音楽ナタリー Power Push - UROBOROS
新作に混ぜ合わせた2人の反抗心
反逆、反骨精神を描く
──今作は「FROM HELL」「LOST EDEN」といった楽曲のタイトルも印象的でした。作品全体としては、どんなテーマがあったんですか?
黒瀬 権力、ルール、制約といったものに対する反逆、反抗心ですね。そういう戦いを描いてみたいな、と。
上木 黒瀬さんはUROBOROSで描こうとしている物語をしっかりと持っているんです。それは「ANOTHER ARK」から始まっていて、「ZODIAC」でも一貫していて。
黒瀬 僕は1つひとつの作品で完結させるのではなく、大きなコンセプトを決めて(複数の作品の)流れの中で表現していきたいんですよね。今回も「こういう思いを伝えたい」という大枠を上木に説明して、そのテーマに沿って歌詞を書いてもらったんです。伝えたいことというよりも、「どういう場面のことを表現しているか」という話のほうが多かったかな。
上木 作詞を担当する私としては「UROBOROSとして何を言うべきか」を統一することが大事だと思っているんです。黒瀬さんが表現したいことを知ったうえで、それぞれの曲の物語を作っていって……。そうやってコンセプトを共有することが大切なんですよね。さっき言ったように曲自体のパワーがすごかったから、歌詞を書くのも楽しかったんですよ、今回。前回以上に広がりが出たと思うし。
黒瀬 そうだね。反抗心と言っても、その対象は人によって微妙に違うと思うんですよ。「ZODIAC」の歌詞については、上木のマインドが強く出てると思います。
──確かに上木さん自身の生々しい思いが感じられる歌詞が増えた印象があります。
上木 どの曲にも一貫していることなんですけど、人それぞれに価値観とか大切にしていることがある中で、私はどちらかというと少数派の思いを表現したいと思っていて。少数派の葛藤や悩み「だけど、前に進んでいく」という気持ちを書いてみたかったんですよね。私自身、これまでにたくさん悔しい思いをしてきたので「ZODIAC」の歌詞の中にも、私が本当に思っている言葉がたくさんあるんです。限りなく自分の気持ちに近いですね。
遠回りも歌詞につなげる
──“少数派の葛藤や悩み”というテーマには共感するリスナーも多いと思います。意見を交わして違いを認め合うよりも、多数派に入ることが大事という風潮もあるし、少数派は「空気が読めない」と言われてしまうことも多いですからね。
黒瀬 特に日本はそうかもしれないですね。マイノリティとマジョリティが切り離されてしまう不条理があったり。
上木 それぞれの中にある正義や優しさ、思いやりはどこに行ったんだろう?って思うこともありますからね。
──黒瀬さんは音楽家としての反骨精神がかなり強いんじゃないですか?
黒瀬 僕にとっての反骨精神は、わりと内向きなんですよ。「あの人がこんな曲を書いていてうらやましい」みたいなことではなくて、「これだけ長くやっていても、自分が思い描きたいことがまだ表現できない」という不甲斐なさのほうが強いんですよね。「まだこれしかできないのか」という気持ちは常にあるし、まだまだ経験や知識が足りないと感じることも多いので。それをなんとかしたいという抗いですね、僕の場合は。
上木 私はよく「不器用な人間」と言われてまして(笑)。人間関係や仕事がうまくいかないこともたくさんありますし。UROBOROSでの作詞作業は、リアルな気持ちに近いところでやれていると思いますね。
──自分の意思を貫きながら、それを活動につなげていくスタンスも身に付けたということですか?
上木 まさにそういうことだと思います。自分ができないことを認めながら一歩ずつ前進してきて、私は今こういう立ち位置にいるんだと思うんです。以前は余計なプライドが邪魔をしていたんです。今だからわかることがたくさんあるし、UROBOROSに参加してから見えてきたものも含め、いろんなことが楽しめるようになっているんですよね。なんでもっと早く気付けなかったんだろうって思いますけど(笑)、そういう遠回りも自分には必要だったのかなって。超ポジティブに捉えれば、それも歌詞につなげられますからね。
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- ミニアルバム「ZODIAC」 / 2016年4月20日発売 / ポニーキャニオン
- HD EDITION [UHQCD+Blu-ray] / 3240円 / PCCA-50229
- STANDARD EDITION [CD] / 1980円 / PCCA-04372
CD収録曲
- Chokmah
- FROM HELL
- LOST EDEN
- ZODIAC
- Infection
- Zoetrope
- Lunar eclipse
HD EDITION盤 Blu-ray Disc 収録内容
- ZODIAC -Music Video-
- Making of ZODIAC
- UROBOROS secret live "DARK REDEMPTION" digest
UROBOROS(ウロボロス)
黒瀬圭亮(Composer, Manipulate / ex. Asriel)を中心に上木彩矢(Vo)、大村孝佳(G / C4、dCprG)、中村泰造(B / cune)、笹渕啓史(Dr / ex. Plastic Tree)の計5人からなるプロジェクト。プロジェクト名は“己の尾を噛んで環となった蛇”を図案化した、「完全性」を意味するシンボルになぞらえて命名された。TVアニメ「六花の勇者」の第2章オープニング主題歌として「Black Swallowtail」を提供。2015年9月9日にはミニアルバム「ANOTHER ARK」とリカットシングル「Black Swallowtail」を同時リリースし、ポニーキャニオンからメジャーデビューを果たした。2016年4月に新作音源「ZODIAC」を発表し、東京・TSUTAYA O-EASTでワンマンライブ「THE ARK OF ZODIAC」を開催する。