Uruがニューシングル「Love Song」をリリースした。
表題曲「Love Song」は、現在放送中のフジテレビ系ドラマ「木曜劇場『推しの王子様』」主題歌として書き下ろされたもの。「少し前の洋楽の雰囲気」をエッセンスとしたメロディと、トオミヨウの温かなアレンジによって、聴き手の「人を好きになる気持ち」を優しく照らし出してくれるラブソングとなっている。またカップリングにはAmPmをサウンドプロデューサーに迎えた新曲「I don't suit you」や、Awesome City Club「勿忘」のカバー、Uruが今年2月にリリースした「ファーストラヴ」のギターアレンジによるセルフカバーも収録されている。
今回、音楽ナタリーではUruにメールインタビューを実施。デビュー5周年を迎えた心境や初夏に開催された初のツアーのこと、本作に収録される4曲の制作エピソード、そして11月に開催が決定した東京・東京国際フォーラム ホールAでのライブへの意気込みについてたっぷりと話を聞いた。
構成 / もりひでゆき
音楽を同じ空間で共有できることは当たり前のことじゃなかった
──今年6月にデビュー5周年を迎えたことについて、率直な感想を聞かせてください。
小学校で言えば1年生が5年生になったわけで、とっても成長しているはずなのですが、自分はどのくらい成長できたのかなあ……と振り返る節目になりました。緊張しすぎてまったく歌えなかったデビューライブから、ドラマや映画、アニメなどの主題歌を歌わせていただいたり、今まで行ったことのなかった場所でライブができたり、5年間を思うと、長かったのか短かったのかわからなくなりました(笑)。
──この5年を通して、ご自身で実感する変化などはありますか?
確実に変化したところは、新しいことに挑戦するときの気持ちの持っていき方かなと思います。私はとても臆病なので、何か新しいことを始めるとき、「できない理由」を探すのがとても上手で、その理由にかまけてどっしりと臆病者の椅子に腰をかけたまま中途半端な姿勢で臨んでいたところがあって。でも5年という時を経て、最初の動き出しはやはりまだ恐る恐るですが(笑)、それでも、やると決めたからにはちゃんとしようという前向きさが身に付いてきたような気がします。
──6月から開催されたツアー「Uru Anniversary Tour 2021 『Punctuation』」。全5公演を無事に終えてみての感想を教えてください。
初めてのツアーだったので、ドキドキとワクワクとソワソワが入り混じっていたのですが、各地で迎えてくださるお客様の温かな温度と拍手を肌で感じて、自分の歌がこんなに遠くまで届いているんだなということを改めて実感できるツアーでした。5年前の初ライブのときに経験した、歌もMCも何ひとつ満足にできなかったという苦さを、節目でもある今回のツアーで払拭できたらと思ってステージに立っていましたが、途中で、きっとあの苦さはそのまま残しておいてもいいなという考えに変わりました。今後のためにも苦さは上書きせずにずっと苦いままとっておこうと、ツアーが終わったときに思いました。
──コロナ禍でのライブは表現者であるUruさんにどんなものをもたらしてくれましたか?
まずは本当に、このような状況の中でも会場に足を運んでくださったことへの感謝が先に立ちました。普段でさえ、休みの都合をつけて、お金を払って、そしてチケットを準備して……といういくつもの関門をくぐり抜けて今そこに座ってくださっている皆さんへの感謝があるので、この状況においては、もっともっとこの気持ちを強く感じて、始まる前のメンバーさんとの気合い入れのときも、来てくださった皆さんに全身全霊で私たちの音楽を届けましょうと誓いました。それと同時に、音楽以外のこともそうですが、全ては需要と供給で成り立っていて、私が音楽を発信しても、受け取ってくださる皆さんがいなければ宙に放り出された風船と同じくどこかに漂って流れていくだけで、その紐をしっかりと捕まえてくれる人がいてくれるということと、そして、音楽を同じ空間で一緒に共有できるということは当たり前のことじゃなかったんだということを痛いくらい教わりました。
──ツアーを終えたことでデビューからの活動に1つの“Punctuation=句読点”を打ったわけですが、そのことによって未来に向けての新たなビジョンや決意は浮かんできていますか?
具体的に何が、というわけではないのですが、もう少し、自分らしさを目に見えるところから発信できたらいいなと思ってはいます。ファンクラブ内では、初めてファンクラブに入ってくださった方が、それまでの私の印象と、ファンクラブ内での印象の違いにとても驚かれる事象が発生しているのですが(笑)、もう少し外側でも、自分らしさを出していけたらいいなと思っています。それが何か、自分ではあまりわかっていないですが(笑)。
出会いの不思議さ、素晴らしさみたいなものを書きたかった
──約半年ぶりに届くニューシングル「Love Song」の表題曲は、フジテレビ系ドラマ「木曜劇場『推しの王子様』」主題歌になっています。オファーを受け取ったときのお気持ちはいかがでしたか?
