エイベックスへのプレッシャーでタイアップ獲得？

──2ndシングル「ペルソナ」は犬飼貴丈さんと堀未央奈さんが主演を務めるMBS・TBS系ドラマ「サレタガワのブルー」の主題歌です。タイアップを狙って活動してきたUPSTARTが2作目にして早くもドラマ主題歌を担当されますが、率直な気持ちを聞かせてください。

花村　ヒカルくんがエイベックスにプレッシャーをかけたおかげですよ。ここまで新人のために動いてくれる会社ではないと思うので（笑）。

──（笑）。「ペルソナ」は人間の負の感情に迫る歌詞が印象的です。作詞はヒカルさんと花村さんが担当されていますね。

ヒカル　原作のマンガを読んでイメージを膨らませました。

花村　ヒカルくんは作詞の才能もあるなと思いましたね。ストーリーに合ったワードをいくつも提案してくれて、おかげで僕も作りやすかったです。歌詞と曲が驚くほどハマったんですよ。

ヒカル　ドンピシャだと思います。「サレタガワのブルー」は女性の不倫がテーマの作品なので、「ペルソナ」では浮気された人が共感できるような歌詞を考えました。僕の箇条書きをもとに花村くんが仮で歌詞を作ってくれて、それを1小節ずつ精査していったんです。

花村　女性側の浮気を表現するのが難しかったので、男性目線のフレーズを多めに入れたんです。ヒカルくんと一緒に書くのは新鮮で面白かったですね。サビの手前に「地獄でまた逢おう」という部分があるんですけど、この言葉は僕の中からはまず出てこないですもん。このフレーズがあることによって、サビが驚くほど闇深く聞こえて、ドラマの世界観をより色濃く反映できたと思います。「もう許さない」というストレートな言葉も、ヒカルくんっぽくて力強いなと思いました。

ヒカル　原作を読んでいて、浮気された夫がただただいいヤツだなと思ったんですよ。イケメンで家事もできて高収入。非の打ちどころのない夫が妻に浮気されて人生を壊されるって、地獄にいるほど絶望的な状況だろうなと想像しました。

ヒカルのウィスパーボイス

──花村さんは作曲にも関わっていますね。

花村　はい。4曲ぐらい候補があって、その中から作家さんに選んでもらったんですけど、この曲が大本命だったんです。作ってる段階から「これが選ばれるだろうな」と。おしゃれさもありつつダークな雰囲気も感じられる曲になったと思います。

──ヒカルさんはメロディを実際に聴かれてどうでした？

ヒカル　ただただカッコいいなと思いました。物語の世界観と完全に一致してるなと。原作ファンもドラマを観る方にもすっと入ってくるメロディなんじゃないかなと思います。

花村　ヒカルくんが歌ってる「いつまでも気づかないなんて」「ねぇ生きてる心地がしないの」のパートがいいですよね。この部分は今までのヒカルくんにはないウィスパーボイスなんです。吐息を多めにして女性っぽさをイメージしています。僕のパートだと「あなたが眠る間に打つディスプレイ」あたりはだいぶレイドバックしながら歌っていて、そのリズム感はJ-POPではなかなか聴けないんじゃないかと思います。皆さんにはおしゃれに歌いこなしてほしいですね。

──花村さんの「仮面を剥がし偽りの色を奪う」のハイトーンも聴き応えがありますね。

花村　スタッフさんから「花村くんのハイトーン欲しいな」と言っていただいたので、作曲の段階で意識的に入れました。

ヒカル　聴いたときは大したもんやなと思いましたよ。

花村　あはははは。

──レコーディングで苦労した点はありましたか？

花村　僕はそんなになかったんですけど、ヒカルくんには何度も歌ってもらったのでカロリー的に大変だっただろうなと思います。「優しく」「力強く」「スタッカート気味に」とかいろいろオーダーしながら何パターンも歌声を録らせてもらって、その中で一番いいテイクを組み合わせていったんです。

──花村さんがヒカルさんのボーカルディレクションをされたんですか？

花村　ヒカルくんのディレクション担当の方は別にいらっしゃったんですけど、自分が作曲しているので、そのイメージに近付けてもらうために少しだけニュアンスを伝えましたね。

ヒカル　自分的には苦労は全然感じなかったです。ただ、今ちょうど歯の矯正をしていて、レコーディングのときに本来は外しちゃいけない矯正器具を取っちゃったんですよ。それでめっちゃ歯が痛かった記憶はあります。あと、レコーディング中に星野源さんと新垣結衣さんが結婚するっていうニュースが流れて、それどころじゃなくなったというハプニングもありました。さすがに一旦レコーディングを中断しましたね。

花村　（笑）。僕的には「ペルソナ」のレコーディングを経て、ユニットとしての方向性がさらに見えてきたなと実感してます。例えば、僕が作った曲をヒカルくんに聴いてもらったとき、ヒカルくんは「これはちょっと違うな」とか素直に言ってくれるのでありがたいんですよ。「次回はこうしよう」と参考になるので。

──意見を伝えるうえで、何かヒカルさんならではの基準があるんですか？

ヒカル　直感ですね。聴いたときにいいなと思ったらそのまま伝える感じ。おいしいものを食べたときに思わず「おいしい」って言っちゃう感覚と同じですよ。

今、好きになればもれなく“古株”に

──余談ではありますが、「ペルソナ」というタイトルにちなんで……お二人には、普段とは違う“もう一つの顔”がありますか？ お話を伺う限り、ヒカルさんはあまりなさそうですね。

ヒカル　僕もありますよ。裏の顔しかないです。1つ言うと、女の子の前だと甘えます。

花村　それは意外（笑）。

──花村さんはありますか？ ヒカルさんほど攻めた内容じゃなくて大丈夫なので。

花村　実は意外とギャンブルしてみたい欲はありますね。勝負事に興味があって、運試しをしてみたいんですけど、お金がもったいないなと気が引けちゃう（笑）。だからヒカルくんが馬券を買っているYouTube動画を観ながら、自分も賭けた気になってますね。観てるだけでも楽しいです。

──「ペルソナ」のリリースを経て、UPSTARTの今後が楽しみです。

花村　ゆくゆくは、ほかのアーティストさんに楽曲提供をしてもらいたいですね。

──まふまふさんやYOASOBIのAyaseさんにお願いしてみたいと以前おっしゃっていましたよね。

花村　ぜひお願いしてみたいです。楽曲制作がけっこうな重圧なので、そのプレッシャーから解放されたいんです（笑）。ヒカルくんは影響力と知名度がある人だから、話題にならなかったことを想像すると罪悪感が半端ないんですよ。でも逆に言うと、うまくいったらものすごくよかったと思えるはずなので、一生懸命やるのみですね。

──ちなみに、UPSTARTが意識しているアーティストはいますか？

ヒカル　いないですね。

花村　僕は前作をとにかく超えたいという気持ちで「ペルソナ」を作ったので、常に自分との戦いだなと思ってます。UPSTARTがカッコいい、おしゃれなユニットとして世間に認知されたいですね。

ヒカル　これからも予想のつかないようなことをしていくと思うので、UPS（UPSTARTファンの呼称）の皆さんには僕らの活動を純粋に楽しんでほしいですね。

花村　今、僕らを好きになってもらえたら、もれなく“古株”という称号が今後付いてくるので（笑）、ぜひよろしくお願いします！