたり、ツアーでは、行ったことのなかった場所や会場にも行くことができ、たくさんの人にアルバムの楽曲たちと、いつも応援していただいているお礼を直接お伝えすることができたり。とても刺激のある年でした。
そして、1年の最後にこうやってまた新しい挑戦でのリリースができ、すごくいろいろな経験をさせていただいた年でした。
プロフィール
Uru(ウル)
2013年に活動を開始したシンガーソングライター。オリジナル楽曲のほか、J-POPを中心にさまざまなジャンルの楽曲をカバーし、YouTubeで発表して話題を集める。2016年3月に東京・キリスト品川教会 グローリア・チャペルで初の単独ライブを実施。6月にシングル「星の中の君」でSony Music Associated Recordsからメジャーデビューを果たした。以降、ドラマや映画などさまざまな作品とタイアップした楽曲を多数発表している。2021年11月にはデビュー前からの念願であった東京・東京国際フォーラム ホールAでの単独公演「Uru Live 2021『To You』」を成功させた。2023年2月に3rdアルバム「コントラスト」を発表し、これを携えた全国ホールツアーを4月より開催。8月12日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でツアーファイナルを迎えた。11月に新曲「『君の幸せを』」を配信リリース。
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