今まで担当させていただいてきたドラマとは少し雰囲気も違うラブコメディで、バラードの印象が強い私にこのドラマの主題歌が務まるかなという不安は少しありましたが、率直にうれしかったです。
──脚本を何度も読んで楽曲を書き下ろしたそうですが、「推しの王子様」という作品からどんなものを受け取り、それをどう楽曲に落とし込もうと思いましたか?
とにかく、登場人物が全員とてもひたむきで、何かに向かって一生懸命に生きているんですよ。しかも、その中でいつの間にか「人を好きになる気持ち」に気付いたり、好きなものがあることで毎日が豊かになったりしているんです。なので、そういう人間らしい温かな部分を楽曲のイメージにしたいと思って作りました。それがなかなか難しくて、納得するまでにとても時間がかかって、今までで一番デモ曲を作ったと思います(笑)。
──今回の歌詞ではどんな部分を大事にして言葉を紡いでいきましたか? ご自身で特に気に入っているフレーズや言い回しを教えてください。
ずっと夢中になっていたものがあって、いつの間にか人を好きになるということを忘れかけていた主人公が、自分の心の変化に自分で戸惑いながらも少しずつ素直になっていくという心の動きが、聴いてくださった方に伝わればいいなと思って歌詞を書きました。Dメロの「躓きながらも選んできた道 どれか1つでも違ったなら あなたに会うことはなかったの そう思えば悪くないね」の部分をどうしてもこの曲に入れたくて。ピタッとメロディにはまったときに、「やったー!」と声が漏れそうでした(笑)。これは、恋人や男女間に限らず、今近くにいる友人や仕事仲間、いろんな関係に言えることだなと思っていて。日常の中でふと、「ああ、この人に出会えてよかったなあ」と思う瞬間があったりするのですが、もし自分があのとき別の道を選んでいたら今ここにその人の存在がなかったわけで……という出会いの不思議さ、素晴らしさみたいなものを書きたかったんですよね。
──Aメロでは“気付かない、ない”“追い出せない、ない”と“ない”を重ねているのが印象的でした。どんな意図でそういった書き方をされたのでしょう?
この曲は、メロディを先に考えて、詞をあとから書いていったのですが、この部分は最初からこのメロディでいこうと思っていたので、それに合う言葉がいいなと思っていて。なおかつ“Love Song”なので、母音が「あい」になったら最高だなと思ってこの言葉を選びました。実はサビにも、「あなたと出会い」「かけがえない」など、母音が「あい」になっている言葉がたくさんあるんです。ネガティブな言葉の裏側にも、そしてまっすぐな言葉にも「あい」があったらいいなと。「あい」にあふれた“Love Song”にしたかったので。
──恋愛をモチーフとした歌詞だとは思いますが、そこには恋愛だけでない人と人とのつながりの大切さを感じることもできました。ひいてはそれがコロナ禍を含めた今の時代にこそ求められているものであるように思います。ご自身の中にもそういった思いはありましたか?
先ほどもお話ししましたが、出会いの素晴らしさや、大切な人がそばにいてくれる温かさ、その人が大好きだ!という気持ちは、男女に限らずいろんな関係性の中でも言えることだなと思っていました。コロナ禍を意識したつもりはなかったですが、きっとこのような状況だったからこそつながった新たな出会いもあって、それも人生においての大切な出会いの1つですよね。
今回のエビはエビチリじゃなくてエビフライ
──心にスッと染み渡ってくる柔らかで温かなメロディですが、曲の構成やメロディの流れ、展開などでこだわった部分を教えてください。
この曲にたどり着くまでは、アルバム1枚できるくらいのデモ曲を作りましたが(笑)、この曲自体はスムーズに作れたと思います。昔の洋楽が好きで、この曲もヴァネッサ・カールトンやダニエル・パウターなど少し前の洋楽の雰囲気を入れたくて。サビも、ドラマに合わせて明るく温かな雰囲気にしたいというのと、でもきちんとフックになる泣きのコードも入れたいな、とか。個人的にはとにかくDメロが好きで、主旋よりハモのラインのほうが気に入っています。主旋としてそっちを歌いたいくらいに……(笑)。
──メロディと言葉のよさを引き立てるトオミヨウさんによるアレンジも素敵でした。制作の過程でUruさんからアレンジ面でリクエストしたこともありましたか?
トオミさんにはデビューシングルからずっとお世話になっていて、アレンジに関しては絶対的な信頼を置いているので、私からは細かくこうしてほしいなどのリクエストはしませんでしたが、「昔の洋楽の雰囲気を少し入れてあります」というお話はさせていただきました。アレンジの第1稿を聴いたときは本当に鳥肌が立って、「そうそう、今回のエビはエビチリじゃなくてエビフライにしてもらいたかったんです!」というようなハマり方でとてもグッときました。
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タイトルはもうこれしかない